襲撃?衝撃!

「あの剣は……」
「それより、聖人様のお宅はまだですか?」
オリビアが説明をしようとするのを止めるようにブレンダが聞いた。

「お、おお、そろそろだよ、そこの丘を越えるともう着くよ」

森の中で一際太く大きな木があり、周りには木が生えておらず、森ではなく草原が現れた。ぽっかりとそこだけ木が生えず陽の光がさし、畑や家畜が飼われていて、まるで聖域かのようにも見えた。

「おーい、じいちゃん、帰ったぞ−いるかー??」
「ぎにゃー!!!ユウこの状況でそれは……!」
ユウキは大きな声で呼びかけたが、何やらミケが焦っている。

「あ!しまった!まずい、みんな早く下れ!」

ドゴーン!!!!!
ユウキがそう言うやいなや、目の前にいたユウがついさっきの熊のように目の前からいなくなり、その代わりに大きな岩が飛んできた。

「あっぶね!今日は岩か、おい、もっと遠くに離れろ!!次が来るぞ」
いつの間にか岩の上に飛び乗っていたユウキが叫び、

「あんたたちこっちよ!」
慌ててユウから離れようとするミケに三人は混乱しながらも従った。

ガン!ゴッ!ゴガッ!
次々に飛んでくる縦横のサイズが2メートルほどの岩を蹴り落としては、最初に飛んできた岩の上に落とし、次々と積み上げていく。

岩を五つほど重ねると静かになった。

「ふぃ〜、あぶねぇあぶねぇ。おーい!じいちゃん!今日はお客さんがいるからこれ以上はちょっ……」
と言いかけると、今度は無数の《《氷の矢》》が飛んできた。

「うひー、今日は、ばあちゃんも参加か!でも今日は氷の槍アイス・ランスじゃないだなぁ」
とつぶやいてから、拳に力を込めて立ってる岩に向かって拳を振り下ろす。

ガガーン!!!
激しい衝撃音とともに岩が砕けいくつかに砕けた。

「そうか、氷の槍アイス・ランスより細かくしないといけないのか。『ガゴッ』よし、丁度いいサイズになったぞ、いくぞ!!」
気合とともに手を氷の矢に向けると、あたりに落ちている砕いた岩が氷の矢の方へ向かって飛んでいき、氷の矢をすべて叩き落とした。

「あれは!石の弾《ストーン・バレット》?しかし、詠唱がなかったような」
少し離れたところの木の陰から見ていた中で、オリビアは魔法の発動を感じつぶやいた。

「にゃにゃ!詠唱?あんた、もしかして魔法を使うとき詠唱なんてしてんの〜?」
ミケが少しいやらしい雰囲気で言った。

「え?ミケちゃん、そもそも詠唱なしで魔法を使うなんてできないですよね?」
ケイトリンが、ユウの一挙手一投足を見逃さんとして集中しているオリビアの代わりに聞いた。

「え?あたしはむしろ詠唱なんか聞いたことないわよ。詠唱なんてなくても魔法はつかえるでしょう?できるわよねぇ?」
逆に驚いた表情でケイトリンを向いて聞き返した。

「そうねぇ、魔法を使うときに詠唱という行為自体本質的には必要ないわねぇ」
ミケはケイトリンに聞いたのではなく、その後ろに立つ女性に向けた言葉だったようだ。

「あらまあ、かわいい女の子が三人も、ユウのお友達かしら?あの子も見る目があるわねぇ」
ウフフと柔らかい笑顔で、三人をみる。

「わたくしはユウの祖母のマヤよ、ユウがお友達を連れてくるなんて!歓迎するわ!ちょっとまっててね」
そう言って、持っていた長さ30cmほどの木の杖を軽く振るうと「ぎゃー!!ばーちゃーん!!!」というユウキの悲鳴のあと、雷が落ちるような音が聞こえたような気がした。

———

「そうか、ユウが友達を連れてきていたのか、それは悪いことをしたな、怪我はないかね?」
ユウキの祖父である、ルーカスが言った。

「ええ、ユウ殿がさがるように警告してくださったので、怪我はありません」
ブレンダが返事をした。

「はっはっは、すまなかったねぇ、驚いただろう。いつもユウが散歩から帰ってくるときに攻撃をかわす訓練をしているのだよ。
しかし、今日はなかなかの動きだったぞ、やっぱりあれか?かっこいいところを見せたかったのか?おいユウ!」

ルーカスはマヤのはなった魔法によって撃沈したユウキをみた。
ユウキは横になって濡れた手ぬぐいを額に当てている。

「そういうわけじゃないけど、巻き込んだらまずいと思ったらあんなふうに動けたんだよ」
ユウキは起き上がりながら言った。

「はっはっは、そうだな、いつも一人だったからな。周りに人がいて、守りながら戦わなければならないってことを知るいい機会になったな。
雇われ兵や戦闘狂でもない限り、戦になったらほとんどが何かを守りながら戦うことになるからな、一人だけで戦うのと、大切な人を守りながら戦うのとでは行動に大きな違いが出るだろう」
ルーカスは満足そうに言った。

「そうだなぁ、たしかに、これまではただ避ければよかったけど、今日は避けて後ろにいる三人にあたったらまずいと思って、岩は叩き落とした。
氷の矢も一発も漏らさないように迎撃するには、それ以上の数を打ち出してちゃんとコントロールする必要があった。そのへんが違いだな」
頭を手ぬぐいで抑えながらユウキは言った。

「そうだな、そのあたりも行動を考えなければならん。
相手の気を引いて向きを変えるだけでも十分効果が得られることがあるからな」
ルーカスはユウキの考えに補足した。

「さて、そろそろ本題に入ろうかね。お嬢さんがた、魔法王国の王族がここにきたってことは魔王国でなにかあったってことだな」
温和な表情でありながらそれまでとは違った真剣な声色になって三人に聞いた。

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