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【第4回】遺伝子治療の世界最先端を切り拓く・ときわバイオ株式会社(三品取締役COO&荒木主席研究員インタビュー<後編>)

こんにちは!つくば研究支援センター(Tsukuba Center Inc.)のnote編集部です。先週は、茨城県が主催するイノベーション促進/ 交流プログラムTSUKUBA CONNÉCTに初めて登壇させていただきました。中の人も入社初めての登壇で緊張しましたが、つくばで活躍するスタートアップ/ベンチャー企業の情報発信に一層力を入れていきたいと思いました。

さて、note第4回となる今回も、前回に引き続き、ときわバイオ株式会社のインタビュー記事をおおくりします。

<前回の記事はこちら>


三品取締役COO&荒木主席研究員インタビュー(続き)

ーお二人のときわバイオでのお仕事の内容についても是非教えてください。今はどのような課題に取り組んでいらっしゃるのでしょうか?

三品聡範取締役COO(以下、役職略):私はビジネスとコーポレート関連業務を統括していまして、資金調達や大手製薬企業とのアライアンス推進などに加え、経営企画、組織開発、採用、広報など、研究開発以外を全般的に担当しています。

現在の課題は、組織の戦略目標の設定や明確化、戦略目標のスピード感ある実行だと認識しています。スタートアップが大企業と戦っていくための最大の武器はスピードです。そのため、不確定要素の多いサイエンスが関わらないところでは、できる限り迅速な意思決定と実行をするように心がけています。

では具体的に何に取り組んでいるのかというと、やはり基本が大事で、日常の会議やディスカッションの中で決定事項やネクスト・アクションを明確化し、しっかりと役割分担して実行することを徹底しています。また、「なんとなく分かっている」といったような曖昧な状態をなくし、不要な議論を引き起こさないために、議論の内容を資料に落とすなど、「見える化」することを心がけています。

これらは、基本的なことではありますが、徹底するとなると難しさを感じています。組織にカルチャーとして浸透させていくには地道な努力が必要ですし時間もかかりますが、こうした取組みがチームとしての力や成長スピードを底上げすることにつながると信じています。

もう一つ、ときわバイオのステルス型RNAベクター(SRV)は、世界最先端の素晴らしい技術にもかかわらず、十分に認知されているとは言えません。“ステルス”という名前の通り、まだまだ潜伏してしまっている状態です(笑)技術の優位性とその応用可能性について、しっかりと情報伝達していく必要があると思っており、ここはビジネスサイドでしっかりやっていかなければいけないなと考えています。

つくば研究支援センター内会議室にてインタビュー風景を撮影


荒木健児主席研究員(以下、役職略)
:私の場合、薬を開発するという意味では昔から仕事に変わりはありません。マーケットに少しでも早く我々のプロダクトを出していけるように、その準備となる研究を進めています。

ただし、仕事の進め方や自分の役割は、以前勤めていた大手企業の時とは大きく変わりました。ときわバイオは、創業当初は小さな研究室で1~2人の研究体制からスタートしていますが、今は役員を含め17名の体制になりました。同じ製薬の研究でも、メンバーが増えるにしたがって最適な方法やプロセスは変化していきます。これまで個々人間のコミュニケーションで成り立っていた部分をルールとして明文化して、それぞれのタスクの優先順位の認識をみんなで共有することが必要になってくる。そこで、拡大するチームに合わせて最も効果的な研究開発を行うためのルールや方針作りを進めています。現状はまだまだルールが未整備なので、ここは力を入れていきたいですね。

一方で、我々はスタートアップなので、ルールで色々なことを厳格に決めるだけではだめで、スピード感を持って物事を進められるように、ルーティンとして効率的に回していくべき部分と、しっかりと時間をかけて取組んでいくべき部分を区別していくということをやっていければと思っています。研究活動や事業の持続的な成長のためには、限られたリソースで最大の効用を発揮させることが重要ですから。

ー荒木さんは大手企業からスタートアップに転職されて、不安や迷いもあったのではないでしょうか?そのあたり実際のところを教えてください。

荒木:一言でいえば、「なんとかなるやろ」と考えて転職しました。世界的にスタートアップに大きな資金が流入していますし、日本でも国が「スタートアップ育成5カ年計画」を策定し、マクロトレンドとして、新規事業の創出を後押しする大きな流れがきていると思います。また、もし万が一失敗してしまっても、スタートアップで精一杯やったことは自身の成長につながり、他のスタートアップで自分のスキルや経験を活かして活躍していくことができるのではないかと考えています。

スタートアップに転職する場合、収入面での不安が取りざたされることもありますが、自分の場合には前職と同水準の給与を保証してくれたというのも安心につながりました。また、転職については家族とも2~3年間話し合ってきたことなので、最後は妻が背中を押して応援してくれました。

なにより、新産業が立ち上がっていく場所、すなわちスタートアップで働きたいという自分自身の意志がありました。これからも日本経済が世界の中でプレゼンスを発揮していくためには、経済をけん引する基幹産業が必要です。日本の強みとは何か、遺伝子治療と再生医療というのは有望な分野であると同時に、自分が一番日本に貢献していけるのもこの分野だと思って、ときわバイオにジョインしました。

ーお仕事が大変な時、苦しい時はどんな時ですか?また、それらを乗り越えるためにお二人はどんな工夫をされていらっしゃいましたでしょうか?

