私が”美味しい”とかんじる理由
8年変わらない味
先日、郊外にある食堂で、ギップさんに彼女のパッタイ作りを伝授してもらいました。
”タイ料理”といえば必ず思い浮かべるメニューの一つがパッタイ。
米麺を使った焼きそばです。
8年ほど前に彼女のパッタイを食べて以来、このお店に来る時は必ずパッタイを注文してきました。一皿50バーツ。かなりボリュームもたっぷりです。
8年前から値段も量も変わりません。
パッタイはもちろん、街のどこでも食べられるタイのお料理で、まぁ、それなりにどこでも美味しいんですよ。
それぞのお店、作り手の好みの作り方&味があり、パッタイと一口にいえども味が違います。
ギップさんのパッタイはとてもシンプルです。
他で食べるパッタイがとても甘くて味が濃いのに対して、
ギップさんの味は、甘さもしょっぱさも辛さも何かが尖って抜け出ていなく、絶対に”足りない”まではいかない最低限の味付けですが、とてもバランスがいいのです。具のそれぞれがしっかりと炒められ香ばしく、良い塩梅にそれぞれが絡み合わさっているものでした。
私は大概、パッタイガイ(鶏肉)を頼むのですが、鶏肉は骨付きのものをしっかりパリッと焼かれていたり、唐揚げになっているものを添えられていたりすることがほとんどです。
この8年間、このお店では必ずパッタイを食べてきましたが、毎回味が変わらず、安定の彼女の美味しい味なのです。
その美味しい味を、何年たっても変わらず提供できるということはやはりすごいことです。
チェンマイにも人気のお店や美味しいと言われるお店がたくさんありますが、
たった一人で、
変わらぬ味を長年提供できる場所は多くはありません。
それで先月、思い切って聞いてみました。
「あなたの作り出す味が本当に好きです。正直に言って、私にとってこのパッタイがチェンマイで一番美味しいんです。今度このパッタイを作るところをみせてくれませんか。」と。
その後色々と会話をし、最終的に彼女は快くパッタイの作り方を私に教えてくれると申し出てくれました。
彼女は以前、雇われる形で別のレストランで働いていましたが、今は彼女自身のお店で彼女自身が料理を作っています。彼女は色々なところでパッタイを食べ歩き、彼女が思う”美味しさ”を研究し、今の味になったと説明してくれました。
教え方が素敵
そして当日、お昼時に合わせて作れるように、お昼前に彼女の元に行きました。私自身は、”教えてもらう”だけのつもりで行ったのですが、
彼女は私自身にも作ることを実践させ、その時にパッタイを注文した他の人の分も作るということになりました。
ドキドキです!
まずは材料がちゃんとわかるように、まとめて提示してくださり、
食堂ではなくまるでちゃんと”料理教室”のように始まりました。
そしてギップさんが作りながら、各工程で大切なポイントを教えてくれます。
私自身、以前には料理教室に参加したり、料理教室の通訳をしてきているので各自色々なスタイルがありますが、大体どのような流れかは体験しています。その上で、ギップさんは”教える”という経験があるのかな?と思うくらいとても教え方が上手だと感じました。
先生がまずはお手本に作り、
私が一人分、
そして二人分を一度に作る、
という流れで作りました。
彼女のパッタイの材料を知り、
「あぁ、そうか。だから私は彼女の味が好きなんだ」
とまずは感激しました。
もちろんオーガニックなどではないのですが、彼女が仕入れられる最高の材料で作っていました。
それで一皿50バーツって、、、儲けは本当に微々たるもの。
「油はね、ちょっとでいいのよ。たくさん入れると炒めやすいけれど、食べる人の健康を損ねてしまう。タイミングと炒め方、そしてそれでも乾いてしまう場合は水を足せばいいの。」
技術的な指導してくれる時に、もちろん彼女の好みのスタイルというものを教えてくれるのですが、そこも「なるほどねー!」と思えるものでした。
「美味しい味」というのは、本当に人それぞれ。
私は彼女の”健康的”かつ、彼女の思う美味しさ、プラス、食べる人の”好みの尊重”をする調理の仕方が好きです。そこには一般ウケする”美味しい”ではなくて、気遣いがありました。
自分で作って食べるだけではなく、
家族以外の人で、お金を払って食べる人のパッタイを作ってみて、食後に感想を聞きに行くときに緊張しました。
自分自身では、、材料が全く同じでも、分量が同じでも、食べ比べてみるとやはりギップさんが作った方が断然美味しかったからです。
”彼女の味”でした。
食べた二人に正直な意見をいただきました。
それは、「味は美味しかった。でも、麺の扱いがうまくなく
崩れ気味だったのが残念。パッタイは麺が元気じゃないと!」
という言葉をいただきました。
そう、私は”二人分”のパッタイの味を全体によく絡ませることばかりに気を向けてしまい、麺を乱暴に扱ってしまったのです。
(上の写真:3つのお皿のパッタイ。上と右側のお皿の麺がちぢれているのがわかりますか?)
その方の意見も踏まえ、帰る前にギップさんはもう一度私に”炒め方”を教えてくれました。
本当に素敵な先生です。
換気のいいキッチン
ギップさんのキッチンは全てパートナーさんとの手作りで、お世辞にもオシャレだとか綺麗だとかかっこいいとは言えません。
でも、換気がとてもよく、シンプルな調理道具を大きなシンクで料理毎毎に綺麗洗い、清潔な環境を保っています。
8年前の当初はおそらくまだ設備がちゃんと揃っていなく、プラスチックの器に、簡易のチリパウダーと砂糖がセットになった調味料パックを添えていたのですが、
ここ数年、素敵な色の陶器の食器を使うようになり、必ずレタスなども添えて提供してくれるようになりました。
それは出すゴミをできるだけ少なくしたいからという理由からです。
どんな建物の佇まいにも関わらず、
火回り、水回り(ゴミの扱いも)が調理中も綺麗に保たれている人の料理は信用できるところがあります。
ちなみに、ここでは生ゴミは動物たちの餌になります。
アヒル、ヤギ、水牛、犬、魚を飼育しているので無駄がありません。
ここで注文する魚料理は、ここで飼育されている魚をその場で釣って調理されます。
ゴミというのはプラスチックゴミです。
姿勢と味
ギップさんに教えてもらった後、
私の好きな”美味しさ”というものがわかってきました。
美味しさ、、、というか好きな味です。
私の好きな味。
それは、その作り手さんの姿勢や想いが反映されているということ。
高級料理店や人気レストランでも、確かに「美味しい」と思えるのですが、また食べたい本当に好きな味とは別。
”美味しい”はたくさんあります。
料理家・レストランのシェフ・家庭料理を家で作る人の料理は違います。
それぞれの違ったタイプのおいしさがあります。
そしてその作り手さんのそれぞれの好みの味。
多分、そこにプラスして、その作り手さんの食に対する丁寧な姿勢が味に影響しているのを感じるのだな、と。
それが私の好みの”美味しい”につながるんだなと思いました。
来月もまたギップさんのところに行きます。
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