第二十一話 魔王国での捜索

「ええい!忌々しい、なぜ見つからんのだ!」
荒々しい声を上げているのは白色のローブを着た男だ、魔王国の真魔王の側近という立場にある。

「あの混乱のさなかに外に逃げ出したはずがないのだ、城と街のすべての出入りを抑え、場内の人員が争うことなく我々に従ったのに、なぜ、姫とその侍女だけが見つからないのだ!」
苛立ちを隠さず、ドン!と眼の前のテーブルに拳を叩きつける。

「あの娘がいなければ、勇魔の剣を持っていても意味が無いではないか」
白色のローブの男は与えられた執務室に一人きりで、独り言にしては大きな声を上げて今の状況を改めて口にし、状況確認をして打開策を練ろうとしていた。

「もはや、あのさなかでも城を抜け出す方法があったと考える以外に無いな、次の手を打たなければならんか……」
魔王国の占拠からひと月が過ぎていた。

城内の人間ははじめは抵抗を見せていたが、突然開城し無抵抗で投降した。
食料庫を抑え、真魔王の名のもとで城内では大きな混乱をきたさず占拠前と変わらない運用ができており、城下町の破損の修繕に力を注ぐことができていた。

現状の懸念は、魔王の一人娘が見つからないこと。
元の計画では姫を確保し、剣をもたせて聖王国へ行かせ、真魔王が改めて魔王国を平定したことを伝えさせ、聖王国から干渉させず、名実ともに魔王国を平定するという計画であった。

「仕方がない、国境の街と聖王国の間に監視をさせるしかないか、城内の人員を割かなければならないのが少し痛いが、背に腹は変えられん」
冷静さを取り戻してきた白色のローブの男は決断をし、魔王に進言するため部屋をでて急ぎ足で魔王の執務室へ行きその扉をノックした。

執事がドアを開け、最敬礼をして中に入りご機嫌伺いをし、人払いを告げる。
その瞬間杖が淡く光ったように見えた。

そばに立つ執事がなにか言おうとするのを
「かまわん、貴様はしばし休め、何かあれば呼ぶ」と王が諌めた。
「承知いたしました。」間をおかず返事をして、部屋の中にある別の扉から使用人の控室へ入った。

執事はこの男を訝しんでいた、この白衣のローブの男が近づくようになってから、王はこの男の言いなりなのだ。
自分を残さず人と会うことのなかった王がこの男とは二人きりで会うのが不思議でならなかったのだ。
しかし、この執事自身も魔王にふさわしいのは我らの長であるディミトリ様だと革新していた。そして、その思いを叶えたこの男を無視するわけにはいかないのだ。

「で、ダミアン、なにか問題があったか?」ディミトリは白衣のローブの男に問いかけた。

「はい、城内にいるはずの王女とその侍女が捜索の網にかかりませんでした。ありえないと思っていたことですが、あの混乱のさなかに城外に出たと考えるのが妥当かと思います。ゆえに、念の為、追手を出し、国内を検めることと、国境の街とその向こうの聖王国との街道に網を張るため、人員をいただきたく参りました」
ダミアンと呼ばれた白衣のローブの男は顔を挙げずにそう告げた。

「手抜かりだな。余の姪に手荒なことはしないように細心の注意を払え、何かあったら貴様の責任とする、行け」

白衣のローブの男はそう言われると、了承した旨を短く返し、一礼をして踵を返し部屋を去った。
さり際のその顔は屈辱に歪んでいるように見えた。

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