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私とは・・・骨髄バンクドナー経験から

私は2005年に骨髄バンクにドナー登録し、2013年に、実際に骨髄を提供しました。その経験が今でも「私とは?」という答えのない問いを考える時に、いろんなことを考えさせ、気づきを与えてくれます。

もともとドナー登録したキッカケは、当時、私は社会人1年目でしたが、つき合っていた彼女(現在の妻)がとても正義感の強い人で、「ずっと前から骨髄バンクに登録したい!」と考えていたそうで、ある日近くで登録会があるという情報を聞きつけて来て、「一緒に登録しよう!」という流れになりました。私はその流れで言われるがままに登録したことを覚えています。実際に骨髄を提供するには、HLAという白血球の型が適合している必要があり、その適合率は血縁関係がなければ数百人から数万人に1人の確率とされており、まぁまぁそんなに適合することもないだろうと思っていました。

登録してから8年後の2013年の夏、普通に仕事をしている日常に、、なんと適合通知が届きました。通知が届いてから具体的に認識したのですが、ボールペンくらいの太さの針を、背中側(腰あたり)から骨盤に60か所以上?刺して、骨髄液を採取するそうです。適合したという事実と、提供をすると決断すると、自分の身にそういう処置がされるということに若干戸惑いましたが、断る理由もないですし、何よりも、だいたいの場合は「3泊4日の入院で普通に日常の仕事に戻ることができる」ということでしたので、それならいいかという気持ちで、深く考えずに決断しました。その後健康診断や、当日は1リットル近くの骨髄採取をされるということで、1か月前くらいから自己血輸血用の採血のために何回か病院に通い、当日を迎えました。そして無事に、骨髄採取まで終えることができました。全身麻酔で行われたのですが、目が覚めたら病室にいて、とてつもない吐き気とめまいに襲われました。これは、麻酔が切れかけている状態であり、正常な症状らしいのですが、気分が悪くてとてもつらかったことを覚えています。そこから数時間すると完全に麻酔が切れてきて、今度は、重くドーンとくるような腰の痛みが続きました。寝返り打つだけでも痛いので、当然立つこともできないので、トイレもベットで瓶にするしかない状態でした。ただそれもだいたいそういうもんで、その後は順調に回復し、予定通り3泊4日で退院して、多少の痛みは残っていましたが、仕事に普通に戻りました。

これだけ聞くと、「よかったじゃん!」という話だと思います。確かに、これで誰かの命が救えたかもしれないですし、間違いなく私のこれまでの人生で最も人の役に立ったことだと思いました。ただ・・・違うんです。私は、この経験を通して「自分がいかに利己的な考えをする人間なのか?」ということに気づいてしまったのです。なぜかと言うと、麻酔が切れかけてめまいや吐き気がきつかった時、その後も腰の痛みがあって辛かった時、それ以外にもドナーとして面倒なことなどあると、そういう一つ一つに対して、「正直、何でドナーになんかなったんだろう?普通に仕事していたらこんな思いもしなくて良かっただろうし、仕事だってもっとはかどっているだろうし・・・」などと、すぐにドナーになったことを後悔してしまうマインドになってしまっていたのです。私って醜い心を持っているんだなって本当に実感しました。骨髄バンクの場合、レシピエント(骨髄提供を受ける側)が誰か?その後命が救われたのか?どうなったか?知らされないので、実感がなくてそういうマインドになったのか?でもそうだとしたら、私ってどれだけ見返りがないと人のために何かできない人間なんだろうか・・・と、より心の醜い部分を実感します。よく災害があった時など、ボランティアに行かれる方をテレビで見たりしますが、あのような方々は、本当にすごい人たちだなぁと感動しました。そう考えていると、「いや、むしろ100%本当に見返りを求めずに人のために利他的に考えて行動できる人っていないんじゃないの?あの人達もきっとどこかで見返りを期待してる部分あるんじゃないの!?」などと、また醜い心が表面化してきます・・・。

私にとって、骨髄バンクドナー経験は、「私(自分)は、そういう利己的な人間なんだ、利己的な考え方をする人間なんだ」と、強く実感した経験となりました。現在、あれから7年程経ちますが、何で私はそんな利己的なのか?育ってきた環境?それとも別の何かが影響している?いろんなことを模索しながら、考えながら生きてきました。その過程で、多くのことを学べましたし、自分の中でいくつかの答えも見つかりました。具体的には、自分が「経験価値」ではなく「交換価値」ばかりを求めていたこと。また、私自身は既に親から骨髄というGift(贈り物)をもらっていたと捉えることで、私が骨髄を提供したことは、それを返しただけとも理解し得ること、などです。

私とは・・・?答えのない問いですが、私がどういう人間か知ることで、きっと世の中の役に立てるアイデアも、方法も、どう変わらなければならないか?も、もっとクリアに見えてくると思います。また当然、自分以外の人が成長するために何が必要か?を考えた時も、そういう「事実/事象を深堀りして、よりより未来にするためにフィードしていくこと」や「ものごとを平常心で俯瞰し、集中して今を考える観点」というのは非常に大切だと考えています。こんな私ですが、少しでも私の経験や考え方を共有することで、読んでくださっているみなさんの、育成・キャリア支援につながって行ったらいいなと、何か少しでもお役に立てたらいいなと、考えています。

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