見出し画像

よく踏む人 -うんちと友人- 〜とけいさん その1〜 #005

今回は下品な話なのだがご容赦頂きたい。お食事中の方などは自己判断でお願いしたい。

友人のとけいさん(仮名)からLINEが届いた。

「わたし、またうんち踏んだんだけど」

彼女はよく踏むのである。その踏み具合は友人随一だ。とけいさんは福祉関係の資格を持っている元同僚で、今は二人の息子を育てながら小学校の教員をやっている。同じ部署だった折、駅から職場までの二十分ほどの道をよく一緒に歩いていたのだが、その時も彼女だけがよく踏んでいた。

とけいさんは先日、実家にいた。朝仕事に行く弟を、車で駅に送る際、とけいさんは車内で嗅ぎなれたにおいに気づいた。

(弟…、もらしたか)

そういえば今日の弟は何となく、ぼんやりしているような気がする。今から出勤するのに大丈夫なのか?と姉として心配しつつも、駅で下ろして帰途についた。

しばらくしてとけいさんは気づいた。弟はもういないのに、車内のにおいは変わらない。助手席のシートに染み込んでいるのか…。弟のやつめ、職場でいじめられないといいが。とけいさんは、子どもが好きだから、という理由で小学校の教員に転職したくらい優しく、弟想いである。

「そういえば、小さい時はよくもらしていたっけ。ふふふ、あいつめ」

ふと、とけいさんはサンダルのヌルっとした感触に気づいた。

「あ、これか」

やはり、自分が踏んでいたのだった。サンダルから、運転席の下のマットにまで至っていた。弟は思っていたに違いない、姉は朝からまた踏んでいる、と。

なぜそんなに踏むのか。とけいさんは日々、かなりうんちのことを考えて生きている。手紙にもうんちを毎回描いてくる。以前結婚したい人のタイプを「うんちを踏んでも、笑ってネタにできる人」と言っていて、周りを驚かせていたこともあったが、パートナーの条件として、最初にその単語を使う人がいるということの方が衝撃である。人は好きなものにアンテナが立つし、敏感になる。ひょっとしたら、他の人はうんちのことをそこまで気にしていないから、踏んでも気づかないのかもしれない。

「この頃わたし、ついてないんだけど、たぶん踏んでないからだと思うんだ!うん(運)がないの!」と、と彼女は最近言っていた。

うんちのエキスパート。そんなものに私はなりたくはないが、とけいさんは、そう言われると喜ぶだろう。とけいさんに幸あれ。

(追記)
とけいさんは先日風邪をひいて鼻がきかなくなった。「娘の、オムツから溢れるくらいのうんち見つけて、1cmまで近づいたけど、におわない!今、無敵の状態」と喜びを報告してきた。彼女はグリーンカレーが苦手らしいのだが、鼻がきかない今なら食べられるのでは、という謎の考えを抱いたようだった。「味はしないのに、喉だけ痛くて、お腹壊したよ!」と言っていた。

2023年9月18日執筆、2023年10月3日投稿


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?