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客室清掃から見えるもの

今回はゴールデンウィークにちなんで、ホテルの話を。

宿泊施設の仕事の中でもフロント、料飲関係の他に重要な仕事として客室清掃があります。


宿のチェックアウトをする際に
三角巾をした清掃スタッフが
大きなカートを押している姿を見る機会も多いと思いますが、

私も山小屋、ホテル、旅館で働くなかで、
そんな客室清掃の仕事をすることが度々あります。(三角巾はしてません)

一般的なビジネスホテルですと、
清掃スタッフを自社ではなく別の会社から派遣してもらう施設が多いのですが、

小規模のホテルや旅館では自社スタッフが行うところもあり、朝食や夕食の配膳をしたスタッフがそのまま清掃に入ることもあります。

山小屋は言わずもがな、
清掃専任スタッフなどおらず、
受付の一部スタッフを残して、全員で清掃にあたっています。

そんなわけで私も働く施設によってはベッドメイキングをしたり、布団を敷いたり、掃除機をかけたりしています。


今回はそんな客室清掃の経験から感じたことを書こうと思います。

お客様が利用した後の客室は

客室清掃スタッフはお客様が徐々にチェックアウトを始める時間から入室し始めることが多いです。
10時チェックアウトだとすると、9時には入るような感じでしょうか。
早めにお客様がチェックアウトされた部屋から入室していきます。


本当はお客様が全員チェックアウトされてから清掃に入れるのがベストですが、
次のチェックインまでの時間は短く、
限られたスタッフ数で終わらせるためには
早い時間に入らざるをえません。

それだけ時間に対してはシビアな業務です。


お客様がチェックアウトをしていることを確認して入室していきます。

いざ入ってみると、
最初の光景匂い
その客室清掃にどれくらい時間がかかるのかが、何となく瞬時にわかってしまいます。

まず光景
入口から酒瓶が何本も立っているのが見えたり、
子ども用に貸し出したおもちゃがが散乱したりすると、言わずもがな大変なことがわかります。

続いて匂い
窓を開けてチェックアウトするお客様はほとんどいないので、
酒盛りをした部屋、香水の匂いが充満した部屋は
ドアを開けた途端にその匂いが押し寄せてきます。

そして。「無人のはずの部屋でなぜ音?」
ということですが、
テレビの電源が付いているんですね。

入った瞬間にテレビの音がするので、

「えっ、まだお客様滞在してる⁉︎」
とビックリするのですが、

靴も荷物も無いので「あ、良かった」と安堵するのです。
それでも毎回テレビがついていると慌てます。


光景については見ての通りなのですが、
なぜ匂いでも大変だと感じるのか、
というと、
この3つって連動することが多いのです。

キツめの匂いがする部屋は、
香水の匂いがすれば大体水回りが荒れており、

酒の匂いがすれば大量のゴミと床に色々なものが散乱しています。

テレビの音がするということは、
テレビを付けっぱなしで外出してしまうような人が滞在されていたのですから、

キレイなことはありません。
何かが散らばっています。

そんなお部屋は忘れ物を発見する確率も上がります。


そんな一方で部屋に入った時に無臭だとキレイな場合が多いです。

また時々お部屋にメッセージを残してくださるお客様もいらっしゃって、
これはホテルマン冥利に着くところでありますが、
そのような方のお部屋は非常に綺麗です。

ゴミをまとめてくださったり、
タオル類をまとめてくださっていたり。

スタッフのことを考えてくださっているな、
ということがピンピン伝わってきます。



このように実際にお客様の顔を見なくても、
客室の様子だけで泊まった人の人柄が
わかりやすく想像がついてしまうのです。


お客様と部屋を照らし合わせると


ちなみに本来ならば、
客室清掃のスタッフは清掃する部屋に誰が泊まったのか、知ることはありません。
清掃部屋をチェックする帳票にも名前は書いてありません。

しかし私のように清掃専任ではなく、直接お客様と顔を合わせる業務もしている場合があります。


夕食時に席の案内や料理を提供をしたお客様の部屋番号やお客様の様子は覚えているもので、
たまたまそのお客様が泊まった部屋掃除することもあります。

もちろんお客様のことがわかったとて、
我々から何かするわけではありませんが、
そこから感じ取ることは大いにあるのです。


やはり綺麗なお部屋でチェックアウトされるお客様は実際にお話しても、穏やかでこちらのことをも気遣ってくださる素敵な方が多いです。


またその逆も然り。「あー、あのお客様のお部屋かー、納得」となります。


またそのことに関連して稀にこんな珍事もあります。

後輩が泊まった部屋の掃除

私の中学時代の後輩が私の働く宿に泊まりに来たことがありました。

私が中学を卒業して以来会っておらず、
連絡をとっていなかったため、お互い知らなかったのですが、
私がお客様の名簿を見ていたら
同姓同名かつ住所が地元だったため
私だけ一方的に気がついたのでした。

声をかけてみようかと思いましたが、
10年近く関わりがなく
後輩にも相手がいたため、

バッタリ鉢合わせない限りは黙っていようと思いました。

結局夕朝食共に会うことはなく
チェックアウトの時間を迎えました。
この日はチェックアウトと同時に清掃に入ることになっていたのですが、時間を過ぎても客室が空いたとの連絡が来ず。
ひとまず別の作業に取りかかろうとしたところ、
慌てて部屋を出て行く後輩の姿が見えました。

いざ入ってみると部屋の中は

ずいぶんとお楽しみだったんだな、

という状態になっていました。 

中学時代も少々やんちゃな後輩でしたが、
10年経っても変わらないな、と。

楽しいひと時が過ごせたんだな、と思ったのと同時に「声かけなくて正解だった…」と心底思いました。


お部屋で好きなように過ごすのも良いけれど

ホテルの清掃スタッフの仕事は黒子の仕事です。

その存在を感じさせない、お客様に気を使わせない、というのも一つ大事なことです。

私が後輩に対して存在を明かさなかったからこそ、後輩はのびのびと滞在できたのかもしれません。

ゆえに宴会をしたままの状態で残っていたとしても、
「ああ、気を使わずに楽しめたのかな」と捉えることもできます。

自分の家は自分で掃除しなければいけませんが、
宿であれば掃除してくれる人がいますから、
甘えてしまおう、というのも
宿に泊まる魅力でしょう(もちろん限度はありますよ)

一方で清掃スタッフではなく、
一般人の目線で部屋を見た場合、
色々思うことはあります。

この人は床にスナック菓子をぶちまけたままでも平気な人なんだろうか?

おもちゃが部屋中に散らかっていて
子どもにお片付けを教えない親なのかな?

ベッドの上で信玄餅を食べて、
ベッド周辺がきなこと黒蜜だらけになってるけれども、午後には次のお客様来るの知らないのだろうか

(最近あった話…せめて違うお菓子にして(泣))


冒頭にも綴りましたが、
私は泊まったお客様を知ってしまうことがあります。

あの素敵なお客様あって、このキレイなお部屋なんだと思うと、
「私もその素敵なお客様のようになりたい!」と思います。

ですから他の宿泊施設に泊まる時は、
そこを掃除するスタッフのことを意識して
滞在したいな、と思うのです。



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