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映画『コンパートメントNo.6』心の声を信じて生きる

心が自由になるような愛あふれる素敵な作品でした。とても好きだったので2日連続で劇場に足を運びました。

監督脚本:ユホ・クオスマネン
2021年フィンランド・ロシア・エストニア・ドイツ合作
74回カンヌ映画祭グランプリ

モスクワに留学中のフィンランド人学生ラウラ。彼女の古代ペトログリフ(岩面彫刻)を見に行く旅は、恋人にドタキャンされ急遽一人旅に。そんな彼女が寝台列車6号客室に乗り合わせたのは、モスクワのインテリたちとは正反対の、炭鉱で働く粗野なロシア人リョーハ。最悪の出会いから始まった二人の長い旅の行方。
映画パンフレットINTRODUCTION引用

フィンランド人留学生のラウラ(セイディ・ハーラ)は、恋人の関心がもう自分にないことに気が付いている。大学教授の恋人は仲間に彼女を「友人」としか紹介しない。年上の恋人は知的で美しく、その仲間に自分は溶け込むことはできない。それでも彼女は恋心と憧れを手放すことができずにいる。

ラウラが憧れた知的な会話や美しい場所とは対極にあるようなリョーハ(ユーリー・ボリソフ)。出会った時の「粗野な振る舞い」は下品過ぎて絶対に同じ客室にいられないと感じるほどだ。そんな二人の心が少しづつ少しづつ近くなる過程が愛おしくてたまらない。

リョーハは取り繕った会話なんてしないけど、本能のままの言葉が良い。ラウラが事件にあった時、失意の彼女を決して責めずに一緒に世界を呪ってくれる。これは嬉しい。最高だな。失敗した時や悲しい時、原因の追究や反省をうながしたりは、もういらない。一緒になって怒って欲しいし、ただ悲しみに寄り添ってほしい。

世界最北端駅ムルマンスクにあるペトログリフ。大切にされていない恋愛も、居心地の悪い会話も、ラウラはペトログリフに置いてきたのだと思う。

氷と雪の中で屈託なく笑いあう二人は無防備だ。もうそこには仏頂面で縮こまっていたラウラはいない。

孤独であるという共通点しかなかった二人が出会い、互いを大切に想いかけがえの無い存在となる。それは恋愛と呼べる感情では無いのかもしれないけど、相手を愛おしく想う気持ちならなんだっていい。他者により自分を知り、新しく知った自分で、もっと自由に生きてゆく。

ラウラとリョーハが訪れた家で一人暮らす女性は語りかける。

誰の顔色も見なくていい。親や子供の言うことを聞かなくていい。
「内なる自分の心の声を信じて生きる」

本当の自由は心にあるのだと思う。

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