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『三体』(Netflix版シーズン1)

昨夜全8話を観終えたのだが、茫然自失しちゃってなかなか書けなかった。残念ながらこれは悪い意味で。これを楽しんだひとにはなんだかなんとなく申し訳ないのですが、いまは深く失望しています。

制作が発表された数年前から、本作を本当に楽しみにしていた。つまらないドラマをうっかり観ちゃっても「まあオレには三体があるから」って思って立ち直れてたレベルで。いま確認してみたら2020年である。実に4年近く、私は『ゲーム・オブ・スローンズ』のふたりがつくる『三体』にすべてを賭けていたのだ。思えばこれはあまりにもウブだったのかもしれない。ウブな私にも失望である。ところで「ウブ」って言葉、最近聞かないですね…。

例えるなら、ものすごく美味しいエスプレッソを出してた店が「新作できました」っていうので行ってみたら、ものすごく薄味のアメリカンが出てきて「なんぞ???」っていう感じの。あるいは、「豪華な高級味噌汁です」って出されて飲んでみたら確かに伊勢海老の胴体が見えるんだけど「出汁とるの忘れちゃったのかな??」って思う感じの。まあこれは伊勢海老から出汁出るんでしょうけどね。

しかしともあれ、ゲースロとのこの落差はなんだろうか?これこそまさに謎に満ちたSFでしょう。こんなことが可能だなんて信じられないレベル。でした。悲しい。

私は原作は読んでいない。テンセント版も観ていない。予備知識は一切入れないでおいたので、どういう話なのかも全然知らなかった。それでもこのふたりがつくる作品ならおおいに楽しめるでしょうと信じていたわけです。それにタイトルが「三体」ですよ。なんという魅力的なワーディング。もうこれだけで十分ワクワクできました。で、実際にお話はよくわかりました。わかりやすすぎて驚いたくらい。しかしあの、観てて恥ずかしくなるほどにテンプレに堕ちたキャラクター描写はいったいどうしたことなのか。ヒューマンストーリーに重きを置いた流れでありながら、肝心のヒューマンが全然描けていない。とにもかくにも浅く薄く軽く急ぎ足だ。そよ風に頬を撫でられてしまいましたってところです。どこかで風が暴れ出すのかしらと思ったらそのまま最終話までいっちゃって、ベネディクト・ウォンが「がんばろ」とか言いながら終わっちゃって、私はとても悲しかったです。

ゲースロもシーズン1はスロースタートだったから…という感想も見かけて、うむそうかもしれないと思い直そうとしたのだが、ゲースロはスローだっただけでやっぱりシーズン1から重厚で濃密だった。だからやっぱり同じクリエイターがつくったとは心の底から思えない。

おもしろいと思ったのは2つ。赤ずきんの話にあっちのひとがツッコミいれたところ(ただそこから「にんげんうそつく、信用できない、こわい」に流れる安易すぎる展開にガッカリ)と、面壁計画。今後に望みをつなぐならば面壁計画しかない。面壁者にはがんばってほしい。

他のひとの感想などを見てみると、もしかしたらテンセント版はおもしろいかもしれないという気もしなくもないので、興味本位でこちらを観て気持ちを立て直そうと思います。全然立ち直れなかったらどうしよう。

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