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不動産にまつわる自然災害リスク

火災保険料の値上げ

 台風や豪雨などの自然災害の増加によって、ここ最近値上げが続いていた火災保険料が来年度はさらに値上げされるという記事が少し前に出されました。

 そもそも、火災保険はその名の通りの「火災」に関する被害だけでなく、さまざまな自然災害による被害に対しても保険金の支払いを受けることができるというものですが、火災保険等の不動産に関する保険のお話はまたの機会にするとして、今回は不動産にまつわる自然災害リスクのお話をしたいと思います。

不動産にまつわる自然災害リスク

 NHKが日本損害保険協会の資料を基に作成した「主な風水害による保険金の支払額」によると、主な風水害による保険金(火災保険以外の車両保険なども含む)の支払い額の推移は次の通りとなっています。

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 2018年・2019年度は2年連続で保険金支払い額が1兆円を超えており、2020年度の支払い額はおおむね従来通りの水準にあるものの、保険金の支払額の推移からもわかるように、近年、大規模自然災害が立て続けに発生し、その被害は甚大であったことが確認できます。

自然災害リスクの見える化「ハザードマップ」

 自然災害による被害を最小限にとどめるために、事前の災害対策や災害時の危険箇所・避難場所についての正確な情報を提供することを目的として、ハザードマップが公表されています。

 ハザードマップには、風水害に備える「洪水ハザードマップ」、火山噴火に備える「火山防災マップ」、地震災害に備える「地震防災マップ」、液状化災害に備える「液状化被害想定図」、津波・高潮に備える「津波災害予想図」があり、さまざまな災害リスクを見ることができます。

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不動産取引におけるハザードマップの役割

 甚大な被害をもたらす大規模水害の頻発を受けて、不動産取引時において、水害リスクに関する情報が契約締結の意思決定を行う上で重要な要素となっていることを踏まえて、2020年7月に「不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を事前に説明することを義務づけること」とする宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する命令が公布され、8月28日から施行されました。

 これにともなって不動産取引に際して、水防法に基づいて市町村が提供する水害(洪水、雨水出水、高潮)ハザードマップに関する情報を提供することが義務付けられました。

 具体的には、取引対象となる物件の所在地がハザードマップに表示されている場合、水害リスクのある区域に所在しているか否かに関わらず、重要事項説明においてハザードマップにおける物件の位置を示す必要があります。

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出典:「公益社団法人全日本不動産協会」公表資料 

 ハザードマップは以下のポータルサイトで調べることができますが、実際に、ハザードマップに水害リスクがあると表示されている区域に所在する物件について、事業者が出店を見送るといったケースも発生しており、ハザードマップにおける物件の位置が不動産取引に少なからずとも影響を与えてきていると言え、今後、不動産取引におけるハザードマップの重要性は増していくものと思われます。


 

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