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行動科学マネジメントに学ぶ、マーケティングのトライアル購入とリピート購入へのヒント

短期間で社員が育つ「行動の教科書」という本には、「行動科学マネジメント」というマネジメント理論が書かれています。

人に望ましい行動を繰り返してもらうにはどうすればよいかです。

今回は、行動という視点でマネジメントについて捉え、マーケティングへの応用を考えています。

行動科学マネジメントのための「ABC モデル」

行動を起こすためのマネジメントが、「ABC モデル」です。

ABC モデル
・A (Antecedents) = 先行条件
・B (Behavior) = 行動
・C (Consequences) = 結果

ABC モデルは、行動の前後に注目します。

行動のきっかけとなる「先行条件」、行動後に起こる状況変化などの「結果」の2つを考えます。行動科学マネジメントでは、それぞれが行動にどのような影響を与えたかを分析し、行動のマネジメントに活かします。

初めて行動を起こすきっかけは「先行条件」

興味深いと思ったのは、「初めての行動を起こすきっかけ」と「その行動を継続する要因」は異なることが、ABC モデルから説明できることです。

人が、最初に何かの行動を起こすのは「A (先行条件) 」によります。これは「誘発刺激」と言い換えることができます。具体的には、

誘発刺激の具体例
・「白髪が気になった」から髪を染めた
・「どうぞとすすめられた」から菓子を食べた
・「友人に誘われた」からハイキングに出かけた

こうした先行条件で人は確かに行動します。

 しかし、それを繰り返すかどうかはわかりません。繰り返すには、その行動をとった結果どうなったかが重要になります。

初めての行動は、行動後にどうなるかの結果は経験していません。行動を起こすかどうかは、ABC モデルの「先行条件」、別の表現では「誘発刺激」がきっかけになります。

では次に、行動後について見ていきましょう。

行動を継続するためには「強化刺激」

行動を継続できるかは、誘発刺激とは別の要因が作用します。本書では「強化刺激」と表現されます。

実は誘発刺激よりも強化刺激にずっと大きな影響を受けていますが、あまり意識されません。

眼鏡をかけている人に「なぜ眼鏡をかけているのか」と聞いても「目が悪いから」という答えが返ってくるでしょう。「目が悪い」というのは誘発刺激である先行条件です。

しかし、その行動をとり続けている理由は「眼鏡をかけるとよく見える」という結果を手にしているからです。これが強化刺激です。

誘発刺激と強化刺激のポイント

ここまでをまとめると、「誘発刺激によって行動を起こし、強化刺激で継続してもらう」となります。

誘発刺激と強化刺激を効果的なものにするためには、本書では次のポイントを挙げています。

誘発刺激
・自尊心を傷つけないこと
・負担感が少ないこと
強化刺激
・達成感が生まれる
・承認欲求が満たされる
・貢献度が実感できる
・成長度がわかる
・自己肯定感が高まる


ではここまでの内容を踏まえ、マーケティングへの応用を考えてみましょう。

誘発刺激と強化刺激のマーケティングへの応用

行動科学マネジメントの誘発刺激と強化刺激は、マーケティングに応用できます。

ABC モデルの考え方は、初めて商品やサービスを買う「トライアル購入」と、再度買う「リピート購入」のそれぞれに示唆があります。

トライアル購入とリピート購入では、購入の理由が同じではありません。トライアル購入では、新規性やめずらしさでも買ってもらえます。例えば、新しいフレーバーが新発売されて買われる場合です。

しかし一度買ってもらえたからと行って、再び買ってもらえるとは限りません。ここに、売り手から見たリピート購入の難しさがあります。

行動科学マネジメントの ABC モデルに当てはめると、トライアル購入には、「誘発刺激」から買うきっかけをいかに生み出せるかです。リピート購入には「強化刺激」によって、買うという行動を継続してもらえるかです。

マーケティングの文脈で誘発刺激と強化刺激の位置付けは、次のようになります。

マーケティングへの応用

誘発刺激:まだ経験していない買った商品やサービスの利用価値への期待。これを使えばこのような良いこと・うれしいことがありそうという期待。トライアル購入のきっかけになる

強化刺激:利用したときに感じた実際の利用体験価値。リピート購入を促す

最後に

行動科学マネジメントは、管理職や経営層がどうすれば組織マネジメントをできるかを体系化したものです。

今回のノートで書いたように、行動マネジメントはそれだけにとどまりません。個人のレベルでの習慣化やマーケティングでの購入という行動をどう起こすかなど、幅広く応用できます。


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