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納骨袋

京都府の伝統的工芸品、京繍。伝統工芸士の安部敦子様にお話を伺いました。経済産業大臣指定伝統的工芸品 伝統工芸士・安部敦子様
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つたえ手 納骨袋、まだお話頂いてないですね。ご自身の経験を、きっと重ね合わせた上で生まれた作品だと思うのですが、こういう所ってすごく今求められていますよね。

👘そうですね、今納骨袋もお話頂いたので申し訳ない、させてもらうのですが。母が亡くなった時に、お寺さんのご住職の方から

「納骨する時の袋をさらしでも何でもいいから、土に返るような生地で作ってもらえますか?」という風に言われまして。

「えっ!」という感じで「どんなのですか?」って言ったらこんな感じでみたいに言ってもらって。

「もし出来ないようだったらお寺にもありますよ。」と言われて、母も刺繍をしてましたので

「もしあれだったら絹で私の刺繍と職人さんが一針ずつでも針さしてもらったらきっと母は喜ぶと思うのでそういう風なのを作ってもいいですか?」とご住職の方に聞いたら

「ああ、そらもちろん!そら豪勢でよろしいわ。」みたいな。それで納骨袋を作ったんですね。お戒名も入れて。母の好きだったお花の刺繍で納骨袋を作ったのですけれど、それがたまたま地元の京都新聞っていう新聞屋さんに取り上げてもらったのがきっかけで「私のところ、主人亡くなったんです。」「嫁が亡くなったんです。」「おばあちゃん亡くなったんです。」とご連絡頂いて作らせていただいたのがきっかけなんです。けれども、ちょっとやっぱり悲しみに関するその仕事というのは、私がぐっと引き入れてしまうものがあってしんどいかなと思ったのですが、

ある奥様を亡くされたご老人からというかおじいちゃまからお手紙をいただきまして、その手紙の内容が

五十年前に私の作ったウエディングドレスで嫁いで来てくれて、この度あなたが手掛けてくれたラストドレスで家内をあの世の親の元に送ってやることが出来ました

という風にとても素敵なお手紙を頂きまして。もう私もウルウルっていう感じでこれだけ喜んでもらえる方がいるならば続けたいなと思って。納骨袋は今も続けております。

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絹にこだわって。やっぱりもちろん土にかえるということもあるんですけれども絹できちっと裏も胴裏っていう着物の裏生地を作っております。最初は業者さんじゃなくって個人的にお電話を頂いたりして作ってたので、皆さん取りに来て下さったりとか皆さん来て下さるのですが、全員といっていいほど二時間から三時間ぐらいお話されるんですね。「こんな主人だったのよ」とか「こんなんでね。」と言ってほとんどの方が二、三時間お話しされて帰られる。でもそれでなんとなくその方の雰囲気も分かりますし。

やっぱり絹にこだわっているのは、マスクだってそんな絹なんかもったいないっていうものなのですが、その絹ってくるくる輪廻転生じゃないですけど回っていくもので、

昔は土から生まれたお蚕さんが絹を出して紡いで生地になるわけですよね。昔でしたらやはり生地は絹の生地っていうのは高価なもので、お姫様の着物とかお殿様の着物とかになるわけですけれども、それが朽ちてくると昔はお布団にしたんですね。お布団がやはりまた朽ちてきてボロボロになってくると、雑巾に変わっていってね。雑巾がボロボロになってくると、今度は土の中に混ぜて壁にするわけですよね。その壁が朽ちて来たらまた土に戻って、またお蚕さんの元になっていく。

本当にくるくる回って決して無駄になるような高価なものであっても無駄になるようなことはひとつもない。無駄をしないという意味では、本当に絹って高価なものであってお安いものではないかなと思ってます。

皆さんがポリエステルとか、それはそれで私らも服はそういう風なものなんですけれども、やっぱり絹の大切さ、良さというものは分かって頂けることが有難いかなと思っています。

絹の光沢とか手触りとか肌触りとかは、やっぱりいいですね(笑顔)

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