■見どころ
１年ぶりに犬飼貴丈がゲストで登場。
妹を殺害した心理学者に巻き起こるその後の事件を、豪華キャストで描く。

■あらすじ
「DADA」の常連客で占い師の柳幽幻（山口紗弥加）は、今日も悲壮感あふれる姿で酒を飲んでいる。「左京さん、実はまた厄介なものが見えてしまったの、私。天馬樹（犬飼貴丈）が亡くなるみたい…」と、幽幻は左京に呟いた。

天馬樹は、１年前、失踪した妹の捜索を左京に依頼した心理学者だ。しかし、左京の捜査の末、妹を殺害したのは樹本人だと判明。多重人格との精神鑑定が下され、現在、医療刑務所で服役中の身だ。そんな樹が亡くなる…。やけに当たる幽幻の予知を聞き、左京は早速、樹の弁護士・権堂律（柴咲コウ）を訪ねることに。　

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権堂弁護士事務所は、丸の内に居を構える小ぢんまりとした事務所だ。権堂は、精神鑑定を必要とする被告人の弁護を中心に活動する弁護士として、度々メディアにも登場する気鋭の人物だ。左京は彼女とふたりで会うのは初めて。眼光鋭い彼女と対峙し、左京はいつもよりもやや緊張していた。「天馬樹さんについてお聞きになりたいことがあるとか？」権堂から切り出した。「そうなんです。最近、天馬さんに何か変わったことはありませんでしたか？」「いえ、別に特には…」「たとえば、体調が悪そうな様子はありませんでしたか？」「体調？至って体調は良好ですが」素っ気ない返答に部屋が静まり返っている。

左京は彼女のデスクにふと目をやった。「手紙…。あの手紙は特別な方からのお手紙ですか？一通だけ、書類の束から分けて置いてらっしゃるものでして」「あれは天馬さんからの手紙です。昨日、届きました」「接見できるあなたになぜわざわざ手紙を書いたのでしょうか？しかも、郵送までしている。手紙の内容はどのようなもので？」「まだ拝読しておりません。それに」「そうですよね。被告人といえども、手紙は私信。第三者に明かすことはできませんね？」「おわかりならば、お聞きにならないでください」「しかし、嘘はいけません。あなたは既に読んでらっしゃる。便箋の端だけ封筒から出ていますから。きちんと便箋をしまえないほど、手紙の内容に動揺なさっていたことがよくわかりました。今日のところは引き下がります。私は、天馬さんの身を案じているだけなんです。なので、私には警戒なさる必要はございませんので」そう言って、左京は権堂弁護士事務所を去った。

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左京は天馬のいる医療刑務所へ向かった。面会窓口でスタッフとひと悶着しているところへやって来たのは、天馬樹のカウンセリングを担当する精神科医・星知（中村倫也）だった。

「天馬くんにご面会ですか？」星は、彼特有の物腰柔らかな表情と口調で左京に問うた。「失礼致しました。私、左京と申しまして、天馬さんの知人です。面会を致したく参りました」そう応える左京を見て、「あなた、天馬くんの逮捕に協力された方ですね？裁判であなたを拝見しました」と柔和な笑顔で話す星。「えぇ、そうです。もともと天馬さんとは飲み屋で知り合いまして。体調が悪いと伺いまして、面会に来た次第です」「それはそれは！是非ご面会ください。では、僕はこれで」と星はにこやかに言って、その場をあとにした。

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実に１年ぶりの対峙となる天馬と左京。面会室のアクリル板の向こうにいる天馬は、やけに晴れやかな表情で、左京はやや面食らってしまった。「その表情を見るだに、心境に変化があったのですね？」左京の問いに天馬は「刑務所のこのような環境の中でも、律さんのおかげでとても充実した日々を送れています」不気味なほどの笑みを浮かべながら応えた。「律さん？あぁ、権堂弁護士のことですね？心強い方ですからね」「律さんは、僕の生きる望みです」少しチグハグな会話の後、左京は唐突に「知さんと先ほどばったり会いました」と続けた。「星さんとは週に３回、カウンセリングでお会いしてます。今日がその日でした。律さんの話をたっぷり話したんですよ」

左京が星のことを「知さん」と呼んだのにもかかわらず、天馬は「星さん」と苗字で呼んでいる。一方、天馬は権堂弁護士のことを「律さん」と名前で呼ぶ。左京は、権堂弁護士事務所で見た天馬からの手紙が恋文であると確信した。天馬は権堂に好意を抱いている。閉鎖された刑務所では、接見できる限られた人物に好意を抱く受刑者は多い。しかし、なぜ、権堂と星はそれを隠したのか？塀の中で何かが起こる予感を左京は抱いた。

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翌日、左京は星メンタルクリニックを訪れた。アポ無しで訪れたため、多忙な星とはその夜、「DADA」で会うことになった。

あの天馬樹のカウンセラーがやってくると聞き、マスター（光石研）はそわそわしている。「左京が会うってことは、その星って男は何かやってるってことだよな？ドキドキするなぁ」とマスター。「別に雑談するだけですから。マスターはいつもの通り、酒と料理作りに専念してください」と左京が言い終えた時、星が姿を現した。

