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手渡す灯り

あなたは心の中に、灯りを持っています。それは小さいけれど、人の心をあたためることのできる灯りです。そしてこの灯りは、他の人に手渡すことができます。あなたはできるだけ多くの人に、灯りを手渡したいと思っています。

あなたが家からでかけるとき、ちょうど郵便屋さんがきていました。あなたは灯りを一つ郵便屋さんに手渡しました。郵便屋さんの心にも、灯りが灯りました。
あなたはバスにのります。バスを降りるとき運転手さんに灯りを手渡しました。運転手さんは驚きましたが、運転手さんの心にも、灯りが灯りました。
あなたは本屋さんで買い物をしました。丁寧にカバーをかけてくれた店員さんに灯りを手渡しました。にっこり笑った店員さんの心にも、灯りが灯ります。
あなたは帰り道で、いつも利用している通販サイトの配達員さんと出会います。あなたは配達員さんに灯りを手渡しました。配達員さんはびっくりした顔をしましたが、配達員さんの心にも、灯りが灯ります。

あなたは真っ暗な部屋へ帰ります。部屋は暗くても、あなたの心の灯りは大きく輝いています。今日はいくつの灯りを手渡したでしょうか。手渡した灯りは、あなたのもとへは帰ってこないかもしれません。でも、灯りたちはあなたが手渡した人から次の誰かへと、手渡しされてゆきます。

この灯りは本物の火ではありません。人の心に灯る灯りなのです。この灯りは、みんなが心の中に一つずつ持っています。そして周りの人に手渡すことができる、消えない火なのです。そして、灯りは人の心から人の心へと、リレーされていくのです。灯りは人の心を温めて優しい気持ちにし、手渡された次の人も優しい気持ちにするのです。

灯りをだれかに手渡す方法は簡単です。灯りを手渡したい人に、「ありがとうございます」「お世話になってます」などの、感謝の言葉をかけるだけです。そうすると感謝された人の心に灯りがともるのです。

今夜はバスの運転手さんが、あなたからもらった灯りをコンビニで店員さんに手渡しました。買ったビールを受け取る時に「ありがとよ」、と言って。
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