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行動分析学で社員のやる気を引き出す。ビジネスにも役に立つ実践のための心理学

行動分析学で社員のやる気を引き出す技術 という本から、行動分析学をビジネスの視点で考えます。

行動分析学とは

行動分析学は心理学の1つです。行動の分析から原因を解明し、行動に関する法則を科学的に見い出します。1930年頃に、米国の心理学者 B. F. スキナーによって確立された行動の科学です。

応用範囲は広く、企業などの組織行動マネジメント、教育、家族関係、環境問題、スポーツのコーチング、医療、看護、リハビリテーション、動物のしつけやトレーニングなどの様々な分野で活用できます。

人の行動を決定づける原理

本書で紹介されるのは、3つの原理から人の行動を分析し、予測や制御することです。3つとは、「強化」「消去」「弱化」です。

人の行動を誘発する要因

強化:
行動直後に「良いことがある」(例: 心地よさ、苦痛からの解放) 。その行動をもっとするようになる

消去:行動直後に「何も変わらない」(例: 心地よくもならない、苦痛からの解放がない) 。その行動をしなくなる

弱化:行動直後に「嫌なことがある」(例: 不快や苦痛を感じる、心地よさが失われる) 。その行動をしなくなる

人がある行動をしたり、しなかったりするのは、必ず理由があります。

理由は、強化・消去・弱化で説明ができます。このシンプルな考え方は行動分析学の特徴です。行動分析学は、実践のための心理学です。

行動の「直後」の目安は、60秒以内

行動分析学では、行動直後にどういう状況の変化 (強化や弱化) 、あるいは変化しないこと (消去) に、行動の原因を見い出します。

ここで言う「直後」とは、行動分析学では60秒以内という目安があります。60秒は研究から導き出されました。60秒以内の直後であれば、行動に強く影響を与えると考えます。

もちろん、60秒を1秒でも過ぎれば効果が全く無いわけではありません。行動直後の1秒でも早く強化や弱化が起これば、それだけ行動への影響が大きくなるという考え方です。

問題を行動として再定義する

本書は、前半で行動分析学の説明、後半でビジネスでの組織マネジメントへの実践について書かれています。

行動分析学がおもしろいと思うのは、行動という切り口で、部下の育成や上司への働きかけなどの組織マネジメントの問題を解決することです。

問題解決では、問題をいかに解くべき課題に落とし込むかが重要です。行動分析学のアプローチに当てはめると、問題を「観察し測定できる行動」に再定義することです。

例えば、問題を「社員の覇気がない」「リーダーシップがない」だとします。問題を解決するためには、この状態からどう解決するかの課題設定をする必要があります。

行動分析学の考え方は、それぞれの問題を以下のように測定できる行動に解釈し、問題を課題として再定義します。

「社員の覇気がない」を行動で再定義
・あいさつをしない。すれ違う時も黙って通り過ぎる
・話をしていても目を伏せる。明るい表情をしない
・会議で発言をしない
「リーダーシップがない」を行動で再定義
・構想 (チームが目指す理想の絵) を描けない
・優先順位をつけられない
・やらないことを決断できない

問題である「社員の覇気がない」「リーダーシップがない」に対して、課題設定を単に「社員に覇気が出るようにする」「リーダーシップを持ってもらう」としただけでは、問題をただ裏返しにしたにすぎず解決しません。

問題を行動として再定義すれば、解決に向けて具体的な方法につなげられます。

行動なので、「やったか」「やらなかったか」を測定できます。より効果的な行動は具体的にどうすることなのかを伝えたり見せることができます。

自分を褒める「自己評価」

行動分析学の「強化」とは、行動直後に起こる良いことです。

本書では、ぜひ取り入れたいこととして「自己強化」を挙げています。自己強化の例は、自分で自分を褒めることです。自分が望ましい行動をしたと思ったら、直後に自分を褒めるのです。

チーム内で、お互いに褒め合ったり称え合うことも有効です。メンバー同士で、お互いに望ましい行動を褒め合えれば強化の効果も高まります。


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