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  • 剣と杖の物語

    過去二度の大戦を経て、互いに大戦の痛みを忘れぬように、和平条約を結び、平和が訪れた聖王国と魔王国。 魔王国に忍び寄る影によって平和な日常は一転し、それぞれの使命を果たし、再び平和を取り戻すための戦いが始まるのだった。 という、ような雰囲気のものを書いてみようと思っています。 この作品は カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/1177354054889944262)と 小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n7084fo/)にも書いています。

最近の記事

第二十三話 いざ!真剣勝負姉妹対決

「では、はじめっ!」 ルーカスの声が響いた。 「ケイト、私も姉としての矜持がある、全てを受けた上で打ち負かして見せよう」 ブレンダはケイトリンに言った。 「はい、お姉様。では、全力ですべてを出し切ってみせます」 ケイトリンはそう言い切ると、小太刀を右手に持ち正眼に構え、空いた手を顔の前で握り「せーのっ!」という些か真剣勝負には気の抜けた掛け声と共に前に突き出した。 手を突き出すと同時にブレンダの数メートル手前の土が盛り上がったかと思うと拳大の無数の石礫が勢いよくブレンダ

    • 第二十二話 卒業試験

      元勇者と元魔王の家で過ごして2週間ほどがたっていた。 その間も毎日魔王国の動きを確認していたが物資や小隊規模程度の出入りはあるものの、大きな動きはなく、反乱軍の活動も小規模で輸送部隊の物資を奪うことがあるものの体制に影響するほどの大規模の動きはなかった。 ルーカスとマヤはユウキの鍛錬を行うのと同時に、ブレンダ、マヤ、ケイトリンにも稽古をつけていた。 「さて、いよいよ卒業試験だ」 ルーカスは目の前に立っているブレンダとケイトリンを見ながら言った。 「はい、よろしくお願いい

      • 第二十一話 魔王国での捜索

        「ええい!忌々しい、なぜ見つからんのだ!」 荒々しい声を上げているのは白色のローブを着た男だ、魔王国の真魔王の側近という立場にある。 「あの混乱のさなかに外に逃げ出したはずがないのだ、城と街のすべての出入りを抑え、場内の人員が争うことなく我々に従ったのに、なぜ、姫とその侍女だけが見つからないのだ!」 苛立ちを隠さず、ドン!と眼の前のテーブルに拳を叩きつける。 「あの娘がいなければ、勇魔の剣を持っていても意味が無いではないか」 白色のローブの男は与えられた執務室に一人きりで

        • 第二十話 スペシャル料理

          「さあ!おまちどうさま、私の特製『鳥のからあげ』だ!」 ルーカスは、両手の料理をテーブルに並べながら言った。 「からあげってリナガリの街のアオイヤの食堂にもありましたよね?」 オリビアが聞いた。 「そうなんです!ルーカス様はアオイヤのほとんどの食べ物のレシピを教えた方なのだそうですよ!」 何故かケイトリンが誇らしげに返事をした。 「えっ!そうなのですか?ということは、あの『テゴネンチ』とか『角切りステーキ』もルーカス様が?」 ブレンダが聞いた。 「そうなんですよ!おね

        第二十三話 いざ!真剣勝負姉妹対決

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        • 剣と杖の物語
          25本

        記事

          スペシャルコース

          「おーい、そろそろ夕飯ができるぞー」 ルーカスが声を上げ、手を拭きながら表に出てきた。 「あら!じゃあ、今日はここまでにして、お風呂に入って汗を流しましょう!」 マヤはぽんと手を打って機嫌よく声をかけた。 オリビアとブレンダはその声を聞いてその場にへたり込んだ。 「あの子達なかなか筋が良いじゃない? マヤのスペシャルコースであれだけついてこられるのだから、なかなかのものだわね」 お稽古を見学していたミケが、オリビアとブレンダの様子を見に出てきたユウキに向かって言った。

          スペシャルコース

          お稽古とは?

          「ま、まぁ、冗談はさておき、それでは、ユウキ殿はオリビア様とケイトと共に聖王都へお願いいたします。」 ブレンダは気を取り直して、言った。 「あらあら、冗談ではもが〜」 マヤはルーカスに口を塞がれた。 「しゃー!!!あたしは認めないからね!! あたしもついていくんだからね!この泥棒猫にユウは渡さないんだからね!!」 ふんすと鼻息も荒くミケが言う。 「ど、どろぼうねこ……」 オリビアはショックをうけているようだ。 「それで、まぁ、ついていくのはいいけど、どうしたらいいんだ

          お稽古とは?

          次の行動

          「えー、あんたのお父さん王様じゃなかったの?」 ミケは興味なさそうに言った。 「街に潜伏するために商人を装っているようです、おそらくこの後ろにいるのは父です」 ブレンダは、水晶球をじっと見ながら言った。 商人を装った魔王たち一行は街の中を荷車を押しながら進んでいた。 今は犬から、アチラコチラにいる動物たちに視点を切り替えながら行方を追っていた。 街の中で商いが盛んなところを抜けて人通りの少ない路地に来ると、その角を曲がったところで後を追うことができなくなった。 「どう

          次の行動

          「はあ、はあ、はあ、報告をしろ!」 街の門から駐屯地に走って戻ってきた兵士が天幕に入るやいなや声をあげた。 「はっ!後方から到着を予定していた補給部隊が襲われ、物資を奪われました!」 天幕の中にいた兵士の一人が言った。 「それは先程聞いた!だから戻ってきたのだろうが!被害状況を報告しろと言っている!」 兵士は息を整えて返した。 「は、申し訳ありません。被害は補給物資10日間の食料ほぼ半分、戦闘となり気絶をさせられた補給部隊の兵士が数名おりますが、大きな怪我はありませんで

