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国連恣意的拘禁作業部会、個人使用の薬物所持・栽培の非犯罪化を勧告

2021年5月18日に公表された国連人権理事会の恣意的拘禁に関する作業部会(Working Group on Arbitrary Detention:WGAD)による薬物政策に関連する恣意的拘禁に関する調査(A/HRC/47/40)の仮訳を作成しました。

この調査は、国連人権理事会決議42/22の要請に従って、麻薬戦争と呼ばれる懲罰的な薬物禁止政策や強制的な薬物依存治療などによって引き起こされた恣意的拘禁の増加と人権侵害の実態を明らかにし、薬物政策の名目で行われる恣意的な逮捕・拘禁を禁止し、実際に防止するための実践的な方策について、各国にさらなる指針を提供すること、2016年の薬物特別総会(UNGASS2016)で採択された成果文書に含まれるこの問題に関する勧告に従うことを保証することなどを目的として行われています。

調査は、21カ国、6つの人権機関、27の市民社会組織によって提出された文書をもとに、国連薬物犯罪事務所(UNODC)、国際麻薬統制委員会(INCB)との協議、バーチャル専門家協議を通じてまとめられました。

恣意的拘禁作業部会は、調査の結果、薬物政策での恣意的拘禁をなくすために、個人使用のための薬物所持、栽培の非犯罪化や受刑者の釈放と犯罪記録の抹消について以下のように勧告しています。

VIII. Conclusions and recommendations
126. The Working Group on Arbitrary Detention recommends that States:(a) Decriminalize the use, possession, acquisition or cultivation of drugs for personal use, including the possession of associated paraphernalia. Positive, evidence- based messaging through the media and other publicly accessible resources may assist in reducing stigmatization and promote better understanding of the health and other benefits of decriminalization;(p.18)

VIII. 結論及び勧告
126. 恣意的拘禁に関する作業部会は、各国に対し、次のことを勧告する:
(a) 個人使用のための薬物の使用、所持、入手又は栽培を、関連器具の所持を含め、非犯罪化すること。メディア及びその他の公的にアクセス可能な情報源を通じた明確かつ根拠に基づく情報発信は、スティグマを減らし、非犯罪化の健康上の利益及びその他の利益へのより良い理解の促進に役立つ可能性がある;

(b) Promptly release persons detained only for drug use or possession for personal use and review their convictions with a view to expunging their records;(p.18)

(b) 個人使用のための薬物使用又は所持のみで拘禁されている人々を直ちに釈放し、その記録を抹消することを目的として有罪判決を再検討すること;

2016年の国連薬物特別総会(UNGASS2016)で採択された成果文書(General Assembly resolution S-30/1)では、これらの問題について以下のように述べられています。

(j) Encourage the development, adoption and implementation, with due regard for national, constitutional, legal and administrative systems, of alternative or additional measures with regard to conviction or punishment in cases of an appropriate nature, in accordance with the three international drug control conventions and taking into account, as appropriate, relevant United Nations standards and rules, such as the United Nations Standard Minimum Rules for Non-custodial Measures (the Tokyo Rules);(p13)


(j)国内の憲法、法律及び行政制度を十分に考慮し、国際薬物規制三条約に従い、かつ、適宜、国連非拘禁措置最低基準規則(東京ルールズ)等の関連する国連の基準及び規則を考慮し、適切な性質の場合における有罪判決又は刑罰に関する代替措置又は追加措置の開発、採用及び実施を奨励すること

2018年の薬物問題に関する国連システム共通見解(CEB/2018/2)では、この件について以下のように述べられています。

To promote alternatives to conviction and punishment in appropriate cases, including the decriminalization of drug possession for personal use, and to promote the principle of proportionality, to address prison overcrowding and overincarceration by people accused of drug crimes, to support implementation of effective criminal justice responses that ensure legal guarantees and due process safeguards pertaining to criminal justice proceedings and ensure timely access to legal aid and the right to a fair trial, and to support practical measures to prohibit arbitrary arrest and detention and torture;
• To call for changes in laws, policies and practices that threaten the health and human rights of people;(p.14)

個人使用のための薬物所持の非犯罪化を含む、適切な場合における有罪判決及び刑罰への代替措置を促進し、比例原則を促進し、薬物犯罪で起訴された人々による刑務所の過密化及び過剰収容に対処し、刑事司法手続きに付随する法的保証及び適正手続の保障を確保し、並びに法的援助及び公正な裁判を受ける権利への適時の利用を保証する効果的な刑事司法対応の実施を支援し、恣意的逮捕、拘禁及び拷問を禁止する実践的な措置を支援する;
・人々の健康及び人権を脅かす法律、政策及び慣行を変更するよう要請する:

このように、2016年の薬物特別総会(UNGASS2016)以降、国連は、かつて麻薬戦争と呼ばれた懲罰的な薬物規制の失敗を反省し、末端の使用者の人権と健康に配慮した規制のあり方へと大きく方向転換しています。

ところが日本では、国連で採択したはずの薬物規制政策が国内の薬物政策に実施されておらず、反対に、新たに大麻使用罪を創設するという末端の使用者への取り締まりを強化する政策が、専門家と呼ばれる人たちの間で大真面目に議論されています。このような恣意的拘禁や人権侵害を引き起こす薬物規制方針は、2018年に策定された第五次薬物乱用防止五か年戦略で以下のようにはっきりと示されています。

(5)薬物乱用者に対する取締りの徹底
薬物の乱用は乱用者自身の心身を蝕むばかりでなく、乱用者が事件や事 故を引き起こすなど、周囲へも甚大な被害や影響を及ぼすことがある。ま た、薬物の購入が暴力団等の薬物密売組織の資金源を支えている側面もあ る。このため、需要側である末端乱用者の取締りにより、薬物の流通阻止 及び規範意識の維持向上による需要の削減を図るため、以下の取組を行う。
(薬物乱用者に対する徹底した取締りの推進)
・ 薬物乱用の傾向等を分析し、末端乱用者に対する取締りを徹底する。(警
察庁、厚生労働省)
・ 薬物乱用をほう助する大麻種子の不正輸入・販売者、注射器の不正販売者
等の取締り等を推進する。(警察庁、財務省、厚生労働省)
(乱用が懸念される薬物に対する重点的な取締りの推進)
・ 乱用の拡大が懸念される薬物事犯を対象として、より重点的に取締りを実
施する。(警察庁、厚生労働省)
乱用が拡大している大麻について、使用を禁止していない現状の課題等を
把握し、大麻の取締りのあり方について法的な論点も踏まえつつ検討する

 (厚生労働省)

本稿で紹介している2021年の国連恣意的拘禁作業部会による調査で指摘されているように、現在の日本政府の薬物規制方針が、様々な点で国際的な人権基準に違反する人権侵害を引き起こしていることは明らかです。日本政府の国連分担金額は約2.3億ドルで世界第3位の分担金負担国となっています。他にも、日本は公益財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センターを通じて国連薬物犯罪事務所に資金援助をしたりしています。それなのに、私たちはその恩恵を受けられていないばかりか、効果のない状況を悪化させる薬物対策にさらなる税金の負担を強いられています。そこには形骸化した見せかけだけの薬物対策で国民の目を欺く、薬物取締まり利権と呼ばれる深い闇があるのではないかと思われます。

今年の8月4日には、アメリカの女子プロバスケットボールのブリトニー・グライナー選手がロシアに大麻成分入りの電子たばこ用カートリッジを持ち込み、懲役9年の実刑判決を受けた事例で、バイデン大統領は「ロシアはブリトニーを不当に拘禁している。」と述べ、直ちに釈放するよう求める声明を公表しました。

2020年12月の国際条約による大麻の規制分類見直し以降、世界的に大麻規制の見直しが進んでいることから、日本が現在の刑罰による禁止政策に固執する状態が長引けば、このような事例は、今後日本でも十分に起こりうると考えられます。


以下仮訳です⬇️


A/HRC/47/40 仮訳 国際連合 総会 Distr.: General 2021年5月18日 原文: 英語
人権理事会 第47会期
2021年 6月21–7月9日
議題項目3
発展の権利を含む、すべての人権、市民的、政治的、経済的、社会的及び文化的権利の促進並びに保護


薬物政策に関連する恣意的拘禁
恣意的拘禁に関する作業部会による調査


概要
本調査は、人権理事会決議42/22に基づいて提出されたものである。本稿に おいて、作業部会は、薬物政策がどのように恣意的拘禁に関連する人権侵害をも たらす可能性があるかを検証し、勧告を行っている。本稿は、作業部会自身の法 理学、他の人権機構及び国連機関の見解並びに各国及び他のステークホルダーに よって提出された寄稿に基づいている。

本仮訳は、市民のボランティアによる作業であり、国連又は国連恣意的拘禁作業部会が作成したものではありません。 仮訳はあくまでも参考資料であり、ご利用にあたっては、必ず原文をご参照ください。本仮訳のご利用に起因して生じ るいかなる損害についても、翻訳者は、一切の責任を負わないものとします。 (訳 野中 烈)
原文[英文]
A/HRC/47/40: Arbitrary detention relating to drug policies Study of the Working Group on Arbitrary Detention
https://www.ohchr.org/en/documents/thematic-reports/ahrc4740-arbitrary-detention-relating-drug-policies-study-working- group [最終閲覧日:2022 年 8 月 10 日]

I. 序論

1. 2019年9月、決議42/22において、人権理事会は、恣意的拘禁に関する作業部会に 対し、禁止法の維持が薬物関連犯罪への効果的な刑事司法対応の一環として、国際法 に準拠し、そのような対応に法的保証及び適正手続保障も含まれ、2016年4月19日の特 別会期の総会において採択された成果文書に含まれるこの問題に関する勧告に従うこ とを確実にするために、薬物政策に関連する恣意的拘禁に関する調査を作成すること を要請した。[1] 決議42/22において、理事会はまた、作業部会に対し、薬物規制問題に主 要な責任を有する国連の政策立案機関である麻薬委員会の関心に対し、報告書を提出するよう要請した。

2. 2020年2月には、各国及びその他のステークホルダーに対して質問票が送付され た。[2] 2020年3月にウィーンで開催された第63会期麻薬委員会において、調査に関する 簡潔な報告が行われ、国連薬物犯罪事務所 (UNODC) 、国際麻薬統制委員会及びその他 のステークホルダーとの協議が行われた。さらに、2021年3月4から5日にかけて作業部 会はバーチャルの専門家協議を開催した。作業部会は、すべてのステークホルダーの 貢献に感謝する。

II. 薬物関連犯罪に対する拘禁の背景

3. 作業部会は、薬物を使用する人々が特に恣意的拘禁のリスクに晒されていることを認め、[3]「薬物規制法及び政策の結果として、恣意的拘禁の事例が増加している」 ことに懸念を持ち、指摘した。[4]

