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十数年ぶりのマニュアル車運転

自動車学校の教習車に乗って以来、一度もマニュアル車を運転した覚えがない。だが、私が保持している車の免許証に「普通車はATに限る」いう文言は書かれていない。

元々自動車学校に通い始める際、オートマ限定の方が費用が安く済みそうだという理由で、親に一旦は希望や相談を入れていた。

が「絶対にマニュアルで取ったほうがいい!」と猛烈な反対を喰らってしまい、気が進まないままその講習を受ける運びとなった。

 

そこから十数年経ち、現在に至るまで一度もそれを運転する機会はまったく訪れてこない。所有している愛車はおろか、社用車でもオートマのものしか用意されていなかった。

加えて近年はどこのメーカーも自動運転や事故防止に力を注いでいるせいか、絶滅危惧種とも一部では謳われるほどに、昔と比べてほとんど姿を見せなくなってしまったと思う。

この様子じゃあの時自動車学校に通い続け苦労して取得した免許は、一部の機能を除いて宝の持ち腐れのままだ。
ひょっとしたらこの先も触れる機会もなく、日の目を見ることもないかもしれない。

そう考えていた矢先、まさかこんなタイミングで訪れるとは思いもしなかったのである。

 

先日、愛車の点検があったため販売店ディーラーへと足を運んでいた。その前に気になっている車種があり、担当している営業マンに試乗の旨をお願いしていた。

その車がまさかのマニュアル車だったのだ。

これには思わずってしまった。とはいえ、折角用意してもらった機会をみすみす無駄にするわけにもいかない。

うまく運転できるか緊張を抱えながら営業マンとともにその車に乗りこみ、十数年前に教習車を運転した時の記憶を思い出しながら公道へと走り出した。

道中で感じたことでは、まず足回りはクラッチが異様に硬い。普段オートマしか運転しないからこそ左足を動かさないのもあり、ある程度以上に力を入れないと押し込めないほどのものだった。

そしてマニュアル車の肝となるシフトレバーも、事前にギアチェンジの予行演習をしなかったせいか、1速からいきなり4速に入れてしまうミスを2〜3回繰り返していたのである。

そうはいっても赤信号に捕まったり前方の車にそって止まる際は、不安要素の一つであるエンストを起こすことなく順調であった。

やがて平坦な道を駆け抜けていくたびに、ようやく感覚を取り戻した気になっていった。

「なんだかんだでうまく運転できているじゃないか…」

その安堵も束の間だった。一通り指定されたコースを走り終え、ディーラーに戻ろうと駐車場に入ろうとした瞬間、

ガクっ…

自分でも一体何が起こったのかわからないまま、車は乗り入れの縁石でエンストしてしまったのである。

後続車あるいは付近の歩道を歩いている人からすれば、いったい何が起きているのか?と不思議に思われても仕方のない状況であった。

その後何度か坂道発進なるものを試みたがうまく上がれず、のべ5回ほどは同じ場所でエンストを起こしてしまったと思われる。

「なんとかせねば」と焦っていたが、それでも何度か試みて縁石を上がり、なんとか着くことができた。

乗り心地であったり走りなどの細かい部分を体感するはずのつもりが、本来の目的そっちのけでペーパードライバー講習を受けていた感覚に浸っていた。

試乗を終えた後で「自分が運転するよりもうまかったですよ!」と同乗していた営業マンからフォローを入れてもらったものの、
普段からマニュアル車を乗っているドライバーからすれば、今回の自分の運転はあまりお話にならないレベルであったと思わざるを得ない。

「めちゃくちゃ緊張しましたね」と笑いながらも、この先マニュアル車を再び運転する機会があるなら後どれくらいの話になるだろうかと、私は密かに考え込むのだった。

最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!