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大河ドラマ「光る君へ」第九話「遠くの国」所感

 ネタバレします。記事を書く度に長さが増していくことが、よいのかよくないのかちょっとわからない今日この頃です。このドラマ、45分が早いこと。展開が遅くなっているのか面白さが増していっているのか……体感は2:8ですので、回を追うごとに長くなったら楽しいのに、なんて。

直秀ショックが凄すぎる。直秀がこの形で退場した意味は。

 昨日までに記事を上げることはできませんでしたが、解釈感想動画はいくつか拝見。ネット記事でも「直秀ロス」が凄うございました。
 いや、好きでしたよ直秀。なんだかんだでいい子でしたし。私はてっきり、この後政治権力を極めていく道長の裏工作をやる忍者みたいになっていくのかと思っていました。あれだけの身体能力あったしね。それに、以前からNHK多発の俳優さんでしたし、まさかこんな序盤で。しかも、顔を埋めるシーンまでやり切ったことで「実は生きていました」のどんでん返しもなし。徹底しているな、と感じました。まぁ道長くんは、貴族の触穢感覚など実は全然スルーな人などで、遺体に触れて埋葬というのはおかしくないのですが。まひろに「見るな!」とか叫んで袖でまひろを包んでそのまま一緒に引き返す、みたいなこともありませんでした。少女漫画妄想が派手すぎでしょうか。そんな余裕はありませんでしたね、道長。
 直秀や散楽のみんなもかわいそうでしたが、道長もかわいそうでした。「親兄弟さえ信じられぬ」と言った道長が、心から信じられると思った友のために精一杯のことをしたのに、それが裏目に出て命まで。
 このドラマでよく使われる「リフレイン」の手法が、ここでも登場した気がしました。まひろが、月夜に六条の屋敷で道長に「母はあなたの兄に殺された」と言ったシーンがありました。あのとき、まひろは「私のせいで母は殺された」とも言い、号泣しましたよね。決してちぃまひろのせいではないのですが。一話から心配していたんですよね。それと同じように、今回も道長のせいではないと思います。検非違使と放免が悪いです。でも、ちぃまひろが走り出したことのように、道長が工作をしたことで、ある意味きっかけを作ったと言っておかしくない状況になってしまった。ドラマのストーリー上、この「親しい人の死は自分のせい」という悲しいトラウマ(しなくてもいいはずの思い?)を、道長の思いを、今理解できるのはまひろだけです。自分の悲しみをそこそこに、号泣する道長を抱きしめるしかできないまひろ。悲しいかな、リフレインはここまでで、道長がすぐ六条屋敷から去った時とは違い、怒りをぶつける先(殺した実行犯は分からない)も、その先に向かっていくために道長を預けられる人も、預けられて「帰るのかよ」と困った顔をして道長を家に帰してくれる人も、今回はいません。
 悲しいですが、二人はお互いに決定的に結びつける理解者同士になったと思います。二人の恋心がどうなっていってしまうのかはわかりません。史実上は結婚まで至らないのに、ドラマでは「ソウルメイト」とされる二人。それだけ、直秀の死はちやはの死と同じくらい重い。この二つの死が、歴史に一切残っていないドラマのオリジナルというのが凄すぎますが。ちなみに埋葬シーンの次からまひろちゃんの着物の色が変わった(黄色→オレンジ?)と思ったのですが、違いますかね。

なんで殺されちゃったの?