4. 作業部会は、恣意的な自由の剥奪の絶対的禁止及びそのような事例を防ぐための保護措置が、国際的な人権義務に従い、薬物関連犯罪で逮捕され、拘禁され又は起訴された人及び薬物依存のためのリハビリテーションを受けている人を含むすべての人に適用されることを強調する。[5] すべての薬物政策は、必要かつ比例した正当な目的を果たす必要がある。薬物関連犯罪に対する収監は、最後の手段とされるべきであり、より軽い犯罪に最も頻繁に用いられるダイバージョン又は起訴しないという決定とあわせて、原則として重大な犯罪にのみ用いられるべきである。

5. 世界で収容されている人の5人に1人は薬物関連犯罪で収容されている。それらの受刑者の約21.65%は、個人使用のための薬物所持で服役している。[6]

6. 刑務所の全人口に対する薬物関連犯罪で収容されている人の数の割合には大きなばらつきがある。アルゼンチン (14.8%)、[7] ベラルーシ (5.9%)、[8] グルジア (15.5%)、[9] アイルランド (8.5%)、[10] カザフスタン (9%)、[11] レバノン (7.7%)、[12] リトアニア (15%)、[13] メキシコ (9.7%)、[14] シエラレオネ (5%)、[15] スロバキア (10%) [16] 及びウクライナ (11%)[17] など、いくつかの国では、年によって変動するが20%未満である。アルバニア (26%)、[18] アルジェリア (34.5%)、[19 ]カンボジア (56.9%)、[20] エクアドル (27.2%)、[21] インドネシア(49%)、[22] モロッコ (25%)、[23] ニカラグア (68%)、[24] ロシア連邦 (28.6%)、[25] 及びスリランカ (52%)[26] など、他の国々では、20%以上である。コロンビア (20.7%)、[27] ネパール (21%)、[28] 及びアメリカ合衆国 (20%)[29] など、いくつかの国では、世界平均である20%近くである。

7. 関連する問題として、薬物摂取に関する器具の所持の犯罪化がある。フィリピンではそのような物品の所持は犯罪であり、6ヶ月から4年の拘禁刑が科される。米国のフロリダ州では、薬物関連器具の所持は最高1年の投獄によって処罰される。[30] カンボジアでは、人が薬物関連器具の近くにいるだけで十分な逮捕理由となる。[31] 2018年に、国連合同エイズ計画(UNAIDS)は、10カ国において、処方箋のない注射針又は注射器の所持が薬物使用の証拠又は逮捕の根拠とされ得ると報告している。[32]

III. 薬物関連犯罪に対する恣意的拘禁をもたらす人権侵害

8. いわゆる麻薬戦争は、薬物関連犯罪による拘禁及び収監の大幅かつ不均衡な増 加をもたらした。一部の国は、犯罪化及び関連する罰則に関して国際薬物規制条約[33] で 要求されている範囲をはるかに超えている一方で、他の国は、これらの条約の犯罪化 規定の適用に過剰な熱意を示している。こうした不均衡な措置は、頻繁に広範な人権 侵害を引き起こし、恣意的拘禁の増加につながっている。軍隊と薬物規制の連携は、 いくつかの国で状況を悪化させており、より多くのより深刻な人権侵害及び薬物関連 犯罪の発生を減らす効果が証明されていない懲罰的な結果を頻繁にもたらしている。 麻薬戦争はまた、特に逮捕を避けるため又は司法手続きの結果に影響を与えるための 支払いに関する法執行機関内部での収賄の慣行を生み出した。他国に対して、薬物取 締りのための活動を含む、資金的又は技術的援助を提供する国は、その援助が人権侵 害を助長しないことを保証すべきである。

A. 薬物の影響下にある被疑者の取調べ

9. 作業部会は、被拘禁者が薬物及び/若しくはアルコールの影響下にある間、又は その疑いがある間、被拘禁者との面談又は尋問を行わないこと、並びに、すべての被 拘禁者が、拘禁の初期段階で離脱症状を経験している間、効果的な医療処置へのアク セスを与えられることを国家は保証すべきであると考えている。そうでなければ、特に家族や法的代理人がいない場合に、被拘禁者が自分の権利を理解し、警察に正確な 供述をする能力があるかどうかが疑われる。[34]

B. 同意または司法令状なしの検査、並びに停止及び所持品検査

10. 作業部会は、「本人の同意なしに...検査を受けさせることは、身体的完全性の権利の侵害を構成する可能性がある」と述べ、[35] 血液または尿検体の採取を含むあらゆる検査は、司法官によって承認された令状によってのみ行われるよう勧告している。[36]

11. 無作為薬物検査、並びに停止及び所持品検査行為は、薬物使用者又は薬物を所 持している人を特定する手段として、それらを逮捕する目的で用いられうる。これら の行為は、合法的な捜査のための相当な理由の要件から大きく逸脱しており、人の安 全に対する人権を著しく低下させるものである。誰が検査を受けさせられるか、また は薬物所持のために捜査されるかは、多くの場合、個人の身体的外観、性別、年齢、 人種、民族性又は移民やセックスワーカーなどのような社会的地位に基づく、非常に 主観的な判断である可能性がある。[37] 相当な理由のない薬物検査または捜査は、公園 や路上、娯楽施設または薬物治療施設の近くなど特定の地理的区域の集団に向けられ る場合がある。[38] 薬物関連犯罪による多数の逮捕が、ある国では法執行活動の成功の 指標として用いられることがある。薬物を使用する人々はまた、国によっては逮捕割 当ての対象となる、法執行官の格好の標的となる可能性がある。[39]

C. 逮捕された者を登録せず、又は速やかに裁判官の面前に出頭させない こと

12. いくつかの国では、薬物関連犯罪で拘禁された人は、常に登録されているわけ ではなく、裁判官の前に速やかに出頭させられず、他の犯罪で拘禁されている者より 大幅に長い期間、起訴されることなく拘禁されている可能性がある。[40] 逮捕から司法 当局への出頭までの48時間の遅延は、通常、十分である; 48時間を超えるいかなる遅延 も絶対に異例でなければならず、その状況のもとで正当化されなければならない。[41]

13. インドネシアでは、薬物関連犯罪で逮捕された人は、裁判官の前に出頭させら れるまでに72時間勾留され、さらに72時間延長することができるが、他の犯罪では、 24時間しか勾留されない。[42]

14. カザフスタンでは、刑事犯罪の容疑を受けた成人の勾留期間は48時間以内であ るが、薬物取引の容疑を受けた成人の勾留期間は72時間以内まで延長されることがあ る。[43] メキシコでは、組織犯罪に関与したと疑われる人を起訴前拘禁 (arraigo) で勾留 し、最長80日間拘禁できる。arraigoは、特定の薬物関連犯罪に関連して使用すること ができる。[44]

15. ネパールでは、犯罪で逮捕された人は通常 24 時間勾留されるが、捜査当局の要 請があれば、最長 25 日間まで拘禁を延長することができる。麻薬規制法では、薬物関 連犯罪で逮捕された人を最長 3 カ月まで勾留することができると規定されている。[45]

16. スリランカでは、法執行官によって逮捕された容疑者は、通常、逮捕から24時 間以内に裁判官の前に出頭させられるが、違法薬物に関わる犯罪で逮捕された人は、 捜査を継続するために司法命令に基づいて7日間勾留されることがある。[46]

D. 薬物関連犯罪に対する公判前拘禁

17. ボリビア(多民族国)、ブラジル、エクアドル、ホンジュラス、メキシコ及び ペルーでは、薬物関連犯罪で起訴された人は、自動的に公判前拘禁される。[47] 作業部会 は、強制的な公判前拘禁について懸念を表明し、人権法に抵触するため、薬物関連犯 罪を含むいかなる犯罪についても正当化することはできないと指摘している。公判前 拘禁が合理的かつ必要であるかどうかの個別的な司法判断は、起訴された犯罪にかか わらず、個々の事例についてなされなければならない。[48]

18. もう一つの深刻な懸念は、薬物関連犯罪に対する公判前拘禁の乱用である。い くつかの国では、強制拘禁の法律要件がないにもかかわらず、実際には、薬物関連犯罪で逮捕された人は、頻繁に公判前拘禁で勾留されている。これは、コスタリカ、グ アテマラ、ルーマニアにおける事例である。[49] ベラルーシでは、不正取引に関わる薬物 関連犯罪の容疑者は、多くの場合、公判前拘禁で勾留される。[50] スリランカでは、薬物 不正取引及び販売の容疑者は、例外的状況を除いて保釈されることはない。[51]

19. 一部の国では、薬物関連犯罪で起訴された人は、数か月から数年間も公判前拘 禁で勾留されることがある。[52] フィリピンでは、2018年に、約10万人の受刑者が保釈の 認められない薬物関連犯罪で公判を待ちながら、平均528日間勾留されていた。[53] スリランカでは、少量の薬物に関わる事例では数か月、大量の薬物に関わる事件では数年 間、公判前拘禁で勾留されることがある。[54] 作業部会は、薬物取引の容疑者を公判なし で長期間拘禁することを定めた予防拘禁制度について懸念を表明している。[55]

20. 米国では、低所得者層は保釈金を支払う余裕がないために、特に少量のマリフ ァナ所持などのような軽微な犯罪では、収容施設から釈放されるようにするために有 罪を認める傾向がある。[56]

E. 拷問又は虐待

21. 一部の国では、薬物関連犯罪で逮捕又は拘禁された人々が、自白を引き出すた め、又は他の薬物使用者若しくは密売人に関する情報を得るために、身体的又は精神 的な暴力を受けている。[57] メキシコでは、麻薬戦争の軍事化が拷問の件数の大幅な増 加につながった。[58]

22. 拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は刑罰に関す る特別報告者は、一部の法執行機関が、自白を引き出すため、又は例えば売人及び供 給者についての情報を得るために、薬物依存の容疑者にオピオイド置換療法を意図的に与えなかったことを観察し、これが拷問にあたると認めた。[59 ]人権及び薬物政策に関 する国際ガイドラインはまた、薬物依存症の治療及び疼痛緩和を含む、医療目的のた めに薬物を必要とする人に薬物を与えないでおくことは、拷問の一形態とみなされる と指摘している。[60] 作業部会は、「拘禁環境における医療処置の否認及び/又は拘禁環 境における医療へのアクセスの欠如は、残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り 扱い又は刑罰に該当しうる」とみなしている。[61]

23. インドネシアでの薬物関連犯罪で収監された人の研究では、79%が逮捕段階で 虐待を受けたことが判明し、86.6%が拘禁中に拷問又は虐待を受けたと報告されている。 [62 ]ベラルーシ及びロシア連邦では、法執行官が拘禁中の投薬治療を受けていない離脱症 状を経験していた薬物依存の人たちに自白を求めた。[63]

24. スリランカでは、薬物関連犯罪の容疑者から情報を引き出すために拷問が用いられ、女性の容疑者は、女性の法執行官によって侵入的かつ不法な体腔検査が行われたと訴えている。公判前拘禁中に、投薬治療を受けていない離脱症状を経験しているために騒乱を引き起こした薬物依存者は、多くの場合、医療支援を受けるよりもむしろ殴打される。[64]