          魔王の行方

          「うーむ、どうやら、魔王も騎士団長殿も未だ所在が不明のようだな」 ルーカスは目と目の間を揉むようにしながら言った。 「潜伏場所と思しき場所が聞き取れませんでしたね」 ブレンダが続ける。 「大おじさまらしからぬ雰囲気がありました。あんなに覇気のない瞳、、あの男は見たことがありませんし……」 オリビアは、玉座に座る男を知っていた。 かつての魔王候補の一人であり、現魔王の実の叔父だった。 「じゃあ、ちょっと魔王と騎士団長の行方を探ってみようかしらね〜」 マヤは再び水晶球に手

          魔王の行方

          魔王国

          みなで水晶球を覗き込むと、建物の屋根が見えてきた。 「これは?」 ブレンダがマヤに聞く。 「この水晶球は、動物たちの目を借りてものを見る力があるの。これは鳥ね。 どうやら、大きな被害があるところとそれほど被害のなかったところがあるみたいね」 門への投石によりその周囲の建物は崩れているところがあるが、少し離れるとそれほど被害は無いようだ。 水晶球の像が、崩れた門の支柱の上から見下ろしているように切り替わった。 どうやら職人たちが門の周りの建物の復旧のために打ち合わせを

          魔王国

          勇者の剣

          「つまり、じいちゃんは神託を受けた勇者で、ばあちゃんはその勇者と戦った魔王だったってことか?」 話が続く円卓では、ユウキは初めて知る事実に驚きながら言った。 「まぁ、そういうことだな、相対したときの氷のような冷たい殺気を放つマヤの美しさ、まさにひと目で心を射抜くような視線、未だに昨日、いや、ついさっきのように思い出せるものだ」 ルーカスは感慨深げに思いを馳せながらマヤを見る。 「あらあら、あなた、その話よりも、魔法王国の王族の人がいるのだから、そちらの話を聞かないといけま

          勇者の剣

          聖人と魔人

          「まず、お話をさせて頂く前にお二人について確認をさせてください」 ブレンダは、ルーカスとマヤの目を見据えて言った。 全員で庭にあるテーブルを囲んで椅子に座った。 マヤは家に戻ってお茶の用意をして戻ってきて、皆に振る舞う。 「お二人はこの森に住むと言われる『聖人様』でらっしゃいますか?」 真剣な表情でブレンダは単刀直入に聞いた。 「……」 問われた二人は静かにお互いに目をやる、そしてルーカスが口を開く。 「ふむ。質問に質問を返して申し訳ないが、この森に住むのはなんと聞か

          聖人と魔人

          襲撃?衝撃!

          「あの剣は……」 「それより、聖人様のお宅はまだですか?」 オリビアが説明をしようとするのを止めるようにブレンダが聞いた。 「お、おお、そろそろだよ、そこの丘を越えるともう着くよ」 森の中で一際太く大きな木があり、周りには木が生えておらず、森ではなく草原が現れた。ぽっかりとそこだけ木が生えず陽の光がさし、畑や家畜が飼われていて、まるで聖域かのようにも見えた。 「おーい、じいちゃん、帰ったぞ−いるかー??」 「ぎにゃー!!!ユウこの状況でそれは……!」 ユウキは大きな声で

          襲撃?衝撃!

          疑問の答え

          窮地を救った少年は翼のある猫と勝手知ったる森の中をうしろからついてくる三人に話をしながらスタスタと歩みをすすめた。 「えーっと、まずは、殿とかってのは、やめてくれ、「ユウ」って呼んでほしい。そんな偉いもんじゃないからな。」 照れくさそうな笑顔でユウキはそういった。 「そうだなぁ、聖人ってのについてか。 うーん、この森に住んでいる人間は俺が知っている限り、じいちゃんとばあちゃんと俺だけだからなぁ…… うん、その聖人ってのは、たぶん、俺のじいさまかばあさまってことだな。」

          疑問の答え

          少年と猫

          「まったく、常識がないったらないわ!」 「まーまー、そっちの二人は大丈夫かな?」 オリビアは目の前で起こったことが全く理解できていなかったが、猫をなだめる少年が言ったことで我に返る。 「っ!!ブレンダ!ケイト!」二人の名を呼んで駆け寄る。 「くっ、申し訳ありません、瞬間的に動けなくなりましたが怪我はありません」 「うぅ、大丈夫です、地面に叩きつけられた瞬間は息ができなかったですけど、もう大丈夫です」 とブレンダもケイトリンも大きな怪我はないようだった。 「あんたが保護

          少年と猫

          出会い

          「はあ、はあ、はあ、はあ」 三人は身を潜め呼吸を整えて、追ってきたものをやり過ごす。 「なんとか巻きましたか、危なかった......」 ブレンダたち三人は一息ついた。 ゴブリンに見つかった三人はブレンダの術で足止めをしてそのまま走り去り、少し離れたところに窪地にあいた洞穴を見つけて身を隠した。 「このまましばらく身を潜めていれば、いずれいなくなるでしょう」 ブレンダは、オリビアとケイトリンに言った。 「ふぅ〜どうなることかと思いました」 「そうですね、まさか、あの状況

          出会い