 正直、ドラマを一度見ただけではわからず、二度見て、かついろんな解釈動画も見ました。どうやら道長が「頼んだ」ことが、①検非違使の誤認識を生んで「藤原をいつも嘲っていた奴らを始末してくれ」と解釈してしまった、②道長が頼んだせいで、流罪になった(本来なら折檻で済んだところ)直秀たちを流罪先まで連れていくのが面倒だった、の二説に分かれるようです。しかも、公式発表は②に近いようです。
 ここからは、個人の感想と妄想です。いくらなんでも面倒くさいで殺さんといてほしいわ!
 ただ、放免や検非違使たちからみた散楽や直秀と道長って「面倒ごとを引き起こす迷惑なやつら」になってしまっていたのではないかと思いました。最初の登場シーン、直秀は(不当に人を逮捕しようとしていた)放免をおちょくって逃げましたよね。まひろの証言から間違って逮捕したのが道長。あの時は、貴族さまから怒られ、検非違使からも放免たちは怒られ、散々だったはずです。成果にもならないですしね。もう一回、そんなドタバタの中、まひろが捕まりそうになって道長が助ける騒ぎがありました。みんな無事に逃げ仰せています。放免にしてみれば成果なし。そして今回。道長、まひろ、散楽連中が絡むとロクなことがなく、成果が上がらない。そんなときに、また道長が……。道長には逆らえないし、どうやらまひろも只の庶民ではない。とすると、手元にいる散楽たちを、道長に知られないように始末してこれまでの鬱憤を晴らし、今後の面倒を避けたい。そんな気持ちが働いたのではないかと、邪推をしてしまいました。直秀の死は、この辺にしておきます。十分長いですが。

やっぱり兼家、スッゲー兼家だった

 道長の行き当たりばったりだった策略と違って、きっちり壮大な策略を実行に移しつつあった兼家パパ。前回もありましたが、お見舞いの人の前でパカっと目を開けるあのシーン、めっちゃ怖い。
 花山天皇に関わる策略は、だいたいみなさんの予想通りで、晴明の策だったくらいしか、変わったところはありませんでした。道長、大丈夫?この晴明をちゃんと扱える?兼家パパ、ある意味素直で晴明を信用していて、策が自分のものでないことを子ども達に言っちゃうし、晴明の策がいいと思ったら乗る。この、信用しているものには嘘つかない感じが、人をついて行かせるんでしょうね。あれだけ父の愛情が自分だけ足りないと感じていた道兼でさえ、パパは大好き。
 この一気にすごい計画をぐわっと話す推進力と、詮子さまを「詮子!」と呼び捨てにして恫喝するパワー、もうすっかりお体回復されたようで。もう一つすごいなと思ったのが、やはり人を見る目と情報の多さです。詮子さまは、自分が結託している相手を「源」とは言っていませんが、兼家パパは断言しています。そしてこの名家に自分と同じ政治力はないことと、自分と同じ天皇を戴きたくはないと思っていることも、しっかり把握。帝がこの時、適切な側近を選ぶ目さえないということも、ちゃんとわかっての「玉座より引き降ろし奉る!」。兼家パパにとって、自分の年齢もあるでしょうが、これ以上花山天皇の、というか義懐の無能に1日たりとも耐えられない、というのが本音だと思います。真面目〜。
 この兼家パパの言葉「引き下ろし奉る!」が、とても日本人的ですよね。日本の天皇は、一応一つの家族とその親戚で皇位を継承してきました。為政者はその下でコロコロ変わっても、天皇家は全く繋がりのない別の家族が担ったりしない。外国では、為政者としての王がその権力を失う時、別の王家が立つか、民衆に殺される場合が多いです。でも、日本人としては、たとえ天皇を「引き下ろし奉って」も、皇子に跡を継がせますね。その後も、天皇家の一員であることは変わりないので、やることは尊敬のその字もなくても、敬語が使われます。実資に言われたように義懐は意外とその物言いも不敬です(この奢りを見せてしまうのも無能だわ)が、兼家パパは天皇をすげ替えはしても、決して自分がなりたいわけではない。日本人独特の皇統への特別視をきっちりおさえた兼家パパをまた垣間見た気がしました。

 面白パートもたくさんあったし、だんだんしっかりしてきて、本当に大学でなんとかなるのではと思わせるまひろ弟くん(史実では、ちゃんと官職にも)もよかったのですが、今週はでかいトピックが二つもあって、後全部吹っ飛んだ感が否めません。あと、しばらく宣孝さま見てない〜。一体どこへ?あと、肇子さんも。ザブングル公卿さまに嫁がれてもうお外に出ないのでしょうか。

 長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。

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