25. 市民的及び政治的権利に関する国際規約65及び地域の人権規約は、薬物関連犯罪に対する、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は刑罰を 受けるおそれのある国への引渡し又は他の形態の移送から個人を保護している。[66]

F. 公正な裁判の保証の遵守の欠如

26. 作業部会は、薬物関連犯罪で起訴された人に対する公正な裁判基準の欠如に懸 念を表明した。[67]これらには、逮捕の理由又は起訴理由について知らされていないこと、 偽装された又は捏造された証拠への依拠、投薬治療を受けていない離脱症状の期間を 含む、拷問又は他の残虐かつ非人道的な取扱いのもとでなされた自白への依拠、保釈 を許可される条件としての自白が含まれている。

27. その他の違反には、証言が強要された証人の使用、弁護人を依頼する権利を被 告人に通知しない又は弁護人への接見を許可しない、 [68]逮捕の最初の時間を含む裁判手続のすべての段階において法的支援を提供しない、効果のない弁護人、[69]被告人が 理解する言語で起訴、証拠又は文書に関する情報を提供しない、被告人が外国籍である場合に領事に通知しない、証人の呼び出し又は証拠の提出による被告人の抗弁の提 示を許可しない、押収された物質の性質及び量に関する独立した法医学的証拠を認めない、裁判官の公平性の欠如又は特定の結果を得るための不正な裁判官などが含まれ る。[70] 一部の国において薬物不正取引に関連して、薬物が置かれている建物又は車両の鍵を所持していることが判明した人に法律上の推定が用いられることは、無罪推定の原則に抵触する。[71 ]多くの死刑の薬物事件において、公正な裁判基準の尊重の欠如が報告されている。[72]

ドラッグコート

28. ドラッグコートは、米国に3,000以上、その他の地域、特にラテンアメリカとカ リブ海地域に相当数存在し、低レベルの薬物関連犯罪で逮捕された個人のための刑事 裁判所に代わるものとして設立された。これらの裁判所では、有罪判決を受けた場合、 被告人は収監又は薬物治療いずれかの選択を与えられる。

29. 参加者が裁判所監督下の治療計画を無事に完了した場合、罪状が軽減若しくは 棄却又は犯罪歴が抹消される。裁判官が治療の進行に満足しない場合、その人は薬物 関連犯罪での収監及び治療プログラムを完了しなかったことによる追加の罰則を科せ られる可能性がある。[73 ]薬物治療プログラムの設計における重大な欠陥は、薬物使用 の減少を考慮することなく、断薬が成功の尺度の中心となっていることである。薬物 依存治療の専門的な訓練を受けた医療従事者の多くは、薬物使用が管理可能なレベルまで減少し、それによって雇用や家族・友人との社会的交流を維持できるようになる ことが治療の成功を意味すると考えている。これらの保健専門家、市民社会、及び影響を受けるコミュニティを薬物政策の策定に関与させ、薬物治療の成功を構成する要 素を明らかにすることが重要である。

30. 裁判官及び弁護士の独立に関する特別報告者は、ドラッグコートが参加者に重 大な害を与え、頻繁に人権を侵害していることを示す相当な証拠があると認定した。 参加者の治療計画は、医学的訓練を受けていない人々によって作成されることが多く、 根拠に基づかない治療につながる可能性がある。参加者は、通常の回復過程の一部で ある再発、治療予約の欠席又は規則違反で罰せられる。[74]

31. 他の人は、ドラッグコートが薬物依存のためのオピオイド置換療法又は不安、 注意欠陥障害若しくはその他の健康状態のための処方薬を提供しない治療プログラム への参加を強制することがあると指摘した。[75]

32. 評論家は、裁判官は薬物治療を評価、監視又は監督する資格がなく、治療はもっぱら医療従事者によって扱われるべきであることから、ドラッグコートは概念的な 欠陥があると主張している。[76] 作業部会は、この見解に同意する。裁判所は、もっぱら医療従事者に委ねられるべき薬物治療の決定を監督したり、何らかの形で関与した りすべきでない。この意見は、後述の83項でより詳細に提示されている。

軍事裁判所及びその他の特別裁判所

33. ロシア連邦では、薬物関連犯罪で起訴された軍人は軍事裁判所で裁判を受ける。 [77]レバノンでは、軍務に関係のない犯罪を犯した新兵を除き、軍人の薬物関連犯罪は軍 事裁判所が裁判権を有する。国内治安部隊及び公安部隊の隊員もまた、関連犯罪につ いての軍事裁判権の対象となる。国防省、陸軍、軍事裁判所、国内治安部隊及び公安 部隊の文官は、任務遂行中に犯罪行為が行われた場合、軍事裁判権の対象となる。[78 ]メ キシコでは、薬物関連犯罪で起訴された軍人は、特定の状況下では軍事裁判所で裁判 を受けることがある。[79]

34. エジプト、イラン (イスラム共和国) 、イエメンでは、人権法で規定されている 多くの公正な裁判の保証を欠く、国家安全保障特別裁判所又は緊急裁判所が、薬物不正取引で起訴された民間人の裁判に用いられている。[80] パキスタンでは、テロ事件の 裁判のために設立された特別法廷が、麻薬密売人の裁判にも用いられている。[81]

G. 不均衡な判決

35. 国際麻薬統制委員会は、比例原則を薬物関連事項の指導原則として継続するよう勧告している。[82]

36. 作業部会は、薬物関連犯罪に対する不均衡な判決について懸念を表明している。 [83] 薬物関連犯罪に対する強制的な最低量刑及び不均衡な長期の量刑は、時に殺人や強姦 などのような深刻な暴力犯罪に対して下されるものより長い刑期を一部の国でもたら し、過剰収容及び刑務所の過密化の要因となっている。[84]

37. リトアニアでは、非暴力的な薬物関連犯罪の量刑は、重大な身体的危害、強姦、 性的暴行などの暴力犯罪の量刑と同じくらい長くなることがある。[85] サウジアラビアの裁判所は、薬物関連の犯罪に対して多数の事例で最高刑を科している。[86]米国では、 薬物関連犯罪で3回有罪判決を受けた人は、暴力が関与していなくても、25年を超える 強制的な判決を受ける可能性がある。[87] 作業部会は、薬物関連犯罪で有罪判決を受けた 人が刑期を越えて拘束されている事例に遭遇している。[88]

38. 作業部会は、薬物関連犯罪に対する量刑が均衡のとれたものであることを確実 にするための改革を要請している。[89] そして、「均衡の取れた量刑の要件を満たすため に、各国は最低及び最高刑を減らし、薬物の個人使用及び軽微な薬物犯罪を非犯罪化することを目的として、刑事政策及び薬物法を改正すべきである」と勧告している。[90]

39. 作業部会は、薬物関連犯罪に対する過剰収容が刑務所の過密化の大きな要因と なっており、自由を奪われたすべての者は、人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重し て取り扱われるべきであると規定する市民的及び政治的権利に関する国際規約の第10 条[91] 並びに国連被拘禁者処遇最低基準規則 (ネルソン・マンデラ・ルールズ ) 及び女性 被拘禁者の処遇及び女性犯罪者の非拘禁措置に関する国連規則 (バンコク・ルールズ) などのような他の基準の遵守が疑問視されることを認めた。

40. もう一つの懸念材料は、薬物関連犯罪に対する刑罰として、笞刑、固縛、鞭打 ち及び切断を含む身体刑の使用である。少なくとも12カ国(ボツワナ、ブルネイ・ダ ルサラーム、グレナダ、イラン(イスラム共和国)、マレーシア、モルディブ、ナイ ジェリア、カタール、サウジアラビア、シンガポール、アラブ首長国連邦、イエメン) が一部の薬物関連犯罪に身体刑を使用している。[92] 身体刑は、薬物関連犯罪に対して不 均衡な量刑であり、人権法で禁止されている虐待の一形態である。非暴力的な薬物関 連犯罪に対する無期懲役、特に仮釈放の可能性のないものは、過度に懲罰的かつ不均 衡であると批判されている。[93]

H. 薬物関連犯罪に対する死刑の使用

41. 薬物関連犯罪に死刑を科すことは、死刑の適用に関する国際基準に抵触する。[94]

42. 薬物関連犯罪は依然として35カ国で死刑に処せられ、そのうち4カ国(中国、イ ラン(イスラム共和国)、サウジアラビア、シンガポール)が2018年に薬物関連犯罪 の死刑を執行した。[95] 少なくとも19の国で、数千人の人々が薬物関連犯罪で死刑囚にな っているといわれている。[96] 薬物関連犯罪に対する死刑判決は、死刑判決全体の中で 高い割合を占めることが多い。インドネシアでは、2019年10月に死刑囚の61%が薬物 関連の犯罪で判決を受けていた。[97]

43. 国際麻薬統制委員会は、薬物関連犯罪に対する死刑を保持するすべての国に対 し、既に下された死刑判決を減刑し、薬物関連犯罪に対する死刑の廃止を検討するよ う促した。[98]

I. 執行猶予、仮釈放、恩赦及び大赦の禁止

44. 一部の国は、他の犯罪で有罪判決を受けた人に頻繁に利用可能である執行猶予、 仮釈放、恩赦又は大赦を薬物関連犯罪で有罪判決を受けた人に対して検討することを 許可していない。一部の国は、薬物関連犯罪について、労働又は学習による減刑を許 可していない。[99] 作業部会は、このような制限を撤廃するよう各国に勧告している。[100]

45. メキシコでは、薬物関連犯罪で有罪判決を受けた妊婦は、他の犯罪で有罪判決 を受けた妊婦が利用できる収容の代替手段を利用することができない。[101] ナイジェリ アでは、薬物関連犯罪について、執行猶予又は社会奉仕活動の可能性は認められてい ない。しかし、有罪判決を受けた者は、15 年の刑期のうち少なくとも 5 年間を良好な 態度で過ごした場合に、刑務所長官の推薦に従い、条件付き又は条件なしで仮釈放さ れることがある。裁判所は、減刑を検討することができる。[102]

46. スリランカでは、特定の薬物関連犯罪で有罪判決を受けた人は、他の犯罪で被 収容者が更生し、刑務所内で品行方正であると認められた場合のようには早期釈放の 資格が与えられない可能性がある。行政が発行する恩赦及び大赦は、薬物関連犯罪で有罪判決を受けた被収容者には適用されない。[103]

47. 多くの国が、コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延を防ぐために、早期釈 放又は例外措置によって受刑者数を減らしているが、アルジェリア、コロンビア、イ ンドネシア、フィリピン、セネガル、トルコ、グレートブリテン及び北アイルランド 連合王国などの国では、薬物関連犯罪で起訴された受刑者は多くの場合、このような 措置から除外されている。[104]

48. カナダでは、連邦レベルの矯正当局は、個人が違法薬物検査で陽性であった場 合又は尿検体の提供を拒否した場合、仮釈放を取り消すことができる。[105] ロシア連邦 では、重大な薬物関連犯罪で有罪判決を受けた人は、刑期の4分の3を終えるまで仮釈 放を受けることができない。[106]

