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【後編】TCP2022第2回応募説明会イベント(金井純一監督ゲスト登壇)

先日、TCP2016準グランプリ受賞者であり、受賞作・映画『マイ・ダディ』監督・脚本を務められた金井純一監督をゲストにお迎えしたTCP第二回応募説明会がオンラインにて開催されました!

金井監督からTCPへの応募、受賞~作品製作に至るまでのお話と、参加者の方々からのご質問にもお答えいただきました。TCPへの応募を考えておられる方はもちろん、映画監督というお仕事、映画『マイ・ダディ』に関心がある方々に読んでいただきたい内容となっていますので、その一部をインタビュー形式でお届けいたします!(前編がまだの方はこちら

◆TCP受賞後の映画製作

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―受賞後はどんなプロセスを経て、映画化まで進行しましたか?
元の受賞の時の原案そのままに進まれましたか?

受賞後の流れとしては、制作会社をどこにするかというのをTSUTAYAさんにマッチング頂いて、制作会社決定後、監督とプロデューサー陣という座組ができて、そこから脚本を開発に入ります。
僕のもともとの脚本だと、母親はほぼ出てこないという中で、父親が必死に本当の父親を探し続けるというものだったんですけど、それを女性の方が見ても楽しんでもらえるように母親を出したりしましたね。
あとは「愛を信じられるか」というメインテーマがあったので、そうすると一番愛を信じるか信じないかでゆらぐ職業にした方がいいんじゃないかという案も出て、牧師設定にしたり。
僕が最終メモで書いた、あの4行くらいの内容とは全然変わっていないので、逆にその4行のような、この映画はこういったストーリーだというしっかりとした軸が最初からあったので、設定が変わっても描こうとしていることは変わらなかったです。誰がどう言ってもここだけは譲れないというのを持っておいた方がいいんじゃないかなとは思います。

―企画を立てるときでも、受賞した後でも、自分の軸を持つというのは大切そうですね。

そうですね、自分が作りたい映画のポイントはここだというのを力強く言えないとなかなか伝わらないし、逆にそのポイントが面白ければ伝わると思うんですよね、どんなにプレゼンが上手く行かなかろうが。
人が面白いと思うポイントって複雑ではないと思うので、そこをちゃんと企画書の段階でも伝えられるようにした方がいいと思います。

―撮影などや製作の段階で記憶に残るエピソードはありますか?

脚本が出来てキャスティングをどうする?ってなった時に、プロデューサーの方がムロツヨシさんと知り合いだったので、脚本を渡してもらったら、すごく気に入ってくれて、ぜひやらせてくださいと返事をもらった時は、すごいこんなことあるんだと思いましたね。
振り返ってみると僕がTCPで最終プレゼンしたときにワンシーンを舞台上で知っている役者さんに演じてもらったんですけど、その時のお父さん役の方が普段よくムロさんに似てるって言われるっていう(笑)フラグ立ってたなと思って(笑)

―すごいですね。諸々なご縁がつながって本作が出来上がったんですね。
撮影期間どのくらいでしたか?

15日だっけな?コロナで延期なったりして、タイトでしたね。
タイトだったけど、もともと予定していたクランクイン直前に延期が決まったので、撮れる喜びの方が大きかったですね。僕もムロさんもスタッフもみんな落ち込んだりはしていたので。
4月撮影予定だったのが、結局12月に撮影したんですけど、撮れる喜びをかみしめながら撮影できたので、そういった点は作品にも反映されているかなと思います。

◆映画を作るという仕事

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―監督はどういった経緯で映画監督になられましたか?

僕は大学の時にドキュメンタリーを撮るサークルに入って映像を撮り始めたんですけど、フィクションをやりたいなと思うようになって、自分でカメラを回しながら短編撮って。
その後、伊参映画祭というところに応募して受賞した作品を映画化しました。その映画がノミネートされた映画祭にSDP(所属事務所)の方が見に来ててといった感じです。

―なるほど。自主映画から始められて、その後事務所に所属して監督のお仕事を本格的に始められたんですね。ちなみに監督力を高める方法って何かコツあったりされますか?

映画は一人で作るものじゃないし、例えばTCPに応募して選ばれて映画を作っていくとなると、その瞬間に関わる人って増えますよね。
色んな人の意見を跳ね返すのは誰でもできるというか、跳ね返すのってただわがままになるだけなので。こういうプロジェクトでやっていくからにはチームの一人として、ちゃんと周りの意見とかも聞きながらも芯を持って、映画をより良いものにするって考えるのが、一つの監督力だと思います。

―『マイ・ダディ』は夢から思い浮かんだとおっしゃっていましたが、アイディアってどういったところから思い浮かぶことが多いですか?

0から1にするのってめちゃくちゃ大変ですよね。アイディアを見つけるために本読んだりとか、どこかに出かけたりとか、思ったことをメモしておいたりとか、音楽聞いたりとか。苦しみながらやっていかないと近道ってあまりないなと思います。0を1にする作業って僕は一番リスペクトしているので、選ばれようが選ばれまいがTCPに応募する行動自体が今後も大事になるのではと。苦しい作業を頑張って続けてれば報われると思っています。

―監督のモチベーションキープの方法を教えてください。

『マイ・ダディ』でも撮影延期が決定したと伝えられた時、ロケハンをしていたんです。伝えられて落ち込むというか、意識が朦朧になってた時にムロさんからLINEが来て。
「延期になったのはしょうがない。でも頑張って一緒にやっていこう」といった力強い内容で、それで我に返って頑張ろうと思えましたね。監督は俳優の皆さんとどれだけ一緒に頑張るかが大切だと思います。今回TCPで選ばれなかったらムロさんとも出会えなかったので、キャスティングというか、この俳優さんと一緒に仕事ができるという楽しみも感じながらやってもらったら良いのではと思います。

それに僕、エンターテイメントの力を本当に信じてて、違う世界が見えるというか、その人の人生まで変えるまではいかないかもしれないけど、新しい価値観を得られるものでもあると思うので、自分の作る映画によって世界が変わる可能性もあると思って、不安さえもエネルギーに変えてほしいと思います。
さっき言った通り0から1にする作業自体がとても尊いものなので、その行動だけで皆さんリスペクトしてます。

―とりあえず応募してみるということが大事ですかね?

そうですね。応募しないと何も始まらないので。

―TCP2年ぶりの開催になるのですが、最後にメッセージをお願いします。

締め切りまでの間、何があるかわからないし、今日の夜夢を見るかもしれないですよね。
今企画を考えてて全然出てこないって人もいると思いますが、見てもらうというのが一番大事なので、自分の企画のストロングポイントを理解しながら、読んでもらうことを意識して企画書を作ってもらう方がいいかなと思います。
今って映画だけじゃなくて映像作品の発表の場ってたくさんあると思うので、例えば今回選ばれなかったとしても企画に自信があれば、どこかに持ち込むっていうのもアリだと思うし、なんなら僕が監督で良ければ僕にDMください(笑)
自分の企画に自信があれば、出口はいろいろあると思うので、楽しみながらやっていってもらえればと思います。
僕も頑張ります。

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ゲスト:金井 純一監督
大学在学中よりドキュメンタリー作品をはじめとした映像作品を製作し、2007年伊参(いさま)スタジオ映画祭にて『求愛』(きゅうあい)がシナリオ大賞を受賞。その後2013年『ゆるせない、逢いたい』で劇場長編映画デビューした後、昨年はあいみょんが作詞作曲したDISH//の楽曲「猫」を原案にドラマ化、テレビ東京系で放送された「猫」の監督・脚本を務める。
公式Twitter:@kanaijun1

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