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Ça c’est Paris! (それがパリ!)『猫が行方不明』

 パリは5月に入り雨続きです。今日は無性にファラフェルサンドが食べたくなり、ユダヤ人街のあるマレ地区を久しぶりに歩きました。
 パリ一年目、マレ地区から自転車で10分くらいのバスティーユ地区の隣町に住んでいました。友人と会って食事やお茶をするのもこのマレ地区が多かったです。あまり余分なお金がなかった時代でしたので、ファラフェルサンドは当時は手頃で美味しくお腹一杯になる素晴らしいお手軽ご飯でした。

 パリ一年目といえばパリを歩くだけで楽しい時期。目にするものが日本にはない魅力があって輝いてみえ、恋をしたばかりの乙女のような気持ちになっていました。同時に日本に置いて来てしまったいろいろな物事がとても遠くに感じました。家族や友人、当時付き合っていた恋人、志半ばで退職したデザイン事務所。

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 本当にここでこんな風に暮らしていてよいのかしら。言葉も拙く、将来につながる何かが見つかるのかもわからない。ファラフェルサンドを頬張りながら時折宙ぶらりんな気持ちになりました。

 そんな気持ちでも、フランスでなんとかやってこれたのは、私のような異国人の友人やご近所さんに巡り会え、フレンドリーに接してくれた人々がいたからだと思います。違った文化背景や主義や主張の中で生きながら、「それはそれ」「それがパリじゃない」という人々でした。私の困りごとや悩みにも耳を傾けてくれたり、手を貸してくれる人々がいてくれたのです。

 そんな時に思い出す映画があります。セドリック・クラピッシュ監督の「Chacun cherche son Chat (猫が行方不明)」です。

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あらすじはこちらです

 主人公のクロエはヴァカンスに出かける間に、愛猫グリグリを近所のマダムに預けます。ところが休暇から戻ると、グリグリは行方不明になってしまっていました。そこから近所の愛猫家のマダムたちやご近所さんなども手伝い捜索が始まります。捜索の中で出会うさまざまな人種、背景を持つ人々との交流が深まります。淡い恋も始まろうとして・・・

 個性的で憎めない、愛すべき困ったパリの人々。人間臭いパリジャンたちが一気にチャーミングに見え温かい気持ちになります。

 その中で酒場に集まった人々が「サ・セ・パリ!サ・セ・パリ!」と「Ça c’est Paris !(それがパリ)」とフランスの古いシャンソンを歌うシーンが印象的です。
 奇しくも舞台となっている場所が私が暮らしていた下町エリアです。

 パリに住んでいてもいいことばかりじゃないし、不便はいっぱいだし、落ち込んだりもしますが、この映画に救われたような気がしています。

 今日も雨の中、ファラフェル屋の列に並ぶ人々の中で傘がなくて濡れてしまっている方に、余っている傘をさりげなく貸している方がいました。それをみた息子が「ママ、あの人は優しいね」と言いました。
 こんなシーンに出会うと、「サ・セ・パリ!(それがパリ!)」と感じるのです。




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