Ado「新時代」はどれくらい海外の人に聴かれてる?Youtubeデータから分析する(22-12-30追記あり)
2022年9月1日現在、もの凄い勢いで国内チャートを席巻しているAdoさんの新曲「新時代(ウタ from ONE PIECE FILM RED)」ですが、グローバル・チャートにもランクインしたと報じられています。
つまり「米国を除いた世界ヒットチャートの8位」にランクインしているというのです。記事はこう続けます。
このレポートは、今回のチャートインが、ほとんど「日本国内で猛烈に聴かれていることで、世界全体での再生数が押し上げられていることによもの」であることを示唆しています。
現在は日本からの視聴が大半であるとしてこの後、「新時代」旋風はどれくらい国境を超えていくのでしょうか?
そこで「新時代」のYoutube動画コメントに「海外からの書き込み」がどれくらいあるかを知るため、既に2万件に達しているのコメントの言語構成比を分析して視覚化してみました。
膨大なコメントを定量的に扱うため、Youtube動画のコメント全件のテキストデータを取得し、コメントごとにそれが何語で書かれているかを判定していくプログラムをPythonで組みました。
比較のためにAdoさんの代表曲のひとつである「【Ado】うっせぇわ」の動画とも比較してみましょう。
両曲の現時点での視聴回数と公開日は次のようになっています。
【Ado】うっせぇわ
240,924,696 回視聴(2億4092万4974回)
2020/10/23に公開
【Ado】新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)
45,969,532 回視聴(4596万9532)
2022/06/15に公開
「うっせぇわ」の再生回数2億4千万回もすごいですが、「新時代」は公開数ヶ月で4500万回を超えているというのも驚きです。
まず「うっせえわ」から見てみましょう。日本語でのコメントは19万件、構成比は86.8%でした。つまり外国語比率は100からそれを引いた13%ということになります。
この「13%」が多いか少ないかですが、言ってみれば9割近くが日本語によるコメントなので、ここでは一旦、一般的な水準であると考えておきましょう。
次に「新時代」です。日本語でのコメントは1万6千件、構成比は79%でした。つまり外国語比率は100からそれを引いた20%ということになります。「うっせえわ」より7ポイント分外国語比率が高いですね。
並べて比較するとこうなります。
(2022年12月24日追記:「新時代」のデータを更新しました。外国語比率はあまり変わらず約2割のようです)
(2022年12月31日追記)
年末の音楽特番等でのウタさん/Adoさん露出に伴い、この記事にもアクセスが増えています。追加データとして、Adoさんの全楽曲のYouTubeでの国別再生数を視覚化しましたので採録します。
再生数の海外比率は29%となっています。各国での再生数を地図上に視覚化してみるとこうなります。
7割を占める日本を除くと、人口規模に比して台湾が多いですね。また米国からも一定数の再生があることが見て取れます。
一般的には新曲は、まず国内からの視聴が増え、徐々に海外に広がっていくプロセスをたどると考えられるので、約2年前に公開された「うっせえわ」と比べて、公開2ヶ月半で既に外国語比率を7ポイント上回っている「新時代」は、今後さらに海外から聴かれる可能性を持っていると言えるかもしれません。
この背景にはもちろん「新時代」が、アニーメーション映画「ONE PIECE FILM RED」に起用されている楽曲であることが影響していると考えられます。
近年では、日本のアニメーションの主題歌や劇中歌に起用されるということは、そうでない場合に比べて劇的に海外のリスナーを増やすことにつながる状況が出現していると考えられます。
例えば以前、TVアニメーション「かぐや様は告らせたい」シリーズの主題歌を3期連続担当している鈴木雅之さんの該当曲のYoutubeコメント外国語比率を分析しました。
するとなんと最大で半数近くと、もの凄く高くなっていることがわかりました。
この外国語比率の高さは、同アニメーションが映像配信サービスで世界中で視聴できるようになっていることに支えられていると思われます。
「ONE PIECE FILM RED」は国内ではもちろん海外でもまだ配信対象にはなっていませんが、いくつかの国の劇場で公開されて人気のようなので、それが既に「うっせえわ」よりも外国語比率を高くしている一因と考えられます。
今後、Amazon Prime VideoやNetflixで配信されれば、さらに海外のリスナーを獲得していくかもしれません。楽しみですね。
言語の壁というのは音楽市場では、海外進出を阻む最大の壁、というイメージがありましたが、世界おける日本のアニメーションの人気や、YoutubeやSporityといったメディアの出現が、その前提を確実に崩しつつあります。
ちなみに以前、山下達郎さん、竹内まりやさん、松原みきさんなど、シティポップのオリジナルアーティストさんのYoutube動画についても今回同様の分析を行いましたが、外国語比率はななななんと、ほぼ100%でした…!
私たちのこの歴史的変化を砂かぶりでみているのかもしれません。なんという僥倖!
以上、徒然研究室でした。
トップ画像はお絵かき人工知能Stable Diffusionで生成した画像に、当研究室作成のグラフを合成して作成したものです。
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