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トークイベント「カルチベイト2023」開催

ちょうど1か月ほどまえに福岡に行くことがあり、工芸風向に立ち寄り、高木さんと長い立ち話をしました。ふと「高木さんがいま関心があることってなんですか?」というぼくのざつな質問に対し、「素材と継承」ということを教えていただきました。国内で調達できる素材が減り、円安で輸入物での対応も難しくなり、あらためて素材を担う「産地」の意味が問われるのではないか、とのことでした。あとは、跡継ぎ問題。今ではない、過去からの系譜と継承すべき未来への関心ということで、とても興味深く伺いました。


その流れで、ちょうど新潟は燕三条に「conte」(一菱金属)の取材で行く予定があると聞いたものですから、ぜひ工場見学のあとでトークイベントを開催したい旨をお伝えしご快諾いただいた、というわけです。

https://conte-tsubame.jp/

民藝』編集長であり「工藝風向」店主でもある高木さんが、プロダクトと括られながらも職人の技術が欠かせないものづくりにおける「工芸性」をどう捉えるのか、ということが興味深いことはもちろんのこと、燕三条の工業は「産地」としての工場の集積があり、宅急便の普及によって産地という制約から逃れることが可能になった少なからぬ陶磁器やガラス作家とは異なる系譜を持っています

イラストレーターの田渕正敏さんの絵もまた工芸的と言える

手前味噌となりますが、ツバメコーヒーがFD.inc協力のもと企画販売している「ワイスケドリッパー」もまさに工業と工芸のあわいにあるという認識ですし、河井寛次郎が言ったという「いまの機械製品はまさしく民藝の正統を受け継いでいる子であり孫であることは言うまでもない。機械は人間の新しい手なのだ、足なのだ、われわれの手と足と何ら対立しない」という言葉もそれを後押ししてくれるような気がします。

今回「ワイスケドリッパー」の特徴を吟味するなかで、既存の言葉では説明し尽くせないことがあり、新しい言葉をつくりだす必要を感じ、「ニューフォークプロダクト」という言葉が生まれ、それは以下のように整理しています。

「ニューフォークプロダクト」とは、様式・形状が簡素であるいっぽう、質感・触感が豊かであるもののことを言う。通常「プロダクト」であるためには、個体差がなく、経年変化しないことが前提となるが、——ステンレス(stainless)が「錆びない」ことを意味することが象徴的だが——工業化からこぼれおちた手作業をあらためてすくい上げ、経年変化を劣化ではなく、味わいと捉えていく感性を「フォーク(民俗性)」と呼んでみたい。使用することが、作り手のあとを引き継いで、またべつの製作につながるという捉え方と言い換えることもできる。コーティングによってあらゆる経年変化を止めることができる「進化」をあえてしない、という後退にも思える「回帰」は、「ニュー」という言葉に込めた現代性を表現している。

「ワイスケドリッパー」パッケージ裏の文言より引用

conteに通底する価値観、あり方と完全に重ならないとは思うものの、あたらしい呼び方、捉え方をしていく可能性の示唆として、受け止めていただけるとうれしい。

あらためて、民藝が持っていた手仕事のクラフトマンシップは、あらゆる手作業を伴う工芸に宿るわけではなく、機械生産によるプロダクトにも宿りうるのではないか、と思うことは当然といえば当然であって、あえていえば、製造プロセスよりもむしろクラフトマンシップにこそ、その重要性はあるのではないか、と思うのです。もっと言えば、メタ・プロダクトが(回帰的に)クラフトと近接する可能性についての話でもあります。

燕市における2日間にわたる取材を終えた高木さんをお迎えして、見学された率直な感想はもちろんのこと、上記のような問題意識に関してもやりとりができれば、と思っています。そして、あるときの工芸青花のポッドキャスト高木さんが「啓蒙とは未成年から抜け出すことである」とカントを引いていたことを引き受けつつ、高木さんにとっての「カルチベイト」(耕す)がどういうものであるか?ということもお伺いしたいです。きっと啓蒙とは、産地としての、職人としての、人間として「カルチベイト」に接続するはずですから。

高木さんを新潟にお迎えできるめったにない機会ですので、そんなことにご関心ある方はぜひお集まりください。


「カルチベイト2023」
日時:11月21日(火)午後7時〜9時
ゲスト:高木崇雄(「工藝風向」店主)
参加費:1,500円(コーヒー付)
会場:ツバメコーヒー(燕市吉田2760−1)
定員:15名
申込:tsubamecoffee@gmail.comまで、件名を「カルチベイト2023」とし、名前と連絡先を添えて

壮年であるはずの高木さんは、青年を越えて、まるで少年のようです…。

高木崇雄 TAKAKI Takao
「工藝風向」店主。1974年高知生れ、福岡育ち。日本民藝協会常任理事および機関誌『民藝』編集長。著書に『わかりやすい民藝』(D&DEPARTMENT PROJECT)、共著に『工芸批評』(新潮社青花の会)など。


おかげさまで満員御礼になったこともあり、トークイベントのアーカイブ動画を公開させていただくことになりました。

アーカイブ視聴に対してあらかじめお金をもらうつもりはありませんが、見てみておもしろかったなぁと思えた方は、ぜひ投げ銭をご検討いただけると助かります。
トークイベントを続けていくための、さらに多くの方に見ていただけるようにアーカイブ動画として公開するための費用として活用させていただきます。

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