荒木:担当者間・部門間でのコンテクストが合わず、自分はしっかりと説明したつもりでも、伝えたいことの意図がなかなか理解してもらえないときがあるので、そこはもっと頑張らなければいけないなと考えています。

ときわバイオの初期メンバーには、産業技術総合研究所(産総研)の研究室時代から一貫してSRVの研究をされてきた方も多く、自分のように製薬会社に在籍していた者は少ないんです。異なるバックグラウンドのメンバーが集まることで組織に多様性がもたらされる反面、それぞれが”常識”と思っていることでも違いが生じています。

例えば、基礎研究と事業としての製薬ではデータ収集や管理も手法が大きく異なります。煩雑に思えるデータの品質管理が、製品の開発ではとても重要だったりするので、そういったことは自分の経験を活かしてしっかりと社内に説明して理解を得ていきたいです。

ラボ内の研究風景


三品
:会社全体としての熱量をもっと高めていきたいと考えています。全員がミッションを共有して無我夢中で取り組んでいるとやっぱり楽しいですし、チームの連帯感が心地良さを生み出すような時もあります。こうした熱量が事業のスピードや質を高めるだけではなく、会社をより魅力的なものにして、更なる人材や資金を引っ張ってくる力に変わっていくんだと思います。

日々の仕事を作業としてこなすのではなく、みんなが夢中でSRVの実用化に向かっていけるような、そんな組織づくりをしていきたいと考えています。

ー仕事をしていて、やりがいを感じるときや、頑張ってよかったと感じるのはどのような時でしょうか?

荒木:前職の大手製薬企業のときは、新しくプロジェクトを始めようとした場合、上司をはじめ社内の様々な部署と調整して合意を形成するというプロセスがどうしても発生するので、早くても動き出すのが半年後というような感じで、自分にとってはこれがフラストレーションになっている部分がありました。でも、ときわバイオに来てからは、この意思決定のスピードがめちゃくちゃ早い。自分のアイディアをどんどん形にしていくことができるので、そこはスタートアップならではのダイナミックさですね。

また、大企業だと一つの製薬プロセスにも多くの人間が関与しているので、自分が扱う領域は全体のごく一部ですが、ときわバイオではプロセス全体に関与していけます。まだときわバイオでの成功体験はないですが、責任があるからこその仕事の楽しさ、やりがいを感じています。

荒木氏「(スタートアップは)大変なこともあるけれど、責任が大きい分、会社の課題に対して自分自身でアプローチを考えて実行していける。これは大きなやりがいだと感じています。」


三品
:ときわバイオという会社は、まさに今新たなフェーズに移行しようとしています。研究開発が進んだことや、企業経験のあるメンバーが加入したことで、特定の目標を限られた期間で達成する「プロジェクト型」の動き方がより求められるようになっています。社内では様々な意見もありますが、SRVを薬として世に出したいという最終目標は共通なので、成長の加速のために会社のカルチャーも変えていかなければいけないと思っています。

なにより、自分達が今頑張らなければ、どれだけSRVという技術が大きな可能性を秘めていても、世の中に出ていかないんですよ。誇張ではなく、私自身がSRVを製品化して世の中に出していく責任を感じています。この思いがプレッシャーになることもありますが、同時に世界を変える可能性を感じることができ、非常にワクワクしながら仕事ができていると感じます。


ー最後に、ときわバイオのPRを一言お願いします!

三品:ときわバイオのステルス型RNAベクター(SRV)は、世界で最先端・オンリーワンの技術で、世界を変えられる可能性を持っています。

一般に、ディープテック・スタートアップは、長年の研究成果をベースに創業されるため、ITサービス系のスタートアップ等と異なり、事業内容を簡単にピボットしたりすることはできません。ですが、だからこそときわバイオのメンバーはSRVという技術を信じ、高い志を持って日々の研究開発や事業開発に取り組んでいます。

また、ときわバイオが拠点を置くこの筑波研究学園都市という環境も、世界に発信するディープテック・スタートアップのハブとして大きな可能性を秘めていると思っています。テクノロジーのまちであるつくばが更に進化すれば、ディープテックの発展のための人材や資金ももっと集まってくるのではないでしょうか。我々もつくばの未来に大きく期待しています。

この記事をご覧になってときわバイオの技術にご関心を持っていただいたり、また新しいメンバーとしてSRVの研究開発に携わることに興味を持っていただけた場合には、是非お気軽に以下のフォームからお問い合わせください。

ときわバイオは、一緒に世界を変えていく志を持った仲間を募集しています。一緒に遺伝子治療・再生医療の新しい道を切り拓いていきましょう!


ー三品さん、荒木さん、ありがとうございました!


編集後記

今回、ときわバイオ株式会社で活躍されている三品取締役COOと荒木主席研究員のお二人とお話しして感じたのは、ステルス型RNAベクターという技術への思い入れと、その技術を社会実装することで日本のみならず世界の遺伝子治療や再生医療を変えていこうという熱気でした。

スタートアップというとキラキラしたイメージもありますが、ときわバイオのお二人からは、毎日の地道な積み重ねと熱いハートが新たな技術を開発し、事業化していく上で重要であることを学びました。不確実なことが多い中でもチームで一丸となって目指す未来を実現していこうという、心の内側で静かに燃える炎を垣間見た気がします。

つくば研究支援センターとしても、先端医療の世界最先端を切り拓くときわバイオ様をこれからも精一杯応援してまいります!


取材:つくば研究支援センター ベンチャー・産業支援部 大塚和慶

※本記事は、個人的見解・意見を述べるものであり、つくば研究支援センターの組織的・統一的見解ではなく、それらを代表するものでもありません。