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生月島開拓合宿・出発前夜の弱音

 いよいよ明日、福岡に向けて旅立ちます。魔物の骨と遺書、それから余った石粉粘土は、ひと足先に宿泊先に送りつけておいたので準備は万端です。

・生月島開拓合宿の詳細はこちら

 台風25号の動向が気になるところですが、二度水害で死にかけたけど危ういところで回避したという北くんと一緒だし、私自身も「運が強すぎるから弱い男と結婚した場合相手が早死にする」と言われるほどの強運の持ち主なのできっと大丈夫でしょう。

 明日はそのまま福岡で一泊して、翌朝、北くんの車で生月島を目指します。生月では北くんのおじいさんの家(長いあいだ空き家になっていた)に泊まるらしいのですが、いまいちどういう状態なのかわからないので、ぶっちゃけ私にとっては台風よりもそちらの方が脅威です。
「宿、大丈夫?」と聞いても「大丈夫!」としか返ってこないんだけど、半年もホームレス生活をしていた人の「大丈夫!」なぞ信用ならん。
 あの人、ライフラインがぜんぶ止まっても「余裕ですよ」って笑ってそうなんだもの。君は大丈夫でもこっちはぜんぜん大丈夫じゃない。

 私は元ひきこもりで、外に出るようになってからも二十七歳くらいまで旅行はおろか遠出すらほとんどしたことがなかったような超インドア派。友だちや恋人によって旅行に連行される機会が増えてからも、設備の整った宿泊施設で甘やかされていたのでサバイバル的な経験はゼロに等しいです。最後にキャンプをしたのは小学校高学年の頃でしょうか。

 今、北くんの過去の生月関連の記事を読み返していたら、狩猟生活がうんたらかんたらって書いてあったんだけど、何、私、狩りでもするの?
 そういや、「生月の人たちはお腹が空いたらその辺で食糧を調達してくる」とか言ってたな。他人事のように聞いていたけど、まさか私も巻き込まれるのだろうか。

 墓作りのことで頭がいっぱいで何も考えていなかったけど、本当に二泊三日生き延びられるのだろうか。北くんは慣れてそうだけど、「弱肉強食だぜ」とか言って分けてくれなさそう。
 そうなったら食糧強奪大作戦を決行するしかないですね。
 今回の合宿の目標のひとつが『北くんをギャフンと言わせること』だからちょうどいいや。奴の食糧を根こそぎ奪ってやろう。

 ちなみに、帰りは船に乗ることになりました。二十人くらいの男女でごろ寝をするエコノミープランだと福岡から南港まで五千円くらいで行けるそうです。
 展望デッキがあるみたいなので一緒に行こうと誘ったら、なぜか「実家でスーツを回収してこなくちゃ」と意味のわからんことを言っていました。本当に大丈夫かな、あの兄ちゃん。

 とにかく、明日、予定通りに出発します。
(旅行バッグにドレスとヒールを追加しなくては)

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