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大人になるという事は

先日、長女が急に"ママのところで洗濯させて!"と家に来た。
洗濯機が故障したのかと思ったら、長女が言うには
『洗っても洗っても臭くて、家の洗濯機で洗うとなんか逆に汚してる気分になってきて』
との事。

今、私達は、別々に暮らしている。あなたが養育すべきだった、とか、子供を捨てた等色々な意見を頂くが、どういう事情でこうなのかは散々書いてきたので、ここでは割愛。いつでも子供たちが来られる場所に居住地を置いている。

以前は私を入れて家族五人だった。育ち盛りが三人もいる家庭だと洗濯機が働いてくれる率も、夫婦二人きりのご家庭と比べると、当然高くなる。よく使う物だから、よく手入れをした。事あるごとに、主婦らしい事はなにひとつこなさなかった、とばかり言われていたが、主婦は主婦らしく、目には見えない部分をきちんとする事が仕事なので、まぁそれも、想像力の乏しい相手となると仕方のない事だったのだが。

「洗濯機、きちんと洗浄してる?」
私の質問に、長女は
『は?洗浄?洗濯機を?なにそれ。なにすんの?』と言った。

私は、この時ばかりは、失敗した!と思った。とても大切な事を教えないまま、離れてしまった。そもそも我が家は恋愛結婚ではなかったので、それも致し方ない事なのだが、前夫は、なくなったら買えばよい、壊れたら買えばよい精神の持ち主で、手入れするという事や物を大切に扱うという事をしない人だった。そこが私の苦手とする部分でもあった。

「洗濯機は洗濯をしてくれるけど、じゃあ洗濯機の事は誰が洗濯してくれるの?人と同じだよ。よく働いてくれる人を便利だと言って使い倒すだけだと、それはその人がダメになるよね。いつもありがとうって、そういう人こそケアしてあげないとw」

長女は初めて気づいたようだった。ママは何も言わなかったけど、そういう事をしていたんだな、と理解してくれた。とても大切な事を、何故その時に気づかなかったんだろう。

洗濯機には洗浄液という物が売っていたりもするけれど、100均に売っているキッチンハイターで槽をつけ置きにするのも効果的、など、安価でお手頃で簡単な方法を教えた。ゴミ受けは掃除してる?ときくと、何それ、とも。出来ればそういう事をまだ母親に任せたい年齢かもしれないが、早くから知っておいても、やっておいても、損はない。

ただ洗う、ただ干す、それだけが面倒な年頃である事は百も承知。でもそこは、協力してやくれないだろうか。私自身、なんでもかんでも、やりすぎた気配をあの結婚生活で感じている。

『わかった。やってみる。わかんなかったら電話する』
長女はそう言ってくれた。洗濯はこちらでして干しておくから、仕上がった頃に取りに来て、と告げた。

いつも笑ってくれるからあの人は悩みがないのだろう、や、いつも元気にしているから痛いところなどないのだろう、なんてのは幻想で、いつもよく働いてくれる人や物に敬意を払う、そういう事が本当の"丁寧な暮らし"なのではないのだろうかと思う。一から皮をむいてコトコト煮るような手の込んだ料理を作っても、それはただ、手間ひまかけました、というだけで、その後を受け取ってくれる排水溝までを掃除する事が丁寧な暮らし。

掃除機にも、洗濯機にも、使い方次第で延命できるような使い方があり、その物の使い方で人が見える。ガサツな扱いをする人はどこまでいっても、相手が何でも、やはりガサツだ。丁寧にやって欲しい。

教えてこなかった事に、母としては反省しかなかったが、教えられる機会があった事は本当に有難かった。そういう事でもSOSを出してくれてありがとうとも思った。日常生活の中で、大切な事を教えあえる機会は沢山あります。そういう意味では、母親らしくなかったな、と、今回は、大反省!

大人になるという事は、物や者の後ろにあるものまでを想像して動くことだ。この人、いつも元気だけど、ではこの人が元気でいられる理由とはなんだろう、本当は苦しいのかもしれない、そう思いながら、過ごしてくれる大人になってくれますように。

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