J. 人権擁護者、ジャーナリスト及び政敵を標的とした薬物規制の乱用

49. 作業部会は、一部の国において、人権擁護者、ジャーナリスト、政敵及びその 他の政府の批判者が、彼らの意見及び表現の自由の行使を抑圧又は統制する手段とし て、薬物容疑の対象にされていることを指摘した。[107]

50. ロシア連邦は、世界保健機関(WHO)によって勧告された薬物依存治療の方法 に関する科学的及び他の公的な議論並びに治療としてのオピオイド置換療法の使用に 関する経済的、社会的及び文化的権利委員会の勧告の普及を標的とする反薬物プロパ ガンダ法を採択している。2018年には、民間財団が、違法薬物の使用に関連する害を 減らす方法について情報を公開したことで、多額の罰金を科された。[108]

IV. 特定の集団に向けられた差別的な薬物規制措置

51. 麻薬戦争は、人との戦争として広く理解されているかもしれない。その影響は 多くの場合、貧困層に最も大きく、また、弱い立場にある人々に対する法執行におけ る差別と頻繁に重なる。これは、異なる形態の差別の交差性と呼ばれ、不利な状況を 強化するものである。作業部会は、薬物使用の犯罪化が薬物使用者に対する差別的な 方法での刑事司法制度の展開を促進し、法執行官が、少数民族、アフリカ系の人々、 先住民、女性、障害者、エイズ患者、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランス ジェンダー、インターセックスの人々など弱い立場にある疎外された集団のメンバー を頻繁に標的にしていることを観察した。ホームレス、セックスワーカー、移民、年 少者、失業者及び前科者もまた弱い立場にある。[109] 作業部会は、各国に薬物規制の取 り組みにおいて、弱い立場にある疎外された集団のメンバーの逮捕及び拘禁を差別的 に行うことを禁止するための措置をとることを奨励した。[110]

A. 少数民族

52. いくつかの国で、少数民族は、逮捕、公判前拘禁、有罪判決率について不均衡 な影響を受けている。カンボジアでは、ベトナム系の人々が、国の反薬物キャンペー ンの結果、特に苦しんでいると報告されている。[111 ]カナダでは、アフリカ系の人々は 人口の3.5%であるが、連邦刑務所人口の8.6%を占めている。[112] メキシコでは、少数民 族と貧困層が不均衡に標的にされている。[113] イギリスでは、アフリカ系の人々が薬物 所持で裁判にかけられる割合は白人の4.5倍であることが判明しているが、両グループ の薬物使用は同程度であった。[114] 米国では、アフリカ系の人々が薬物関連犯罪で収容 される可能性が白人の6.5倍高く、[115] これは法執行官が主に犯罪率の高い少数民族集団 に、より多くの時間を費やしていることが一因である。[116] アフリカ系の人々に関する 専門家作業部会は、アフリカ系の人々が過度に懲罰的な法律及びレイシャル・プロファイリングの影響を受けており、それが彼らを標的集団にしていると述べている。[117]

B. 先住民族

53. 先住民族人口の多い国では、薬物関連犯罪に関する先住民族への差別が広まっ ている。[118] カナダでは、先住民族は人口の5%であるが、連邦刑務所人口では23%を占 めている。[119] 先住民族の主張の根源は、先住民族の権利に関する国連宣言のもとでの 彼らの権利に関するものである。この宣言は、国際薬物規制条約により管理されてい るものを含め、先住民が宗教的、医療的及び慣習的な目的のために伝統的に栽培して きた作物及び植物を生産する権利を保護している。[120] 一部の国(アルゼンチン、ボリ ビア(多民族国)、ブラジル、カナダ、コロンビア、エチオピア、ペルー、ソマリア、 米国及びイエメン)は先住民族に限定的な保護を与えているが、この分野における先 住民族の権利の保護は依然として課題である。[121]

54. 先住民族の栽培の権利よりも広範な問題は、自給自足又は小規模農家による違 法作物の栽培である。いくつかの国は、違法作物生産に代わる農業及び政府サービス へのアクセスの増加を提供する開発アプローチに重点を置いてきた。アフガニスタン、 ボリビア(多民族国)、コロンビア、エクアドル、インドネシア、ラオス人民民主共 和国、モロッコ、ミャンマー、ペルー、フィリピン及びタイでは、代替開発プログラ ムが採用されている。[122]

C. 移民

55. 一部の国では、移民が薬物関連犯罪で不均衡に有罪判決を受けている。[123] サウ ジアラビアでは、2017年から2019年末までに薬物関連犯罪で処刑された202人のうち、 154人 (76%) が移民労働者であった。[124] エクアドルでは、46カ国からの1,400人が薬物 関連犯罪で収監されている。[125] イタリアでは、非常に多くの外国人が薬物関連犯罪で 拘禁されている。[126]

D. 女性

56. 決議59/5 において麻薬委員会は、世界の薬物問題に関連する政策及び計画にお いて、加盟国がジェンダーの視点を主流化することを引き続き支援するようUNODCに 要請し、並びに加盟国に対し、薬物関連犯罪により逮捕、拘禁、訴追、裁判又は判決 の執行対象となる女性の特定のニーズ及び状況を考慮することを奨励することを採択 した。

57. 女性は世界の刑務所人口の6.9%であるが、世界の刑務所にいる女性の35%が薬 物関連犯罪で有罪判決を受けているのに対し、男性では19%である。[127] 薬物関連犯罪 によって収監された女性の割合は、タイ (82%) 、カンボジア (73%) 、ブラジル及びコ スタリカ (68%) 、ベネズエラ (ボリバル共和国) (64%) 、米国 (連邦刑務所では56%) 、 ペルー及びフィリピン (53%) 、エクアドル (51.7%) 、インドネシア (48%) 、アルゼンチ ン (46%) など、いくつかの国でははるかに高い。[128]

58. 2010年から2017年の間に、女性の刑務所人口は推定53%増加したが、男性の刑務 所人口の増加は19.6%であった。女性は一般に、薬物の運び屋などのような低レベルで はあるが、リスクの高い活動に関与している。薬物関連犯罪で刑務所に入っている女 性の大半は教育をほとんど受けておらず、多くはシングルマザーで貧しく、雇用機会 も限られている。中には、パートナー又は夫から薬物関連の活動を強要される人もい る。コロンビアでは、薬物関連犯罪で収監された女性の76%が、収容される前に中等教 育を修了しておらず、コスタリカでは、刑務所に薬物を持ち込んだ女性の95%以上がシ ングルマザーであった。メキシコでは、薬物関連犯罪で収監されている推定40%の女性 が、男性のパートナーから強要されて犯行に及んでいる。[129 ]一部の女性たちは、自宅での薬物所持で収容されたが、実際には薬物はパートナーのものであった。[130]

59. 低レベルの薬物関連犯罪の女性への判決に関する慣行はかなり多様である。一 部の当局(ドイツ、ニュージーランド、イングランド、ウェールズ)は一般に非拘禁 刑を科し、他の当局(フィリピン、ロシア連邦、香港、中国)は通常、拘禁刑を科し ている。[131]女性は、法的代理人へのアクセスがないこと又は減刑の可能性を低くする 固定観念のために、減刑又は司法取引を求める機会が限られている可能性がある。[132]

60. 多くの国では、女性向けに特化した刑務所がない、又は薬物依存症の治療若し くはハームリダクション措置を含む、女性のニーズに向けたサービスがない。[133]

61. 1999年、女性差別撤廃委員会は、英国では多くの女性が薬物関連犯罪で収監さ れており、いくつかの事例で女性の貧困を示すように見えることに懸念を表明した。 [134] 一部の国の法執行官は、薬物を使用する女性を標的にし、逮捕しない代わりに金銭 又は性行為を要求している。[135] カンボジアのセックスワーカーは、反薬物作戦におい て不均衡に標的とされ、暴力の脅威のもとで自白を強要されている。[136]

62. 米国を訪れている間に作業部会は、アルコール又は規制物質の使用に関して自 分自身又は他者に危険を及ぼすとみなされた妊婦の監禁について懸念を表明し、この 形態の自由の剥奪を 「ジェンダー化され、差別的」 と呼んだ。[137] 米国では、18の州で 妊娠中の物質乱用が児童虐待であるとみなされており、4つの州では妊娠中の薬物使用 が民事上の拘禁又は治療施設における非自発的拘禁の根拠とみなされている。[138]米国 のいくつかの州では、妊娠中に薬物を使用した女性に対する刑事制裁の脅威が、医療、 妊婦健診、薬物治療を求める意欲を失わせている。医師会は、法的制裁、制限及び報 告義務は逆効果であると主張している。[139]

63. ノルウェーでは、薬物依存症の妊婦が薬物を使用することによって胎児に害を 及ぼす可能性が高く、自発的な保健措置が不十分である場合、当局は本人の同意なし に入院治療のために妊婦を拘禁することができる。[140]

E. レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー及びインターセック スの人々

64. 薬物を使用するレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー及び インターセックスの人々は、多くの国々で薬物政策の影響を不均衡に受けている。彼 らは、過去の又は予期される差別及び恣意的拘禁の経験のために、医療提供者に支援 又は治療を求めない可能性がある。[141]

F. 人身取引の被害者

65. 中国の香港では、人身取引の被害者が薬物関連犯罪に悪用されている。[142] 米国 国務省の2019年人身取引報告書は、薬物不正取引シンジケートが南米女性に薬物を中 国の香港に運ぶよう強要したことを示す報告書に言及している。[143] 中国、香港の司法 省による検察官向けの指令では、被告人が不正取引の被害者であるという信頼できる 主張を考慮すべきであると規定されているにもかかわらず、実際には、検察官はほと んどそれを行っていない。[144] 国連人権高等弁務官事務所 (OHCHR) 人権と人身取引につ いて推奨される原則とガイドラインは、次のように定めている:「人身取引された人は、 違法な活動への関与が人身取引された人としての状況の直接的な結果である限り、そ の関与について...拘禁、起訴又は訴追されてはならない」(勧告原則 7)。

G. 薬物を使用し、又は薬物関連犯罪に関わる子どもたち

66. 人権及び薬物政策に関する国際ガイドラインは、各国は、個人使用のための薬 物使用又は薬物所持を理由に子どもを犯罪者として扱わないよう勧告している。[145]子 どもの権利委員会は、子どもたちがハームリダクション措置及び薬物治療から恩恵を 受けられるよう要請している。[146]

67. 作業部会は、薬物関連容疑での子どもの逮捕には令状が発行されるべきである と指摘している。緊急の事情がなければ、子どもの法的保護者又は弁護士は逮捕後速 やかに通知されるべきであり、いかなる取調べにも立ち会う権利を有する。量刑は比 例するべきであり、過酷なものであってはならず、子どもの最善の利益がすべての事 例で中心となるべきである。[147] これらの保護措置並びに少年司法運営に関する国連最 低基準規則(北京ルールズ)及び子どもの権利条約第37条及び第40条に掲げられているそ の他の保護措置は、薬物関連犯罪で逮捕された子どもたちに適用されるべきである。

