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家族とわたし

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月替わりのゲストによる、「家族との思い出」をテーマにしたエッセイ
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あかりをつけて【家族とわたし】#5 瀧波わか

くらいへや 2020年初春。光差す季節、であるはずの時期。 世界中で猛威をふるう新型ウイルスの影響が、我が家にも訪れていた。 外出自粛に保育園の長期休園。 それに伴う、完全リモートワークと自宅保育の両立に、頭を悩ませていた。 娘は、3歳。 会話で意思疎通はできても、大人のように1人で長い時間を過ごすことは難しい。 自宅で親と過ごしせることが嬉しいのか、いつも以上に「ねぇねぇ、ママみて」「ママこっちきて!」の要求は強かったように思う。 人命がかかっているのだから、外出自

あのとき言えなかった「ありがとう」のゆくえ【家族とわたし】#4 大平一枝

苦手だった母の小言  幼い頃から母が少し苦手だった。感情的な性格が、似すぎているからだろう。長野で今も元気に父と暮らしているが、帰省すると三日目くらいには小さな口喧嘩が勃発してしまう。いい年をした大人なのに、我ながら情けないことである。  母は小言が多く、長い。たとえば朝食で味噌汁椀を持つ手が滑り、こぼしてしまうと、食事を終えるまで小言が続く。その後、何かをこぼすと「あのときもそうだったけど」と始まる。  自分が親になったら、絶対に注意は短く切り上げようと心に誓った。また

【家族とわたし】#3 渡辺俊美

もし「あなたと家族の思い出を聞かせてください」と言われたら、あなたはどんなエピソード、どんな感情を思い浮かべますか? 「家族とわたし」では、毎回ゲストをお招きして家族にまつわるエッセイをお届けします。第3回は、ヒップホップバンド「TOKYO No.1 SOUL SET」をはじめ、ギターとヴォーカルで幅広い音楽活動をされている渡辺俊美さん。2020年に映画化された著書『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』では高校生の息子さんとの絆が描かれていましたが、実は幼い長女と次男

【家族とわたし】#1 桜林 直子

もし「あなたと家族の思い出を聞かせてください」と言われたら、あなたはどんなエピソード、どんな感情を思い浮かべますか? 「家族とわたし」では、毎回ゲストをお招きして家族にまつわるエッセイをお届けします。第1回は、クッキー屋を経営しながら子育てをされてきた桜林直子さん。noteでも人の繊細な心に寄りそう投稿で人気を集めています。そんな桜林さんが、9歳の頃からイラストレーターとして活躍する娘の「あーちん」さんと積み重ねてきた「あるルール」について語ってくれました。 *** 9