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「持ってけ泥棒!」とは言わないけれど

引っ越しした翌日の朝、一本の着信が入った。

この日、某大型家具店のネット通販で注文しておいた物が入る予定でいた。もしかしたら、搬入予定時刻をお知らせする旨の電話かと思いつつ、スマホを手に取った。


画面には、見に覚えのない電話番号が表示されている。それも携帯番号ではなく、市外局番から始まるものだった。この場でどう考えても、トラックドライバーの携帯であるとは考えにくい。そう察知した私は、恐る恐るその電話に応じた。

相手先は、私が先日までノイローゼ気味になりながら、引っ越し作業をおこなっていた前の住所、を管轄している市役所からだった。内容は、事前に回収をお願いされていた粗大ゴミについてであった。

もしかしたら、搬出した粗大ゴミに何か問題でもあったのかと咄嗟に思い、詳細を担当者に聞き返してみる。するとー、


「回収場所に行ったのですが、依頼されていた品物のうち、2点しか置かれてなかったんですよ」


「本当ですか?」としか言いようがなかった。その日は、単独では持ち運ぶことができないような本棚や食器棚といった大型家具など、全部で5点を回収して貰う予定であった。

本来ならば、回収日の朝までに指定した場所へと、対象なるものを搬出しておかなければならない。

だが、2〜3週間前にウェブサイトを介して市役所に依頼した際、その5点を回収して貰うのに都合のつけられそうな日程は、ほとんど見当たらない。

挙句、引っ越しを実施する日の翌日しか空いていなかったため、前日のうちに全部搬出するしか他に方法はなかったのである。


ともかく電話に出ている役所の担当者から、事の顛末を聞いた途端、思わず思考が止まってしまった。状況がどうであれ、そのうちの大半が何者かによって、持ち出されてしまったらしい。

あのでかい物たちを単独で、かつ短時間で運搬するには至難の業だ。おそらくグループなる複数人で行動して、乗っているトラックに積んで持って行ったのだろう。あまり感心するものではないが、相当手慣れたものだと思われる。

所在が突き止められない以上、手の付けられようがない。故に、その後の担当者からの余談では、こうしたトラブルが他の区域でも、相次いで起こっているそうだ。


いずれ捨てる物だから、後がどうなろうと知ったことではない…と云ったら、それまでになってしまうかもしれない。

ただ今回ばかりは、なんとも後味の悪い結果となってしまった。その過程でこちらにも、回収する時間通りに出していなかった、という落ち度があったのは確かだ。

不要となって搬出する粗大ゴミに「もってけ泥棒!」なんて云うつもりは、この先も1ミリたりとも思わない。

しかし、心無い第三者の目から見て、そう表していると悟られてしまわないよう、時間を守り余裕を持って行動するべきだと。引っ越し疲れが残っている中、転居して早々また一つ身を持って知るのであった。

最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!