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「Gゼロ」ワールドが姿を現す

今晩、BSーTBSの報道番組を観ていて、考えさせられることがあったので一言。

番組では、元英統合軍トップといった欧州人のインタビューなどが流れたのだけれど、「ロシアのウクライナ侵攻は欧州にとっての911だ」「あの日を境に、世界が変わってしまった」といった言葉を聴きながら、私は「薄ぼんやりしていた ”Gゼロ” ワールドがハッキリと姿を現し始めた」と受け止めた。

「Gゼロ」は、言うまでもなく米国の覇権が退潮し、その後を継げる者が(中国を含め)誰もいない状態のことだ。世界を「多くの問題が詰まった樽」に喩えるなら、米国の覇権は、樽がぶっ壊れないように嵌めてあるタガみたいなものだ。このタガは功罪半ばなのだが、緩んでしまうと中に詰まった問題が膨らんで、樽がバラけて壊れてしまう・・・そんなイメージだ。

ロシアのウクライナ侵攻に限らず、中国の挑戦的姿勢、自由貿易の縮小(経済安保、人権)、グローバル・サプライチェーンの混乱・・・最近の世界が政治的にも経済的にも不安定化しているのは、みな冷戦終結後30年間続いてきた米国主導の国際秩序が弱体化し、解体しつつあることの表れなのではないか。

中国などは、米国覇権の衰退を「世界が多極化に向かう善い兆しだ」と喜んでいるが、後に来る「Gゼロ」ワールドはカオス的、無秩序の弱肉強食世界になると思う。

そのことが日増しに感じられるようになったので、最近出した「米中対立の先に待つもの」のテーマの一つにして、「米国が主導して維持されてきたこれまでの国際秩序が解体していくのではないか」等々、書いたところだ(「グレート・リセット」論)。

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でも、本書を脱稿した年始めには、ロシアのウクライナ侵攻ほどあからさまな形で、暗い未来を予感させる出来事が待っているとは夢にも思わなかった。

ロシアのウクライナ侵攻に大多数の国が団結して反対したことは救いだ。現行の国際秩序をかくもあからさまに破壊する行いを許してはならないという考えは、未だに世界の主流なのだなと。

ただ、「そのために、ロシアには高い代償を払わせなければならない」という言い方は、まるで「ロシアに裁きを与える」と言わんばかりだ。

そんな「上から目線」でいると、脚をすくわれると思う。実際には「高い代償」の半分は我々の側が払う覚悟が必要だ。「ロシアに高い代償を払わせても、我々の側はノーコストで済む…」そんな話が通用するなら、国際秩序はちっとも揺らいでなんかいないということだ。

どれほどの経済的な損失が生まれるかは、追々明らかになってくるだろうが、経済損失で済めばまだ良い。ウクライナ危機はとんでもない事態に発展する可能性も否定できなくなってきた。「Gゼロ」ワールドとは、きっとそういうものだ。


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