小説の中の女が「飢(かつ)えて」いたもの

言子「今、江國香織の初の書下ろし短編集『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』を読み始めたところなんだけど、その中に『飢える』って言葉が出てきてさ」

万葉「ごく普通の言葉じゃない?」

言子「読み方がね『うえる』じゃななくて『かつえる』なの」

万葉「へえ。意味は?」

言子「『うえる』と同じよ。でも、読み方ひとつで印象ってこんなに変わるんだなって思って。『うえる』はどこか野性的でギラギラしている感じがするけれど、『かつえる』だと純粋な切実さが伝わってくるような気がする。砂漠で少女から一滴の水を求められるような」

万葉「で、その主人公は何に飢えていたの?」

言子「一緒に住んでいる『ろくでもない男』の肉体」

万葉「……」

言子「……あれ?」

◇あとがき
 男に飢(う)えると言うよりは、飢(かつ)えると言った方が上品で艶っぽく聞こえる気がします。あくまでイメージ上での話ですが。

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