68. いくつかの国(アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、カザフスタン、シ エラレオネ、スロバキア)では、特定の薬物関連犯罪の刑事責任年齢は14歳である。[148]

69. ベラルーシでは、2014年に薬物不正取引犯罪の刑事責任年齢が16歳から14歳に 引き下げられた。その結果、1000人以上の若者が有罪判決を受け、長い刑期の判決が 下されるようになった。[149]

70. カナダでは、12歳から17歳の子どもたちが薬物関連犯罪で起訴された場合、裁 判所は拘禁刑への合理的な代替を検討することが要求される。非拘禁刑の選択肢には、 警告、社会奉仕活動、釈放、プロベーション、罰金及び監督命令がある。[150]

71. アルジェリア、クロアチア、モロッコ、シエラレオネを含むいくつかの国は、 刑事訴訟の結果としての子どもたちのための司法命令による薬物治療を認めているが、 通常、子どもの法的代理人の同意を伴わなければならない。[151]レバノンでは、子ども たちは法的保護者の同意を得て、選択的な薬物嗜癖治療を求めることができる。[152] エ クアドルでは、子どもたちの自発的な治療には、子ども本人及びその法的保護者の両 方の同意が必要である。[153] 作業部会は、成人に関して前述したように、薬物治療及び ハームリダクションサービスが子どもたちに利用可能となるべきという子どもの権利 委員会の意見に同意するが、これは裁判所に提案され、又は義務付けられるものでは なく、むしろ、司法による監督なしに、社会福祉機関を通じ、かつ専ら医療専門家の 手に委ねられた医療により、インフォームドコンセントに基づき、自発的に提供され るべきである。

V. 拘禁中の薬物使用者の健康管理


A. 薬物使用者及び薬物依存者の健康に対する権利

72. 作業部会は、拘禁されている人々に対する不十分な又は存在しない健康管理の 問題に取り組んでいる。[154] 健康に対する権利は、経済的、社会的及び文化的権利に関 する国際規約の第12条に定められており、いかなる形態の拘禁であっても差別なく、 平等に適用される。ネルソン・マンデラ・ルールズは、薬物依存を含め、治療及びケ アの継続性を確保する方法で医療サービスが組織されるべきであると規定している (規則 24(2))。

73. 経済的、社会的及び文化的権利委員会、子どもの権利委員会並びに到達可能な 最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利に関する特別報告者は、薬物依存者に とってハームリダクションサービスは不可欠であると述べている。[155] 薬物依存者にオ ピオイド置換療法を提供しないことは、前述のように、苦痛を伴う離脱症状を引き起 こし、場合によっては強要による自白につながる可能性がある。

B. 拘禁における健康上の脆弱性

74. 世界全体では、被収容者の20%が薬物を使用しているのに対し、一般住民 では5.3%である。[156 ]刑務所への違法薬物の密かな持ち込みは、家族又は友人の訪問、 裁判所と刑務所の間を移動する被収容者、不正な刑務所職員又は請負業者によって行 われる。[157]

75. 刑務所での薬物使用の頻発は、被収容者の健康及び安全、刑務所の職員の安全、 刑務所の安全及び規律など、様々な悪影響をもたらす。[158] 刑務所は、HIV、C型肝炎、 結核などの伝染病が蔓延するリスクの高い環境である。刑務所内で薬物を注射してい る受刑者は、結核に感染するリスクが非常に高くなる。HIV及びC型肝炎などの血液感 染症の感染は、注射針の共有によって起こる可能性があり、これは注射針・注射器プ ログラムのない刑務所では共通である。[159]

C. 拘禁における健康上の規範の実施の欠如

76. 刑務所でオピオイド置換療法を提供しているのは56カ国のみであり、提供され ている場合は、限られた数の刑務所又は男性刑務所のみの可能性がある。オピオイド 置換療法のパイロットプロジェクトが2019年にウクライナのある一つの刑務所で開始 され、2020年にはさらに3つの刑務所で計画された。[160] 注射針及び注射器プログラムに 関しては、状況はさらに悪く、そのようなプログラムを提供しているのは11カ国のみ である。[161]

77. カナダでは、滅菌注射器が入手できないために刑務所内の薬物注射使用者の間 での注射器の共有率が高いことが複数の研究で示されている。刑務所の注射針交換プ ログラムが2018年6月に導入され、現在では43カ所の連邦刑務所のうち11カ所にこのプ ログラムがある。[162] スイスでは、ジュネーブ州が刑務所で注射針及び注射器を提供し ている。[163] ウクライナでは、市民社会組織との協力協定に基づき、国家刑務所サービ スの再拘禁施設にいる被拘禁者がハームリダクションサービスを利用できるようにな っている。[164]

78. オピオイド拮抗薬であるナロキソンは、薬物の過剰摂取の影響を打ち消し、命を救うことができる。カナダでは、ナロキソンは刑務所の保健職員が利用でき、矯正 職員も利用できるようになってきている。165ウクライナでは、ナロキソンはすべての刑務所及び拘置所のすべての医療施設で利用可能であり、その使用に関するトレーニ ングコースが組織されている。[166]

79. アルバニア、ベルギー、ブルガリア、グルジア、ケニア、ラトビア、リトアニ ア、モンテネグロ、ニュージーランド(1ヶ所の刑務所を除く)、セルビア及びウクラ イナの刑務所では、受刑者が収監前にオピオイド置換療法を受けていた場合にのみ提 供されている。[167]

80. エジプト、ヨルダン、ロシア連邦、サウジアラビア、シリア・アラブ共和国及 びトルクメニスタンなどいくつかの国では、オピオイド置換療法は社会一般で広く禁 止されており、刑務所では利用できない。[168]

81. 十分な注意が払われていない問題は、拘禁中の移民に対するハームリダクショ ンサービス及び薬物治療の利用可能性である。キプロス国立嗜癖局は、政府の拘置所 に収容されている成人移民及び子どもたちに、予防、ハームリダクション、薬物治療 サービスを提供するプログラムに資金提供している。[169] グルジアでは、強制送還を待 つ拘禁中の移民が薬物依存に対する医療を受けている。[170] イタリアでは、薬物リハビ リテーションサービスの職員が、閉鎖された移送センターを定期的に訪問している。[171] レバノンでは、移民を含むすべての被拘禁者に薬物治療が適用される。[172]

VI. 薬物使用者への強制的な治療

82. 作業部会は以前にも、国営の薬物拘禁施設における強制的な薬物治療を非難し ているが、収監に代わる措置としての薬物治療に関する従来の立場は明確なものでは なかった。過去に作業部会は、治療が収容に代わる措置とし行われる場合には、刑事 罰の期間を超えて延長されるべきでないと述べたのみであった。[173]

83. 作業部会の立場は進展している。被告人に収監と薬物治療のいずれかの選択肢 を与えるやり方は、ドラッグコートに限らず、数多くの国の通常の裁判所でも用いら れている。作業部会は、収監の脅威が人々を薬物治療に駆り立てるための強制的手段 として用いられるべきでないと考えている。被告人の中には、選択肢を与えられた場 合に薬物治療を拒否し、結果として実刑判決を受け入れる人もいるが、そのような選 択に伴う強制措置はあまりにも重大であり、自由に治療を選択する権利、治療を拒否 する権利、又はいつでも治療を中止する権利に対する容認できない侵害である。[174] 裁 判所はまた、強制または強要された薬物治療を命じるべきでない。薬物治療は、常に インフォームド・コンセントに基づき、自発的に行われるべきであり、医療従事者に のみ委ねられるべきである。この過程には裁判所の監督や監視があってはならず、訓練を受けた医療従事者にのみ任せられるべきである。

A. 国営の薬物強制収容所

84. 薬物を使用する又は薬物使用の疑いのある人が、本人の意思に反して薬物強制 収容所に監禁された場合、恣意的拘禁が行われる可能性がある。[175] 一般的な拘禁の期 間は、6カ月から11カ月と推定されており、当該国の法律及び慣行によって異なるが、 より長くなることもある。[176] 拘禁は、ある国では行政法に基づいており、他の国では 刑法に基づいている。薬物強制収容所での拘禁に関する法的手続き又は拘禁の決定に 異議を申し立てる権利は、ほとんど若しくは全く存在しない可能性がある。個別の逮 捕、薬物一掃の集団逮捕、薬物検査陽性による拘禁、家族又は地域住民による引き渡 しなどは、すべてこのような拘禁につながる可能性がある。[177] カンボジアでは、ハー ムリダクションサービスを促進する人々を含む公衆衛生職員も薬物捜査で逮捕され、 薬物強制収容所に拘禁されている。[178]

85. 薬物強制収容所には、被拘禁者が薬物依存症であるかどうかの評価又は個々人 の健康状態の評価がないことが多い。多くの施設では、薬物使用と薬物依存の区別が なされていない。[179] 薬物強制収容所での治療は、エビデンスに基づくものではなく、 断薬に焦点を当てたものであることが多い。薬物依存を管理する、又はハームリダク ションを支援する訓練を受けた医療従事者は、通常不在である。[180]

86. 作業部会は、これらの薬物収容所での慣行に「痛みを伴う、投薬治療を受けて いない離脱症状、殴打、軍事教練、言葉による虐待、時にはインフォームド・コンセ ントのない科学的な実験」及び「労働割当を満たさない被拘禁者が罰せられる...無給 又は極めて低い賃金での強制労働」が含まれることを認めた。作業部会は、「これら の虐待は、拷問、残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰からの自由 の権利及び健康に対する権利への甚大な侵害である」と判定している。[181] 強制労働は、 薬物依存を治療する有効な手段として科学的に認められていない。[182] 薬物強制収容施 設では、激しい殴打、投薬治療を受けていない離脱症状及び不衛生な食事による死亡 が報告されている。このような施設での非人道的な状況もまた、多くの被拘禁者を自 殺企図に追い込んでいる。[183]

87. 被拘禁者は通常、主として長時間の身体的な激しい運動、身体的及び言葉による虐待並びに厳しい懲罰制度の組み合わせからなる処遇によって集団で扱われている。たとえ小さな規則違反であっても、被拘禁者は激しい殴打、独房監禁及びその他の過酷な処罰の対象となることがある。一部の施設では、個々人に薬物摂取を止める意欲を起こさせるために宗教が援用される。薬物使用は道徳的な失敗と広くみなされてい る。[184]

88. 薬物強制収容所での慣行が、薬物依存者の治療を成功させるという根拠はない。 釈放後の再発率は極めて高い。これは、薬物依存を管理する訓練を受けた医療従事者 が外来で提供する根拠に基づく治療に自発的に参加した薬物依存者の比較的低い再発 率と対照的である。[185] 作業部会は、薬物強制収容所の代替として「国は、地域社会に おいて、自発的で、根拠情報及び権利に基づく、保健及び社会サービスを地域社会で 利用できるようにすべきである」と勧告している。[186]

