ビジネスホテルでの学び
4月の中旬から山小屋に入るため
冬の間に勤めていたビジネスホテルを退職しました。
11月に入社したため、働いた期間は5ヶ月程度でしょうか。ここ最近の私にしては長く勤めました。
これまで山小屋、旅館、リゾートホテル、ゲストハウスと勤務経験はありますが、
ビジネスホテルは初めて。
今回ビジネスホテルを選んだ理由は
フロント勤務をメインに経験したかったことと、ビジネスホテルという業態の勉強を目的としていました。(旅館でアルバイトや派遣だと料飲業務になりやすいので…)
私自身、今までビジネスホテルは旅館やリゾートホテルと比べてシンプルな業務のイメージを持っていました。
確かにチェックイン時には部屋案内もありませんし、料飲のサービスは朝食のみです。
しかしお客様の客層や宿泊目的は多岐に渡り、
お客様からのご要望も一般的な旅館と大差ありません。
今回はそんなビジネスホテルでの振り返りを。
ビジネスホテルの接客
「ビジネスホテル」と冠する以上、
ビジネス利用の方が大半を占めます。
仕事終わりや飲み会終わりで夜遅く到着される方、始発で東京や名古屋に行くため早朝に出発される方、
あるいは仕事で頻繁に来るため月に3〜4回お会いする方もいますし、1週間以上滞在される方もいます。
旅館やリゾートホテル、山小屋と異なり、
仕事が目的で来館しているため、服装はスーツや作業着の方が多いですし、
まとっているオーラは少しピリッとしているような気がします。
チェックインやアウトの手続きにしても早く済ませて行きたい、そう態度で示してくる方が多いのです。
観光目的で、のんびりしていて、良い意味で浮ついている旅館のお客様とは全く異なります。
ゆえにビジネス目的の方には丁寧な対応よりも
テキパキとした対応とスピード感が求められます。
私の上司にあたる方たちは、
手の動きも話し方もとにかく早いのです。
ビジネスホテルで必要なスキルは接客が半分、あとはパソコンスキルではないか、とも思いました。
旅館ではどんなベテランでも、ビジネスホテルのスタッフほど早くパソコン操作はできないな、と。
一方で観光利用のお客様もいるので、
その際にはあまりにもスピード重視の、
さばくような接客をしてしまうと不快に思われてしまうので、
その緩急の付け方は旅館以上に必要な気がしました。
ビジネスホテルがある意義とは
先に上げたビジネス目的、観光目的の方以外には、
受験、引っ越し準備、お見舞い、近隣での冠婚葬祭、スポーツ大会、テレワーク、荒天時の帰宅困難者など多岐に渡ります。
中には連れ込み目的か?と思われる怪しいお客様がいたり。
何れも「松本」という街で何か目的があって来ている方々。
そう考えるとビジネスホテルが無ければ
その方々は松本において、その目的が達成できないわけで、
ビジネスホテルがその街にある意義って、けっこう大きいんだな、とホテルを訪れる様々な目的を持つお客様たちを見て思いました。
インバウンド観光客の波
松本のビジネスホテルにお泊まりになるお客様は長野県内、首都圏、あるいは中京圏のお客様が多いのだろうかとイメージしていましたが、
東北や中国地方も珍しくないですし
沖縄や北海道の方も見かけます。
そして最近はインバウンドのお客様が非常に多い印象。冬場は比較的アジアからのお客様メインでした。例えば中国、韓国、タイ、シンガポール、マレーシア。特に東南アジアの方々は団体での受け入れをしていたので毎週お会いしていました。
そして3月以降は欧米のお客様も増えてきました。
オランダ、ドイツ、フランス、アメリカの方は日常的に会いますし、
珍しい所だとイスラエル、チリ、アイルランドなど。
私は日勤だったためビジネスマンよりも、
早い時間に到着する海外のお客様の対応することが多く、日によっては半分くらいが英語対応でした。
コロナ禍を過ぎたとはいえ、ここまで戻ってくるとは。状況の変化の早さに驚くばかりです。
さて海外のお客様が多いほどイレギュラーも多いわけで、
主となるのは通訳を必要とする対応。
観光タクシーを手配してほしい、
次に泊まる宿の送迎を依頼してほしい、
新幹線で忘れ物をしたから問い合わせしてほしい。
問い合わせ先の相手方が英語ができない場合が多いので、
私たちが間に入る必要があるのです。
(私も決して話せるわけではないのですが…)
特に忘れ物の件は、新幹線で忘れ物をする方が多く、終点の金沢駅の遺失物センターに問い合わせた後、荷物が本当に当人のものか確認して、配送手配。
万が一荷物の到着がチェックアウトに間に合わない場合は、
次のホテルに連絡して、
着払いを受け入れてもらえるかを確認して、
そちらに送ってもらうよう再度手配。
コンシェルジュを置いているような上級ホテルならまだしも、
フロントを1〜2人で回しているビジネスホテルでは、通常業務に加えてこのような想定されていないサービスはけっこう大変。
それから言語以外の問題でいうと文化や宗教の違いによる対応。
そう頻繁ではありませんが、ハラール、ベジタリアン、ヴィーガン等に関する問い合わせや朝食時に質問を受けたりします。
いずれも外国からのお客様を受け入れるからには無視できない部分ではありますが、
ビジネスホテルという、
日本のビジネスパーソンを受け入れる目的で営業しているホテルにおいて、
さらに生産性を求められる中で、
どこまで対応するの?というのは
考えさせられるところがありました。
最後に
お客様の目的や客層が幅広いビジネスホテルで働くにあたって、意識することは多々ありましたが、
例えばスピード、周辺地域の知識、外国語の能力、丁寧な接客。
何に重点を置いて力を伸ばしても役に立ちますし、逆に全部てきとうにやっても仕事自体は成立してしまう仕事です。
そこにビジネスホテルの難しさと、やり甲斐があるのではないか、と感じました。
非常に学びのある5ヶ月間でした。
ビジネスホテルで学んだことを咀嚼しつつ、
これからまたスーツを脱いで山に帰ります。
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