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政治(法律)講座ⅴ1587「『期限の利益』を無視する中国」

後述する報道記事は法的権利の解説がないが、中国なら法整備や権利保護が希薄な国なので、あり得るかもしれない。
日本でいうならば契約内容にもよるが、「期限の利益」の問題であろう。
今回はそのような報道記事関連を紹介する。

     皇紀2684年1月8日
     さいたま市桜区
     政治(法律)研究者 田村 司 

はじめに

 住宅ローンを借りて家を購入した者も多いと思われる。
住宅ローンのような金銭消費貸借契約書において、約定返済が行われて毎月決められた通りに返済していたが、債権者(銀行)から返済を迫られ、家を競売に掛けられたら困る。このときに住宅ローンを借り入れている債務者は困ることになる。このときに保護してくれる法律が日本にはある。これが「期限の利益」という契約した期間は返さなくてもよいという法律がある。
ただし、住宅ローンの毎月の返済を遅延するようだと「期限の利益の喪失」という特約条項により、「期限の利益」の権利の主張が出来ずに即時返済しなければならなくなるのである。
これが債務者における「期限の利益」の骨子である。
翻って債権者にも期限の利益がある。満期まで得ることのできる利益が失われることになる。その債権の契約内容はどのようになっているかは報道記事では解説がないが、期限前の早期償還は、債権者にとっての逸失利益が発生することになる。もらえる利金・利子が減少することになる。期限の利益が失われることになる。そこで後述する報道記事の内容になる。

期限の利益及びその放棄

日本の民法条文を紹介する。
第136条  期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
2  期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。

但し、民法136条第1項は、あくまで推定規定です。

実際には債権者のために期限が定められたという反証が成立した場合、この推定は覆り得ます。

その場合には、債権者にとっての利益である、と判断されるケースもありえれば債権者・債務者双方ともにその期限により利益を有していると判断されるケースもあり得ます。

(期限の利益の喪失)

第百三十七条 次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。

住宅ローンの「期限の利益の放棄」の特約により「期限の利益の喪失」となるのである。

中国の「融資平台」、債務の早期償還を積極推進 投資家から不満も

Samuel Shen Vidya Ranganathan によるストーリー • 5 時間

1月4日、中国の地方政府傘下のインフラ投資会社「融資平台(LGFV)」が2018年以来の早いペースで債務の早期償還を進めている。 北京の建設現場で2022年4月撮影(2024年 ロイター/Tingshu Wang)© Thomson Reuters

Samuel Shen Vidya Ranganathan

[上海/シンガポール 4日 ロイター] - 中国の地方政府傘下のインフラ投資会社「融資平台(LGFV)」が2018年以来の早いペースで債務の早期償還を進めている。中央政府が地方政府の借り入れコスト圧縮を狙って打ち出した債務借り換えプログラムが呼び水となった形だが、利回りの高い融資平台債を手放したくない投資家から不満の声も出ている。

融資平台による債務償還は、中央政府が地方政府に1兆元(1398億5000万ドル)相当の特別借り換え債の発行を認めた昨年10月以降に急増。ファイナンシャル・チャイナ・インフォメーション・テクノロジーのデータによると、昨年12月の早期償還は378億元相当と、月間として5年ぶりの高水準となった。

一方、投資家は高利回りのLGFV債から得られる利益を失うことを懸念しているほか、融資平台債並みのリターンを見込める代替商品がないことから償還に抵抗。景気低迷と不動産市況の悪化に見舞われる中、2024年に大量の債券が満期を迎える地方自治体は財政が一段と苦しくなっている

市場関係者は「償還資金を再投資すればリターンが下がる」ため、債券保有者は早期償還に応じようとしないと述べた。

中国「暗黙の保証」のツケ 融資平台、債務2000兆円の山

2023年9月3日 17:00 

滝田洋一さんの投稿

中国で地方政府傘下のインフラ投資会社「融資平台」の債務が膨張している。国際通貨基金(IMF)の推計によると、2027年には100兆元(約2000兆円)の大台に乗る見通し。政府の「暗黙の保証」にタダ乗りし、債務を膨張させてきたツケが、住宅不況をきっかけに噴出しかねない状況になっている。

中国地方財政の信用収縮阻止へ-「融資平台」に25年ローン供与

Bloomberg News

2023年7月4日 13:01 JST

  • 1300兆円規模のLGFV債市場、緊張が高まっている

  • 工商銀や建設銀など大手国有銀行が適格LGFVに25年ローンを供与

中国最大級の国有銀行は地方政府の資金調達事業体(LGFV)に超長期の融資と一時的な利払い緩和策を提供している。事情に詳しい関係者が明らかにした。9兆ドル(約1300兆円)規模のLGFV債市場では信用収縮が起きかねないとして緊張が高まっている。

  中国工商銀行や中国建設銀行などの大手行は数カ月前から、信用力の高い適格LGFVに対し、大半の企業向け融資として一般的な満期10年のローンではなく、25年ローンの供与を強化し始めた。非公開情報だとして関係者が匿名を条件に語った。LGFVは「地方融資平台」とも呼ばれる。

  最初の4年間は元利払いが免除されるものもあるという。LGFVへの長期融資の総額は現時点では不明。

  中国当局が過去の不況時に実施していた大型景気対策を繰り返すのを控えている今、国内経済の中でも特に地方財政の脆弱(ぜいじゃく)性に対する懸念が強まりつつある。ゴールドマン・サックス・グループの推計によると、公的債務は約23兆ドル相当に膨れ上がっている。

  工商銀と建設銀のメディア担当者は、コメント要請に応じなかった。

  LGFVが発行した公募債がデフォルト(債務不履行)となった例はないが、最近、債務履行が期限ぎりぎりでなされたことで、このセクターの債務返済能力に対する新たな懸念も浮上。

  また、中国南西部の貴州省にあるLGFVは昨年末、約23億ドルの融資を20年延長することで銀行側と合意したと発表している。最初の10年は利払いだけを行い、その後の10年は分割で元金を支払うとしている。

関連記事

  地方政府の財政は不動産危機が続く中で、財政収入の大きな柱である土地売却益が枯渇し逼迫(ひっぱく)している。土地の販売不振と新型コロナウイルス対策の巨額支出で、主にインフラ整備に活用されるLGFVを支え続ける地方政府の能力は弱まっている。

  国際通貨基金(IMF)は今年2月、2022年末時点で中国全土にLGFVの隠れ債務が66兆元(約1320兆円)あり、19年の40兆元から増加したとの試算を示した。急速な債務増加は地方政府が新型コロナのパンデミック(世界的大流行)中に簿外借り入れと支出をいかに大きく増やしたかを浮き彫りにしている。

原題:China Banks Offer 25-Year Loans to LGFVs to Avert Credit Crunch(抜粋)

参考文献・参考資料

中国の「融資平台」、債務の早期償還を積極推進 投資家から不満も (msn.com)

中国「暗黙の保証」のツケ 融資平台、債務2000兆円の山 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

中国地方財政の信用収縮阻止へ-「融資平台」に25年ローン供与 - Bloomberg

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