「お待たせしてすみません」星は昨日と同じ柔和な笑顔だ。「天馬さんは、権堂弁護士に好意を抱いてらっしゃるようですね」左京は唐突に本題を切り出した。「えぇ、実はそうなんですよ。それが何か問題でしょうか？」「やはりそうなんですね！ええ、獄中ではよくあることだと聞き及んでいます。しかし、当の権堂弁護士がその事実を隠してらっしゃる。彼から恋文まで貰っているのに、その存在もひた隠し状態です。なぜだと思われますか？是非、精神科医の先生に見解を伺いたく…」

「彼女はプライドが高いんです。あくまでも仕事として天馬くんと接しているという弁護士像に過度なプライドを持っているんですよ。被告人から好意を抱かれる事自体、何も気にすることではないのに、その事実を認めない。彼女はそういう人物なんです」星は初めて厳しい口調になった。

「そういうことですか！納得しました」「それは良かったです」「しかし、おかしいですねぇ」と左京。「いま、納得したと仰いましたよね？」と苦笑する星。「恋文を貰ったことぐらいお認めになっても良いと思うんです。しかし、権堂弁護士はお認めにならない。ということは考えられる点は、次の２つです。１つめ、実は権堂弁護士も彼に恋心をお持ちで、実はお付き合いをしようとなさっている。あるいは、既に交際なさっている。２つめ、彼が出した手紙は恋文だが、加えて全く違う内容も綴られており、それを権堂弁護士は看過できなかった。そのため、恋文そのものの存在を否定なさっている。星先生は、どちらだと思われます？」

「それを僕にお聞きになって、どうなるものでもないでしょう？」と星。「いいえ！あなたは天馬さんの手紙の内容をご存知でしょう？だから、伺ったんです。天馬さんは、権堂弁護士、彼は律さんと呼んでいますが、彼女のことをなんでもあなたに話した、と仰ってましたよ。手紙の内容、ご存知なんでしょう？」と左京は星を詰めた。

「左京さん、、、あなたには負けましたよ。手紙の内容、知っています。あなたの２つめの推理がご名答です。手紙は恋文であり、告発状でもありました。『星さんが僕を殺そうとしているから、助けてほしい』と書かれていたのです…」

「あなたは天馬さんを殺そうとなさっているのですか？」左京がそう聞いた時、世田谷警部（橋本じゅん）が店にやって来た。警部はただならぬ店の雰囲気を察したようだ。

「まさか！第一、塀の中の天馬くんをどうやったら殺害できるとお考えですか？まさに彼の戯言。妄想です」「ということは、あなたのカウンセリングはあまり効果がない、というよりも、以前はなかった妄想癖を発症してしまったということになりますが、異論はありませんか？」「僕の能力をどう捉えられようが結構です。ただひとつ、僕は彼を殺すことはできないし、そもそも殺す動機もないということははっきり申しておきます。今夜、まさかこんなことを言うことになるとは、思いもしませんでした」怒気をはらみながら、星はそう言い放ち、店を出ていった。

左京、マスター、そして、警部は静まり返った店内で何も言わずに佇んでいた。

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翌日、左京は権堂弁護士から連絡を受け、医療刑務所へ向かった。天馬が自殺を図ったという。刑務官によると、刑務官が見回りのタイミングで首を吊ろうとしている天馬を発見。全く大事には至らなかったという。

「星に殺される」と綴っていた天馬が自殺を図ったのはなぜか？
そして、謎の精神科医・星の思惑とは？
今シーズンラストの事件に左京が挑む！

■ゲスト
天馬樹…犬飼貴丈（★）
星知…中村倫也
権堂律…柴咲コウ（★）
柳幽幻…山口紗弥加（★）

■妄想放送日
2024年３月30日（土）23時〜
※通算第44話

■事件の真相と顛末
▼初対面から星を怪しく感じていた左京。
→「天馬の体調が悪いと聞いた」とカマをかけたが、そのことには一切スルー。権堂のように「体調は良い」と反論するのが通常のリアクションだが、そうリアクションしなかった星には何か後ろめたいことがあると左京は推理した。

▼天馬は当初、星を頼りにし、彼に依存するようになっていた。その後、徐々に権堂へ好意を抱き始めた天馬。天馬は彼女への想いを星に語るようになり、そして、自慰行為をも行っているとまで告白するようになった。そんな天馬を見て、嫉妬を覚えたのが星だった。自分を依存してくれる天馬に、星はいつのまにか好意を抱き、やがて依存し、その感情は殺意へと変わった。

▼星は、天馬に自殺未遂を起こせば、権藤が振り向いてくれると誘導し、殺害を計画。

▼左京は権堂の協力の元、星を罠にかけ、世田谷警部とともに逮捕に踏み切る。
→天馬の入院するベッドに、天馬の代わりに警部を潜り込ませ、星に殺害を実行させる。殺害直前で、左京が登場し、逮捕。