89. 国営の薬物強制収容施設は、カンボジア、中国、インドネシア、ラオス、マレ ーシア、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タイ及びベトナムで運営されてい る。[187] フィリピン及びスリランカでは、これらの施設は軍事基地に置かれているか又 は法執行当局により監督されている。[188] カンボジア、マレーシア及びベトナムなど、 一部の国は、薬物強制収容所での再発率が極めて高く、地域社会での自発的な根拠に 基づく治療でははるかに低いことを認識しているが、強制収容所は、時には自発的な 根拠に基づくプログラムと並行して、運営され続けている。[189]こうした施設の存在を 継続する説明の一つとして、薬物使用者を路上及び公共の場から排除するという政治 的目的がある。[190]

90. 2020年、13の国連機関は、薬物強制収容所及びリハビリテーションセンターに 関する2012年の共同声明[191] を想起し、薬物強制収容所を運営する国に対し、COVID-19 の蔓延を抑制するための重要な追加措置として、さらなる遅延なく恒久的に閉鎖する よう要請した。[192]

B. 民間の薬物治療センター

91. いくつかの国では、薬物治療センターの大部分が公営ではなく民営である。メ キシコには約2,100の居住型薬物治療センターがあるが、そのうち公営は45のみである。 3万5千人の薬物使用者が法の適用を受けずに運営されている民間の薬物治療センター にいると推定されており、民間施設全体の約半数を占めている。治療期間は通常3カ月 から16カ月だが、患者の要望と関係なく家族の同意があれば延長できる。[193] プエルト リコ地域では、85%の居住型治療プログラムが民間団体によって運営されており、こ れらの施設での根拠に基づく治療サービスを受けられるのは、薬物依存者の4分の1の みである。[194]

92. これらの民間施設の多くは、薬物を使用する人々を本人の意思に反して拘束し ている。人々は、法執行機関、家族又はセンターの職員によって不本意に民間施設に 連れてこられる。民間施設の職員は、同意書への署名を拒否した場合、本人や家族を 脅して署名を強要しようとする。同意書に署名するよう強制的に圧力をかけられた 人々又は本人の意思に反して拘束された人々及び自発的に治療を求め、許可なく立ち 去ろうとする人々は、殴打及び他の形態の身体的虐待を含む、厳しい処罰を受ける可 能性がある。[195] 民間の薬物治療施設は、ドラッグコート又は通常の裁判所から付託さ れた事例について、国からの支払いで利益を得ているため、人々を厳密な必要性を超 えて施設に拘禁し続ける経済的理由をもたらす、経済的な利益相反が生じる可能性が ある。

93. アルゼンチン、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカ、ドミニカ共和国、 グアテマラ、パナマ、プエルトリコなど中南米のいくつかの国及び地域では、民営の 薬物治療センターで深刻な人権侵害が起きている。[196] 民営の薬物治療センターは、バ ングラデシュ、インド、インドネシア、イラン(イスラム共和国)、ネパールなどの アジア諸国にも大規模に存在し、いくつかの行為が深刻な人権侵害となっている。

94. 国が運営する薬物強制収容所と同様、大部分の民間の薬物治療センターでは、断薬に重点が置かれ、通常、根拠に基づく治療はほとんど又は全く行われていない。身体的暴力、言葉による虐待、屈辱、対立的な療法、過酷な規律及び規則違反に対する残酷な罰が頻繁に行われる。不衛生な生活環境及び腐った食品又は不健康な食品が報告されている。これらの過酷な行為は、一部の民間治療施設で死者を出している。[197]

95. バングラデシュでは、何十もの認可及び未認可、両方の民間の薬物治療センタ ーが、虐待に値する根拠に基づかない慣行を採用しており、いくつかの事例で死亡を もたらしている。イラン・イスラム共和国では、強制的な解毒及び投薬を受けていな い離脱症状が死亡をもたらしている。[198] インドネシアでは、ほとんどの民間施設が断 薬並びに殴打、薬物使用者を檻の中にボール及びチェーンで縛り付ける、魔法や祈り を含む処置に重点を置いている。[199]

96. ロシア連邦では、公的医療制度による薬物依存者の治療における有効率は低く、根拠に基づかない方法を用いる民間のリハビリテーション施設及び民間診療所が多く存在する。報告されているのは、鞭打ち、殴打、飢餓、栄養失調、屈辱による罰、ベッドフレームへの長期間の手錠、薬物使用は死につながると信じさせることを目的とした催眠療法、電気ショック、氷水に浸す、15分間地中に埋める、長時間の強制的肉体労働、祈祷などの処置である。処置から逃れようとすると、激しい殴打で罰せられ る。[200]

97. 作業部会は、民間の薬物治療センターを 「憂慮すべき事態」 と表現し、各国に、 調査し、適切な措置をとるよう要請した。[201]

C. 行政法又は刑法に基づく強制的な治療

行政法

98. アルバニア及びポルトガルなどのような一部の国には、自分自身又は他者に危険を及ぼすとみなされる人への行政拘禁を許可する精神保健法があり、薬物依存及び精神保健上の問題を抱える人に、その法律を適用している。[202] ロシア連邦及びスウェーデンなどのような他の国には、[203] 精神保健法とは無関係に、自分自身又は他者に危険を及ぼすとみなされる人に対して非自発的薬物治療を課すことを許可する行政法がある。

99. 作業部会は、「薬物を使用する人々を制御する手段として課される行政拘禁、 特にそのような拘禁が保健医療行為として仕組まれている場合」に懸念を表明してい る。また、「各国は、薬物使用自体が使用者の生命及び他者の生命を危険にさらすと いう先入観に基づいて、そのような拘禁を国内法に組み込んでいる」と指摘している。 [204] 薬物の使用又は依存のみを理由とする拘禁は、薬物使用者若しくは地域社会の他の 人々の健康又は生命を守る目的として、決して「正当化され、適切であり、必要かつ 比例的」でない。[205]

100. アイルランドは、作業部会の見解と一致する法的枠組みを採用している。薬物 への嗜癖は、非自発的入院の条件として精神保健法から除外されているため、薬物依 存症の人の行政拘禁は不可能である。同様に、薬物を使用する人が他者にとって危険 である場合、危険の脅威が確実に存在するかどうかを判断するのは警察である。薬物 の使用又は依存の治療のために、個人を民間の治療施設に非自発的に拘禁することは できない。[206]

101. WHO及びUNODCは、薬物使用障害の治療のための国際基準において、薬物使用障害のある人は、本人の能力の範囲内で、治療の開始時期及び中止時期を含む、治療に関する決定を行うべきであると述べている。治療は強制され、又は患者の意思及 び自主性に反して行われるべきではない。あらゆる治療介入の前に、患者の同意を得 るべきである(原則2)。

刑法に基づく司法命令による薬物治療

102. アルバニア、アルジェリア、アルメニア、アゼルバイジャン、キューバ、エク アドル、ニカラグア、ナイジェリア、スロバキア及びウクライナを含むいくつかの国 は、刑事司法手続の結果として司法命令による薬物治療を認めている。[207] クロアチア では、裁判官は、薬物の影響下で犯罪を犯した薬物依存者に対し、その人が嗜癖によ って、将来、重大犯罪を起こす可能性があるという危険性が認識されている場合、強 制的な治療を命じることができる。[208] 前述のとおり、作業部会はこのアプローチに反 対しており、裁判所は薬物治療の強制又は監督に関与すべきでなく、これはもっぱら 医療従事者に委ねられるべきであるという見解である。

VII. 軽微な薬物犯罪と非犯罪化

A. ダイヴァージョン

103. 1988年の麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約は、締約国 は、軽微な性質の事件について適当な場合には、有罪判決又は処罰に代わるものとし て、犯罪者が薬物の濫用者であるときには、治療及び後保護の措置を講ずることがで きる、と規定している(第3条 (4) (c))。UNODCは、収監は、軽微な犯罪で起訴された 人々のリハビリテーション及び社会復帰に逆効果であることが示されていると述べて いる。[209] 国際麻薬統制委員会によると、「薬物規制条約は、薬物を使用する人又は軽 微な薬物関連犯罪を犯した人を収監することを要求していない」。[210]

104. ダイヴァージョンに関する国の慣行はかなり異なる。アルメニアでは、2年以下 の刑期に適用される収監の代替措置として社会的に有用な公共事業がある。被収監者 は、メタドン置換療法を含む薬物治療を自主的に受けることができる。[211]

105. カナダでは、2年未満の刑期の薬物所持罪は条件付き判決の対象である。判決は、 条件に応じて刑務所ではなく地域社会で執行されることもあり、裁判官は条件の一つ として薬物治療を要求することができる。条件を守らなければ、残りの刑期を刑務所 で服役することを要求されうる。本人が、薬物治療を含む、何らかのリハビリテーシ ョンを受けることに同意すれば、特定の比較的軽い犯罪については、公判前のダイヴ ァージョンが可能である。[212]

106. キプロスでは、薬物取引又は他の重大な犯罪を含まない薬物関連犯罪で起訴さ れた人は、拘禁判決の代わりに治療命令の発令を裁判所に申請することができる。治 療期間は3カ月から24カ月である。[213]

107. アイルランドでは、薬物の入手、所持及び個人使用は非犯罪化されていないが、 個人使用のための薬物所持に関する法改正が政府レベルで合意され、運用が開始され つつある。このアプローチは、人々を支援のための保健及び社会サービスへと導く。 個人使用のための薬物所持を発見された人が初回の場合は、健康診断を受けるよう紹 介される。適切な場合、高リスクの使用者は、薬物治療又はその他の支援への紹介を 勧められる。個人使用のための薬物所持を発見された人が2回目の場合、警察は成人へ の警告を発する裁量を持つ。[214]

108. カザフスタンでは、公共の場所での非医療の薬物使用は違法であり、最高20日 間の拘禁刑が科せられる可能性がある。[215] モロッコでは、個人使用のための薬物所持 を発見された人は、健康診断の後に薬物治療を受けることに同意すれば、訴追の対象 とならない。[216]

109. レバノンでは、嗜癖に苦しむ薬物使用者は、国が提供する薬物治療を求めるこ とができ、治療を完了するまでの間、刑事司法制度を回避することができる。用いら れる治療並びに方法には、個人及び家族の支援、個人及び集団の心理的支援、精神的、 法的及び健康上の支援、職業訓練及びレクリエーションのリハビリテーションが含ま れる。[217]

110. ネパールでは、個人使用目的の薬物の入手、使用又は所持は非犯罪化されてい ないが、商業的な動機のない少量のマリファナ若しくは医療用アヘンの購入若しくは 所持、又は少量の薬物摂取に関与した違反者が初回の場合、その人が二度とそのよう な犯罪を起こさないことを約束すれば、起訴が見送られる場合がある。[218] ニカラグア では、罰金の支払い及び社会奉仕活動の実行を条件に、軽微な薬物犯罪へのダイヴァ ージョンが許可されている。[219]

111. ナイジェリアでは、薬物使用者又は薬物依存で逮捕された容疑者は刑事司法制 度から除外される。重大な薬物関連犯罪は15年から25年の収監が科せられる。[220]

