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my favorite

という題名のついた曲が在る。

Lemon's Chairという日本発のシューゲイザー系バンドが、今からおよそ10年前に発表した楽曲だ。
といってもおそらく…というより間違いなくほとんどの人は、それがどういう曲なのか或いはそのバンドが一体どんな音を奏でるのか知らないはずだ。

この曲が収録されている「my favorite reverb」というアルバムをひょんなことから手に取って久しいと思う私でも、これを言葉に変換して他の人に、特に画面の向こうにいる貴方に向けて説明するのがとてつもなく難しい。
それよりも一つだけ前置きしておくと、この曲に歌詞はまったく存在しない。

そのうえ、一般的に耳にしている4分ほどの歌ものより3倍の長さであるという。時間を目にしてしまえば、その一曲を聴く前に心折れてしまうかもしれない。
しかしながらその限られた中で奏でる世界があるからこそ、大げさな話をしてしまうと先入観を持たず、なおかつ神妙な面持ちで語らなければいけないと思うのである。

だがどういうわけか、こうやって言葉として口に…いや手に出す前にまず音に圧倒されてしまうのだ。これまで感じたことのないかつ衝撃を受けたことのない、そして心が抉られてしまうようなもどかしい気にもさせてしまう。

 

結局のところ何が言いたいのか。

 

結果や結論を常に出し続ければいけない世界で、何の疑問を持たずにひたすら追い求めて生き続けてきたということに気がついたのだ。

たった一つだけしかない答えを解き続けなればならない算数の問題みたく、教わってきたことを永遠に守り続けなければ、この世界で生き残ることはできないと誰かに暗示をかけられたように。

故にそれ以外の答えを出した瞬間、ほぼ全て闇に葬られてしまう形で執行された暗黙の了解を何度、目の当たりにしたことだろう。
今も現在進行形で起こっているそれぞれの悲劇を、あと何回繰り返すことになるだろうか。

思えばなんて美しくも儚い時代に生まれ落ちてしまったのだろう。きっと前世ではあらゆる愚行に手を染めてしまったのだと、そう考えるだけでも体中に悪寒が走ってしまいそうだ。

そして自らの人生に、いとも容易く終止符を打てるようになってしまったものだ。だがそれを俯瞰している場合ではない。いずれ自分にも思いも寄らぬ形で降り掛かってくることを、覚悟しておかなければならない。

目の前に一喜一憂なんてしていられない。酷く目まぐるしくも日々の生活が変化し続けている世の中だからこそ、そこに変わらない何かを守り続けられるように、心は常に穏やかでありたい。

 

なんて自己暗示するかのごとく言葉を述べてみたものの、実際心も何もかも不安定であることに変わりはない。
何かを結論づけるのも、何が言いたくて書き始めたのかも、相変わらず私の中では苦手な部類として残ったままだ。

それでもこんな曖昧塗れな感情に共感してくださったり、賛同してもらえる方々は少しずつ増えてきている。それに対して日々感謝し続けたい今日この頃であり、私自身も前を向いて歩いていくことができる。

けれど敢えて云うなら、この記事がどういう意図を示しているのかを深く考えてなくてもいい。ただ純粋に綴った言葉という文字に目を通してくれているだけで、そして「my favorite」を耳にしてくれるだけでも幸いだ。

「今は静寂の中に包まれていても、いつか必ず6分後の世界に辿り着きたい」
轟音のギターが耳を駆け巡っている中、そう思っているのは間違いない。

最後までお読みいただきありがとうございました。 またお会いできる日を楽しみにしています!