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タイヤに空気を入れ(られ)るように

極端に柔らかいとは感じないが、いつも通りの硬さという感触がない。


ここ2、3週間に1回のペースで、東京に借りている自宅から今いる実家まで約100キロ離れた距離を車で、なおかつ高速道路を頻繁に使って往復していた。

そのせいか、ここのところ朝晩の通勤時に、やや凸凹した道路を走行している途中で、ほんの少しだけ違和感を覚えていたのである。運転を終えて自ら触って確かめてみたところ、前述のような感想が出てきたのだった。

(これ、セルフスタンドに行って空気入れてこないといかんなぁ…)

その日の仕事帰りに近所のガソリンスタンドに立ち寄り、店員さんに一声かけては備え付けのエアタンク型の空気入れを借り、セルフでタイヤチェックをおこなってきた。

ここ直近で何度も高速走行をしていたこともあって、全輪とも気圧が規定の数値よりも少し落ちていたのがわかる。そのうえで、目盛が規定値になるよううまく調整し、タイヤを万全な状態にしてその場を後にした。


…というような一連の行動が、一昔前までの頃の私には、当たり前のようにできていなかったのである。

セルフのガソリンスタンドに足を運ぶようになってから、やがて上京した後に高速道路を走る機会も次第に増えていった。

その中で自分で給油すること以外に、タイヤチェックを自分で行わなくてはならない、あるいは店員さんを呼びにいって確認してもらわなくてはならないことについて、ほんの少し難しさを感じていた。

それでも車に乗っている身として、同時に高速道路を定期的に利用している以上、普段からの日常点検や確認作業を怠るわけにはいかない。取り返しのつかない事柄があってからでは遅い、という意識は持っているつもりであった。

しかしながら、至る所まで隅々とやってもらえるフルサービスのガソリンスタンドと異なり、自分から店員さんを捕まえないとその場で確認できないことに、少々億劫だと感じていた。

加えて、未だ人見知りが残っていた当時の私は、思うように自ずと人に声をかけることができていない。店員さんがこちらに気づいて寄ってくるのを待ったうえで、その旨をお願いをするのがやっとの状態であった。

とはいえ、いつまで経っても待ってばかりいるようでは埒が明かない。何度もガソリンスタンドに足を運んでいるうちに、そうした自我が徐々に芽生えていくのだった。


それから仕事での年数や経験を重ねて行く中で、自ら店員さんを捕まえるようにして、タイヤに空気を入れてもらうようになった。

ただそこで、徐々に回数を重ねて行くうちに、それも店員さんに入れてもらっている後ろ姿を見ながら「そろそろ自分でも入れられるようにしなければ…」と思うことが増えてきたのである。

今までこちらから声をかけても、必ずしもやってもらえたわけではなかった。店舗によってはその日の時間帯で、タイヤチェックのできる人とできない人がいたりした。

さらに一部のところでは、愛想のよろしくない店員さんから「あなたもしかして、自分でタイヤに空気を入れたことがないんですか?」というニュアンスが、思いっきり出ているの感じ取ったりすることもたまにあったのだ。


といった出来事があったのも久しいが、そのおかげで自ら順応していくきっかけが生まれたのだった。

自分が抱えている一つの課題を超えた先に、新たな課題が立ちはだかる。普段から利用している場所で、改めてそういった気づきに巡り会えたのも、ひょっとしたら何かの縁だったりするかもしれない。


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