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螺旋階段

螺旋階段


螺旋階段のようにぐるぐると、
「日々」は同じように、
しかし着実に下っている

螺旋階段のてっぺんには
「理想」があって、
それは神々しく辺りを照らすが、
光が強すぎて、それが一体何なのかは
はっきり見ることができない

「理想」を出発し、
永遠とも思われる「日々」を下り始めてから
一体どれくらいの時が経つのだろう?

出発してすぐは、
背後の光が真っ白に眩くて、
全てを包み込んでしまうような優しい光の中を
軽やかな足取りで駆けていたはずだ

今は?
いや、今だって明かりは十分さ!
光は依然として足もとを照らしている
まあ、幾分か落ち着いた光かもしれないけれど

同じような「日々」の繰り返しの中で、
「理想」からの光はどんどん細くなり、
代わりに影が、
闇がー
濃くなってゆく

そうだ、最初は己が歩みを続ける場所が、
下りの螺旋階段だなんて、
知らなかったんではなかったか?
「理想」から見た景色は、
どこまでも上にまっすぐに続いていた!

はるか遠くに見える道の先には、
きっとまだ見ぬ何かがあるのだと
心を躍らせたものだ

なんてこった、あの強烈な光に目が眩まされていたんだな
あるいは我が幻想か?
本当は、ただ底知れぬ底へ、
光の届かない場所へ、
下ってゆくだけだというのに


もう、どれくらい歩いたのか、始まりはいつだったのか、
覚えていない
そもそも、始まりなんてあったのか?
ただ、同じように歩いていただけなのに、
いつの間にかそれは天ではなく
地の底に向かう螺旋階段なのだと気づいたのは
いつだったか

いや、はじめから知っていたのかもしれない

この世界では、重力が全て
どんなに気高き存在も、
やがては地球の中心に吸い取られちまうということ

生まれる前はだれもがみんな身軽く、
天にまで昇っていけるが、
実体を持っちまった以上、
重力からは逃れられない
落ちて、落ちて、
やがては地球のど真ん中に肉体を抱かれるのだ

あいつも、こいつも、
涼しい顔を貼り付けているが、
みんながそれぞれの螺旋階段を
ぐるぐると下っている

己に残された時間は、あとどれくらいだろうか
ずぶずぶと、ただこの世のアリジゴクにはまり、
喰われていく時間

虚しさに泣き喚き、
己の運命とどうしようもなく存在する世界をあざ笑ったのは、
もうはるか昔
進まざるを得ない「日々」の中で、
たった一つ、この己の意思のみが
己の存在を知らしめる

どうせ喰われるのなら、
この地球に捧げてやろうではないか

生命の養分を最後の一滴まで
絞りきり、
からからに乾ききった己の肉体を



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