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私は小心者だけれど、つまらない嘘だけはつかないようにしている

vol.26【ワタシノ子育てノセカイ

#これからの家族のかたち 応募作品の中で
先週特にスキを集めました!

たくさんの方に読んでいただけて嬉しいです!

長いものに巻かれたり、臭いものに蓋をしたりする嘘は、くり返すほどに未来での乗返しが待っている。
 
母親に会えないタロジロが健やかに育っているのは、「実子誘拐」の当事者だと本人たちが知っているからなんだ。
 
5年間の親子分断の非日常は、私たちの大切な日常にちがいないから。

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親子で7時間も一緒に過ごせる日となった2023年3月31日。私は貴重な1時間をタロジロからもらう。
 
花より社会問題。
60minutesの報道を3人で視聴した。
 
嫌がるかもと心配する私をよそに、タロジロは素直に応じてくれる。
 
視聴してまもなく、14歳タロウがひとり言。
 これ、タロウとジロウのことやな。 
 
母もひとり言。
 パブコメにいたる社会問題やな。
 
画面を見つめたままタロジロが返す。
 わかってんで。
 
10歳ジロウは中盤から字幕が追えなくなった。知らない日本語が多すぎたみたいだ。

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漢字6文字の『単独親権制度』が字幕に映る。説明しようとしたら「知ってるから」と私はタロジロに一蹴された。
 
そらそうか。すでに説明しているし、現に今、単独親権者からタロジロは養育をうけている。そして共同親権制度で「母親からの養育が保護されるはず」の時から、タロジロは単独親権のような養育をうけているんだ。
 
現行の共同親権制度も単独親権制度でしかない。
 
日本が「家制度」ありきだからだ。私たちの国には、親子に対して「親からの子育て」と「子どもへの子育て」を保護する規律がないんだ。
 
守るのは「家」で「人」ではないから。
 
人を守れない私たちの社会はじりじりと、家族が空洞化し、コミュニティが崩壊し、国が消えゆく歩みを続けている。

日常生活でタロジロを見守るたくさんの大人と、見守る大人たちから権利を無視されるタロジロが、みんな笑顔で普通に過ごす、ありふれた普通の嘘の世界。

私には戦慄の景色なんだけど、この国のあたりまえの風景だから、私は消えてなくなるわけにはいかないんだ。 

タロジロは5年間、嘘の社会にとりこまれつつも、まだちゃんと、私の手を握っていてくれるから。

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視聴後のディスカッションタイム。

単独親権制度、つまり「家制度」がタロジロのメンタリティに、きっちり埋め込まれている現状を私は確信する。まぁ、日本で暮らしてますから。私かてそやし。
 
わかりやすい意見をひとつだけ記録する。
 
『会えへんのは、離婚のせい』
 
家制度モデルは「出産」と「婚姻」を結びつける。
 
現代においては「出産=婚姻」感覚が薄いほど、多様性に溢れ、自己肯定感に満ちて、人権意識も高い傾向にあるだろう。共同親権制度下の感覚だ。

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ところで、社会問題とはどういうことなんだろうか。
 
はじめに「離婚のせい」を口にしたのは10歳ジロウで、私が仕組みを説明しようとすると、14歳タロウが「離婚のせいやろ」と声をちょこっと荒げて被せる。
 
そしたらジロウが「ケンカのせいかな」と分解して、場を落ち着かせようとした。
 
ふたりとも最後まで「親のせい」とは言わなかった。出来事に原因を探そうとするふたりに、自分のいたらなさを改めてかみしめる。
 
「お母ちゃんが離婚したせいで、タロジロに嫌な思いさせてるならごめんな」
 
私が謝ると、ジロウは不思議そうな顔をして、タロウは無言で首をぶんぶん振っていた。
 
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社会問題とはこういうことなんだ。
 
社会的弱者になるほどしわ寄せが強く、なのにどこにも責任を探せなくて、なんか、ただ、立ち尽くす。
 
だからこそシステムエラーを突き止めて、改善していかないと、社会は持続可能にはならない。人の心が壊れてゆくから。
 
くり返すけど、日本は今、からっぽ。
 
ジロウがしたように、改善には原因の分解がとても大切。けれども本質的な解決には、分解した原因の抽象度を上げることが重要なんだと思う。
 
個人の問題は社会の問題。
 
社会の中で個人の問題が起こり、人の心が疲弊して、社会に関心をもたなくなり、社会はどんどん荒れ果てて、個人の問題は深く増しゆき、疲れきった心はからっぽになって、いつしか国もからっぽになってゆく。
 
50年前、三嶋由紀夫はどんな世界を眺めていたんだろうか。

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人は不幸に見舞われたとき、誰かに責任を求めようとする。
 
「親のせい」と言わなかったタロジロを誇りに思う。たとえ親のせいだと思っていたとしても、口にすることがどういうことになるのか、彼らなりに想像しているんだろう。
 
一方で、タロジロの「離婚のせい」という親子分断理由は、今の日本の現在地。私たちの国では違和感がないはずだ。
 
『婚姻』と『出産』を結びつける家制度モデルの国が、近代でどう変化していったのか。現代の今、解はもうすでにでている。
 
それでももし、今の日本の家族モデルで国を維持したいのなら、大切になるのは絶対的な男尊女卑意識なだけ。
 
男女格差ありきの世界を、私たちがコクンと呑み込むだけで、たぶん今より楽になれる。中途半端やから、しんどいだけやねん。
 
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戦後日本で半年間だけ、当時『世界最先端の親権制度』が使われていた。応急措置法というやつだ。

最先端すぎて、家制度にもみ消され、残した家制度で心カラにし、約80年間ほったらかして、2023年の今となる。
 
私たちの国は、すごい。
唯一無二が、すぎるもの。
 
どうぞ、どうか、心ある嘘で微笑む未来が、子どもたちを迎えますように。

旅先でお母ちゃんのお土産を選べば、「お土産渡すから」でタロジロの目的はふわっと達成する。

お父ちゃんもたぶん、嘘でもいいから、なんか理由がほしいねん。



「実子誘拐」報道鑑賞後の考察お茶会
ジロウ切望のマクドマカロン
THANK YOUによろこぶ母を
タロウが嬉しがって撮影
ありがとうにありがとう!!

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