112. ポルトガルでは、個人使用のための薬物の入手、使用又は所持は非犯罪化されている。個人消費のための10日分の用量以下で逮捕され、警察が供給犯罪に関与して いる疑い又は証拠を有さない場合、その薬物は押収され、事件は薬物依存防止委員会 に移される。委員会は、警告を発し、その人が特定の場所へ出入りし、又は特定の 人々に会うことを禁止し、定められた場所へ定期的に訪問することを義務づけ、又は その人の職業免許若しくは銃器免許を剥奪する可能性がある。委員会との面会を怠っ た場合、行政罰金若しくは社会奉仕活動を科される、又はその人の運転免許が取り消 される可能性がある。再犯者には、罰金、社会奉仕活動、社会的給付の保留又は罰金 の代わりに集団療法に参加することの要求などを含む制裁がある。薬物依存の人に対 しては、委員会は、薬物治療を受けるよう説得することを試みる。[221]

113. ロシア連邦では、少量の薬物の使用及び所持は行政犯罪であり、最高15日の拘 禁が科される。[222]

114. シンガポールでは、薬物使用のみに関わる犯罪と、薬物取引、強盗又は暴行などの他の犯罪と同時に行われる薬物使用に関わる犯罪とを区別されている。後者のカテゴリーの犯罪で有罪となった人々は法廷で訴追され、薬物使用のみで起訴された人々は、社会復帰措置としての職業訓練を含む、薬物リハビリテーションに送られる。[223]

115. スロバキアでは、薬物使用は刑事犯罪ではないが、薬物の所持、入手、配布お よび関連する行為は刑法により処罰される。検察は、犯罪経歴及びその他の要因によ って、薬物所持の刑事告発を取り下げる決定をすることがある。これは通常、3回分以 下の用量でのみ成立する。[224]

116. スリランカでは、2年未満の刑期の犯罪に対する収監への代替手段には、社会奉 仕活動及び物質乱用治療が含まれる。それにもかかわらず、これらの代替手段は十分 に活用されておらず、薬物関連犯罪で2年未満の収監の有罪判決を受けた人は、しばし ば罰金及び/又は収監の対象とされる。[225]

117. スイスでは、個人が薬物に依存しており、犯罪が消費資金を調達するために行われた場合、裁判所は薬物関連犯罪に対する刑罰を軽減する可能性がある。消費又は購入が少量の違法物質である事例では、裁判所は司法手続を停止し、刑罰を科さず、譴責を行うことができる。薬物関連犯罪で有罪判決を受け、最長6カ月の自由剥奪の判決を受けた人は、社会奉仕活動を行うことを要求することができる。電子監視は、20日から12ヶ月の刑期の特定の条件下での収監の代替手段として用いることができる。 [226]

118. ウクライナでは、行政犯罪法に基づき、販売目的のない少量の薬物の違法な製 造、購入、保管、輸送及び譲渡は、小額の罰金若しくは20から60時間の社会奉仕活動、 又は最高15日間の行政逮捕になる場合がある。[227]

119. 国によって異なるが、ダイヴァージョンが適切であるかどうかに影響する要因には、関与した薬物の量、初回使用、既存の犯罪歴、暴力又は他の犯罪が同時に行われたかどうか及び犯罪に対する刑期の長さが含まれる。

120. 1988年の麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約に関して、 重要な問いは、何が軽微な犯罪とみなされるかである。個人使用のために合理的と考 えられる量を超える薬物の量の設定は、厳しい刑事罰を伴う不正取引犯罪への国内法 における法律上の推定を作り出す。いくつかの国では、量が極めて少なく設定されて いるか又は定義が全くないため、個人使用のための少量の薬物を使用又は所持する 人々の恣意的拘禁を助長している。[228] 作業部会は、より重い罪が適切な場合にのみ適 用されるように、個人使用のための薬物所持と不正取引の犯罪を区別するための合理 的な閾値を法律で定めるよう各国に勧告した。[229]

B. 非犯罪化

121. 1988年の薬物条約は、薬物の個人使用又は個人使用のための所持の犯罪化を規 定しているが、国の憲法上の原則及び法制の基本的概念と相容れない場合には、犯罪 化の例外を認めている(第3条 (1) (c))。およそ29の国が、薬物の個人使用又は個人使用 のための所持について何らかの形で非犯罪化を採用している。[230] カナダ、ウルグアイ、 米国の16の州及びワシントンD.C.ではレクリエーション用途のマリファナが合法化さ れている。[231] メキシコは間もなくマリファナの使用を合法化する可能性がある。[232]

122. 作業部会は、「薬物の使用又は摂取の犯罪化はすべての国によって無効にされるべきである」[233] とし、「国は、薬物の個人使用及び軽微な薬物犯罪を非犯罪化する目的で...その刑罰政策と薬物法を改訂すべきである」と述べている。[234] 薬物の使用及び依存は、刑事事件としてではなく、むしろ健康問題として扱われるべきであり、権利に基づく措置、 特に経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第12条に規定された健康に対する権利に基づく措置[235]で対処されるべきである。[236]作業部会は、「薬 物の摂取又は依存は、拘禁を正当化する十分な理由にはならない」と述べている。[237]

123. 国連システムのメンバーは、効果的な機関間協力を通じた国際薬物規制政策の 実施を支援する国連システム共通見解において、刑務所の過密化及び過剰収容に対処 するため、個人使用のための薬物所持の非犯罪化を要請した。[238] 人権及び薬物政策に 関する国際ガイドラインも非犯罪化を要請している。[239]

124. 健康に対する権利に関する特別報告者は、犯罪化が薬物を使用する人々の保健 サービスへのアクセスを妨げ、スティグマを悪化させ、健康増進の取り組みを損なうことを明らかにした。[240]

125. UNODCは、約2億5,000万人の人が薬物を使用し、そのうち2,950万人(11.8%) が薬物使用障害に罹患し、そのうち2,065万人(70%)が薬物依存に罹患していると推 定している。[241] したがって、薬物を使用している人の88.2%は薬物使用障害を経験し ていない。「薬物使用障害」という用語は、1種類以上の精神作用薬物の使用が臨床的 に有意な障害又は苦痛をもたらす状態を指す。[242] 薬物を摂取する人のほとんどが薬物 使用障害を経験していないことを考慮すると、非犯罪化へのさらなる支持が提供され る。薬物使用障害を経験する人にとっては、健康上の対応が適切な行動方針である。

VIII. 結論及び勧告


126. 恣意的拘禁に関する作業部会は、各国に対し、次のことを勧告する:

(a) 個人使用のための薬物の使用、所持、入手又は栽培を、関連器具の所 持を含め、非犯罪化すること。メディア及びその他の公的にアクセス可能な情報 源を通じた明確かつ根拠に基づく情報発信は、スティグマを減らし、非犯罪化の 健康上の利益及びその他の利益へのより良い理解の促進に役立つ可能性がある;

(b) 個人使用のための薬物使用又は所持のみで拘禁されている人々を直ち に釈放し、その記録を抹消することを目的として有罪判決を再検討すること;

(c) 軽微かつ非暴力的な薬物関連犯罪で起訴され、又は有罪判決を受けた 人のダイヴァージョン又は刑務所への非拘禁代替措置への配置を優先すること - 刑務所は、標準とされるべきでなく、最終手段としてのみ用いられるべきである;

(d) 恣意的拘禁を含む人権侵害が頻発する状況に対処するために、拘留、 逮捕、捜査、検査、公判前拘禁、裁判及び判決に関わる手続きの包括的な見直し を行うこと。差別又は不均衡な薬物規制執行の対象となりうる特定の集団を司法 手続がどのように扱うかについて対処されなければならない。そのような集団を 標的にすること及びそのような人々が薬物障害のために保険医療を受けることを 妨げるおそれのある行為をやめるべきである;

(e) 本人の意思に反して拘束する国営の薬物強制収容所及び民間治療施設 を遅滞なく閉鎖すること。このような国営の薬物強制収容所及び民間治療施設へ のさらなる入所の一時停止を採択すべきである;

(f) 公営又は民営を問わず、薬物治療施設に本人の意思に反して監禁され ている人々を直ちに解放し、薬物依存者が本人のインフォームド・コンセントの もと、地域社会において根拠に基づく治療を自発的に受けるよう奨励すること。;

(g) 薬物依存を含む薬物使用障害へのすべての治療が、根拠に基づき、厳 密に自発的かつインフォームド・コンセントに基づいて行われるよう、法律、政 策及び実務を改正すること。すべての人は、治療を拒否する権利、相談の過程で 治療計画に同意する権利、いつでも治療を中止する権利及びいかなる薬物治療施 設からも直ちに退去する権利を有する;

(h) 医療従事者が薬物治療の問題について専門的な権限を持つことを保証 し、ドラッグコートも通常の裁判所も、被告人又は有罪判決を受けた人に薬物治 療を強制するための手段として、収監の脅威を用いないようにすること。ドラッ グコートの使用は中止すべきである。強制的な薬物治療は、決して裁判所が命じ てはならない;

(i) 軍当局が原則として薬物取締り活動に関与せず、薬物治療施設の管理 に関与しないことを保証すること;

(j) あらゆる拘禁施設に拘禁されているすべての者について、薬物依存の 有無を含む、薬物使用障害の有無に注意して健康状態を評価し、本人と相談し、 自発的かつインフォームド・コンセントを伴う、医療従事者による治療計画を策 定すること。ハームリダクションサービスも利用可能にすべきである;

(k) 薬物過剰摂取の影響に対処する、ナロキソンなどのオピオイド拮抗薬 の刑務所及びその他の拘禁施設での利用可能性を確保し、拘禁中および釈放時に 被収容者に提供すること;

(l) 薬物関連犯罪に対する量刑が比例するよう、法律と量刑ガイドライン を改正すること。裁判所は、薬物関連犯罪で起訴された人の役割が小さな若しく は軽微な役割かどうか、人身売買の被害者であるかどうか、強制を受けたかどう か又はその他の軽減要因があるかどうかを考慮する必要がある;

(m) 先住民が宗教的、医療的、慣習的な目的のために伝統的に栽培してき た作物及び植物を生産する権利を保護し、そのような生産が犯罪とならないこと を保証すること。国家はまた、違法作物を生産する自給自足又は小規模農家に対 して懲罰的措置を講じるべきではなく、彼らと協力して代替農産物による収入を 開発し、彼らの地域社会における政府サービスを向上させるべきである;

(n) 薬物使用者の団体を含む、市民社会に、薬物政策の設計、実施、監視 及び評価における有意義な協議的役割を与えること;

(o) 人権擁護者、薬物政策の分野で活動する活動家、ハームリダクション サービス提供者及びジャーナリストが、その活動の犯罪化、金銭的罰則又はその 他の形態の嫌がらせの脅威を受けることなく、彼ら自身、医療従事者、海外の専 門家及び国際機関の代表者と自由に活動し、会合できることを保証すること;

