楽曲について

Sin City / written by Chris Hillman & Gram Parsons
ザ・バーズをクビになったグラム・パーソンズと、後を追うようにザ・バーズを脱退したクリス・ヒルマン。お互いカントリー好きで意気投合する2人が、最初に共同制作した曲ということで、程なく2人を中心に結成されたフライング・ブリトー・ブラザーズ1969年発表の1stアルバム「黄金の城(The Gilded Palace of Sin)」に収録されました。
同バンドはいわゆるカントリー・ロックのパイオニアとされ、この曲は以後カントリー・ロックのアンセムとして定着し、現在もカルト的な人気を誇っています。

曲を聴く前にイメージしたいこと

一般的には Sin City はラスベガスのことを指しますが、この曲においてはロサンゼルスのことを示します。
巨額が動くショービジネスの中心地 LA は今も昔も、金に目が眩んだ人の心を狂わせてしまう恐ろしい魔物が住んでいるということでしょうか。なんでもクリスが当時人気絶頂のザ・バーズを脱退した原因が、悪徳マネージャーがバンドの金を着服したからで、そのマネージャーが実際に住んでたのが超高層31階にある金メッキのドアの家だったそうです。
虚業と化した音楽ビジネスと、そこに関わる狂った人々、LA という街そのものの退廃ぶり。シニカルで重い歌詞を牧歌的なカントリー・ワルツで歌い上げるあたり、他のどのロックよりもロック的です。7年後に全く同じモチーフでイーグルスが歌った「ホテル・カリフォルニア」の源流になっているのでは……それではどうぞ!

歌詞と対訳

This old town is filled with SIN
この街は 罪に満ち溢れている
It will swallow you IN
きっとお前も 丸飲みされるだろう
If you've got some money to BURN
有り余るほどの 金を得たのなら
Take it home right AWAY
今すぐ家に帰って 大人しくすることだ
You've got three years to PAY
向こう三年 首が回らない程度ならまだ良い
But Satan is waiting his TURN
その先に 悪魔が待ち構えているから

[Chorus]
This old earthquake's gonna leave me in the poor house
この街は 俺を身ぐるみ剥がそうとする
It seems like this whole town's INSANE
このとおり 街全体が狂気の沙汰だ
On the thirty-first FLOOR a gold plated DOOR
超高層31階の 金メッキのドアの奥に逃げても
Won't keep out the Lord's burning RAIN
狂気の雨からは 逃れられない

The scientists SAY
科学者たちは こう言うんだ
It'll all wash AWAY
その神の雨は 全てを浄化してくれると
But we don't believe any MORE
でも俺たちは そんなこと全く信じない
'Cause we've got our RECRUITS
なぜなら こないだの新しい取り巻きは
And our green mohair SUITS
緑のモヘアのスーツで着飾った 怪しい奴だったから
So please show your I.D. at the DOOR
だからお前も ちゃんと身分証明書を見せてくれよな

[Chorus] 繰り返し

A friend came AROUND
とある人物が やってきて
Tried to clean up this TOWN
この街から 不穏分子を一掃しようと試みた
His ideas made some people MAD
その考えに 一部の者は怒りを露わにした
But he trusted his CROWD
それでも彼は 大衆を信頼し
So he spoke right out LOUD
自分の主張を はっきり声に出したが
And they lost the best friend they HAD
その結果 大衆は最良の友になる筈だった彼を失った

[Chorus] 繰り返し

  • This old earthquake……全米屈指の地震多発地帯に位置するロサンゼルスの異名、と解釈しました。

  • The Lord's burning rain……科学者にとっては、街の浄化をもたらす神の恵みの雨。果たしてその実態は、金に目が眩む人々を狂わせる狂気の雨、と解釈しました。怖いですね〜。

  • green mohair suit……こんな高級素材のスーツを身につけるのは、芸術ではなくファッションとして音楽に近づいた業界の群衆たち。その象徴として描いてます。そんな業界関係者にグラムは辟易していたそうで、クリスが主体で書いたこの曲にグラムがこのラインを追加したそうです。

  • 3回目のヴァース「A friend」は1968年にLAで暗殺されたロバート・ケネディのことを指すと言われていますが、キング牧師しかり……この時代は、正論を主張をする人物は抹殺されてしまう、という雰囲気がアメリカ全体に漂っていたのかもしれません。まさに「ホテル・カリフォルニア」に通ずる絶望感!

  • この曲が書かれる経緯については、クリス・ヒルマンの自伝を解説されているこちらの記事を参考にしました。

  • この曲は翻訳する上で謎が多く、テネシーに住んでいるアメリカ人の友人に助けを求めましたが、カントリー・ロック・マニアの彼をしてもミステリーとのことで(笑)ヒントとして教えてもらったこちらの記事がとても参考になりました。

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