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とある管理栄養士の夢の話 2


花火はまだ始まっていない。屋台を見て回ろう。これは夢なんだから、いつ目覚めるかわからない。効率的に好きな物を食べて行かなくちゃ。
あったあった!「唐揚げ」の看板を見つけた。とりあえず唐揚げ屋さんを見てみよう。
「こっちかーい!」
この唐揚げ、鶏肉じゃない!
近くに来てよく見ると、小さい字で"アジの"と書いてある。アジの唐揚げ屋台とはさすがにレア過ぎる。
鶏肉の方が入荷しやすかっただろうに…。
鶏とは違うけど、夢だけど、いい匂いが漂う。
「アジの唐揚げ1枚ください!」
「はーい!ありがとうございまーす」
エプロン姿のお姉さん…
お、お母さんに似てる?ただ、私が知ってるお母さんよりは若く、20代後半くらいにみえる。夢というのは奇妙なものだ。
お母さんに似ているお姉さんは手早くアジを揚げて、白い紙の袋に入れてくれた。
「小骨には気をつけてね」
夢でも小骨はあるのね。
そう思いながらも恐る恐る揚げたてのアジのはじっこにかぶりついた。
下味の生姜とアジが相まって、口の中に畑と海が一度にやってきたように広がった。お母さんが作っていたアジの唐揚げの味を思い出す。懐かしさにじーんとしていると、女性はいつの間にか屋台の外に出ていて、私たちは一緒にアジにかぶりついていた。
そして、なぜかお姉さんと一緒に屋台を見て回った。ここの屋台は、「切り干し大根屋」やら「ネギぬた屋」やら一風?変わっていた。ザ・家庭料理の昭和すぎる屋台。どれも本当に美味しい。
「愛情伝わるわぁ」
と思いながら卵焼きの2つ目を口に入れた。
    つづく

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