(p) 薬物取締り活動のためのものを含む、他の国に対する資金的及び技術 的援助の提供を監視し、そのような援助が人権侵害を助長し、又は人権侵害をも たらすことのないようにし、適切な場合には、援助を削減し、又は停止すること。 作業部会はまた、国際機関及び地域機関が、国家に対する資金的及び技術的援助 の提供を監視し、そのような援助が、特に薬物政策に関連して、人権侵害を助長 しないようにすることを勧告する;

(q) 恣意的拘禁の禁止を含む人権に配慮した薬物政策を策定するにあたり、 効果的な機関間協力を通じた国際薬物規制政策の実施を支援する国連システム共 通見解並びに人権及び薬物政策に関する国際ガイドラインを考慮すること。


Notes

1 General Assembly resolution S-30/1.
2 The questionnaire and the submissions received in response to it can be found at www.ohchr.org/EN/Issues/Detention/Pages/Detention-and-drug-policies.aspx.
3 E/CN.4/1998/44/Add.2, paras. 81 and 85; A/HRC/27/48/Add.3, paras. 111–119.
4 A/HRC/30/36, para. 74.
5 A/HRC/42/39/Add.1, para. 78.
6 International Drug Policy Consortium submission, p. 2; Penal Reform International submission, p. 2. See also United Nations Office on Drugs and Crime (UNODC), World Drug Report 2020, p. 21.
7 Colectivo de Estudios Drogas Derecho submission, p. 1.
8 Belarus Initiative Group submission , p. 1.
9 Georgia submission, p. 1.
10 Ireland submission, p. 1.
11 Kazakhstan submission, pp. 1–2.
12 Lebanon submission, p. 1.
13 Eurasian Harm Reduction Association submission, p. 1.
14 México Unido contra la Delincuencia submission, p. 1.
15 Sierra Leone submission, p. 1.
16 Slovak National Centre for Human Rights submission, p. 3.
17 Ukrainian Parliament Commissioner for Human Rights submission, p. 1.
18 Albania submission, p. 2.
19 Algeria submission, p. 2.
20 Amnesty International & Cambodian League for the Promotion and Defense of Human Rights submission, p. 5.
21 Ecuador submission, p. 4.
22 LBHM, ICJR & HRI (Lembaga Bantuan Hukum Masyarakat, Institute for Criminal Justice Reform and Harm Reduction International) submission , p. 2.
23 Morocco submission, p. 2.
24 Procuraduría para la Defensa de los Derechos Humanos de la República de Nicaragua submission, p. 2.
25 Russian Federation submission, p. 1.
26 Freedoms Collective submission, p. 1.
27 Colombia submission, p. 1.
28 Nepal submission, p. 1.
29 Wendy Sawyer and Peter Wagner, “Mass incarceration: the whole pie 2020”, Prison Policy Initiative, 24 March 2020, footnote 5.
30 Harm Reduction International submission, p. 1.
31 Amnesty International & Cambodian League for the Promotion and Defense of Human Rights submission, p. 10.
32 UNAIDS, Miles to Go: Closing Gaps, Breaking Barriers, Righting Injustices (Geneva, 2018), p. 54.
33 The international drug control treaties are the Single Convention on Narcotic Drugs of 1961 as amended by the 1972 Protocol; the Convention on Psychotropic Substances of 1971; and the United Nations Convention against Illicit Traffic in Narcotic Drugs and Psychotropic Substances of 1988.
34 A/HRC/42/39/Add.1, paras. 93 (b) and 74.
35 Working Group on Arbitrary Detention, “States should stop arbitrary detentions for drug offences, say UN rights experts”, 20 March 2019. Available at www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=24369&LangID=E.
36 A/HRC/42/39/Add.1, paras. 86 and 93 (a).
37 A/HRC/41/33, para. 27; A/HRC/30/65, para. 35; Amnesty International & Cambodian League for the Promotion and Defense of Human Rights submission, p. 10; Russian Civil Society Mechanism for Monitoring of Drug Policy Reforms submission, pp. 6–7.
38 Elementa DDHH & Instituto RIA submission, p. 7; Eurasian Harm Reduction Association
submission, p. 2; Russian Civil Society Mechanism for Monitoring of Drug Policy Reforms submission, p. 6.
39 A/HRC/30/65, paras. 35–36.
40 Ibid., para. 36.
41 Human Rights Committee, general comment No. 35 (2014), para. 33; A/HRC/WGAD/2020/31, para. 45.
42 LBHM, ICJR & HRI submission, p. 4.
43 Kazakhstan submission, pp. 4–5.
44 HRI, IDPC & CELS (Harm Reduction International, International Drug Policy Consortium and Centro de Estudios Legales y Sociales) submission, p. 2.
45 Nepal submission, p. 6.
46 Freedoms Collective submission, p. 4.
47 HRI, IDPC & CELS submission, p. 2; Equis, IDPC, WOLA, UNACH & Dejusticia (Equis: Justicia para las Mujeres, International Drug Policy Consortium, Washington Office on Latin America, Instituto de Investigaciones Jurídicas de la Universidad Autónoma de Chiapas and Centro de estudios de Derecho, justicia y sociedad) submission, p. 6.
48 A/HRC/4/40/Add.3, paras. 38, 65 and 102 (c); A/HRC/WGAD/2019/14, paras. 73–75; A/HRC/WGAD/2018/75, paras. 77–78.
49 Penal Reform International submission, p. 3.
50 Belarus Initiative Group submission, p. 5.
51 Freedoms Collective submission, p. 3.
52 Penal Reform International submission, p. 3; HRI, IDPC & CELS submission, p. 2. See also CAT/C/PHL/CO/3, para. 13.
53 HRI, IDPC & CELS submission, p. 2.
54 Freedoms Collective submission, p. 3.
55 A/HRC/16/47/Add.2, paras. 27, 38–40, 98 and 109.
56 A/HRC/36/37/Add.2, paras. 51–53.
57 European Saudi Organization for Human Rights submission, pp. 2–3; Belarus Initiative Group submission, p. 6; LBHM, ICJR & HRI submission, p. 4; Freedoms Collective submission, p. 7.
58 México Unido Contra la Delincuencia submission, pp. 5–8.
59 A/HRC/22/53, para. 73; A/68/295, para. 68.
60 See www.undp.org/publications/international-guidelines-human-rights-and-drug-policy,guideline II (6).
61 Working Group on Arbitrary Detention, “States should stop arbitrary detentions for drug offences, say UN rights experts”.
62 LBHM, ICJR & HRI submission, p. 4.
63 Belarus Initiative Group submission, p. 6; Russian Civil Society Mechanism for Monitoring of Drug Policy Reforms submission, p. 8. See also A/HRC/42/39/Add.1, para. 74.
64 Freedoms Collective submission, p. 7.
65 Human Rights Committee, general comment No. 20 (1992), para. 9.
66 [European] Convention for the Protection of Human Rights and Fundamental Freedoms, art. 3; African Charter on Human and Peoples’ Rights, art. 5; Inter-American Convention to Prevent and Punish Torture, art.2.
67 See A/HRC/WGAD/2019/72; A/HRC/WGAD/2019/60; A/HRC/WGAD/2019/25; A/HRC/WGAD/2019/14; A/HRC/WGAD/2018/90; A/HRC/WGAD/2018/61; A/HRC/WGAD/2017/7; A/HRC/WGAD/2016/57; A/HRC/WGAD/2016/4; A/HRC/WGAD/2013/8;
A/HRC/WGAD/2012/10; A/HRC/45/16/Add.1, para. 39.
68 A/HRC/45/16/Add.2, para. 31.
69 A/HRC/45/16, paras. 50–55; Eurasian Harm Reduction Association submission, p. 3.
70 European Saudi Organization for Human Rights submission, pp. 2–3; Amnesty International & Cambodian League for the Promotion and Defense of Human Rights submission , pp. 11–12; Russian Civil Society Mechanism for Monitoring of Drug Policy Reforms submission , p. 7; Belarus Initiative Group submission, p. 5; LBHM, ICJR & HRI submission, p. 4; Freedoms Collective submission, p. 5.
71 A/HRC/39/39, para. 36.
72 Harm Reduction International, The Death Penalty for Drug Offences: Global Overview (2019).
73 Miami Law Human Rights Clinic & Drug Policy Alliance submission, pp. 1–4 and 7; Canadian HIV/AIDS Legal Network submission, p. 7.
74 Submission of the Special Rapporteur on the independence of judges and lawyers for the OHCHR report on the implementation of the joint commitment to effectively addressing and countering the world drug problem with regard to human rights (A/HRC/39/39). Available from www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/Pages/WorldDrugProblemHRC39.aspx. See also Joanne Csete and Deise Tomasini-Joshi, “Drug courts: equivocal evidence on a popular intervention” (Open Society Foundations, 2015).
75 International Drug Policy Consortium submission, p. 3; Miami Law Human Rights Clinic & Drug Policy Alliance submission, pp. 4 and 8.
76 Global Commission on Drug Policy, “Drug policy and deprivation of liberty”, Position Paper (June 2019), p. 23.
77 Russian Federation submission, pp. 12–13.
78 Lebanon submission, p. 5.
79 México Unido Contra la Delincuencia submission, pp. 10–16.
80 Count the Costs, “The war on drugs: undermining human rights”, p. 4.
81 Canada, Immigration and Refugee Board of Canada, “Pakistan: Information on State efforts to prosecute terrorist groups, including through special courts; activities to combat and prosecute Lashkar-e-Jhangvi (LeJ) (2015-December 2016)”, 6 January 2017.
82 See www.incb.org/documents/Publications/AnnualReports/AR2018/Annual_Report_Chapters/
11_Chapter_IV_Annual_Report_2018_E_.pdf, recommendation 7, p. 110.
83 See A/HRC/WGAD/2019/82; A/HRC/WGAD/2019/60; A/HRC/WGAD/2016/57.
84 International Drug Policy Consortium submission, pp. 4–5.
85 Eurasian Harm Reduction Association submission, p. 1.
86 European Saudi Organization for Human Rights submission, p. 2.
87 HRI, IDPC & CELS submission, p. 2.
88 See A/HRC/WGAD/2019/14; A/HRC/WGAD/2013/2.
89 E/CN.4/2003/8/Add.3, paras. 44 and 72 (a).
90 Working Group on Arbitrary Detention, “States should stop arbitrary detentions for drug offences, say UN rights experts”.
91 E/CN.4/2003/8/Add.3, para. 44, and A/HRC/4/40, paras. 59–80.
92 Harm Reduction International submission , p. 4.
93 Penal Reform International submission, p. 7.
94 World Coalition Against the Death Penalty and Harm Reduction International submission, p. 2. See also SAU 5/2015, p. 2; SAU 8/2014, pp. 2–3; VNM 8/2014, p. 3; BGD 5/2018, p. 2 (all such communications are available from https://spcommreports.ohchr.org/Tmsearch/TMDocuments); A/HRC/WGAD/2019/72; A/HRC/WGAD/2018/90; A/HRC/WGAD/2016/4/; and Opinion No. 14/1996 (Islamic Republic of Iran).
95 Penal Reform International submission, p. 7.
96 World Coalition Against the Death Penalty and Harm Reduction International submission, p. 2.
See also Harm Reduction International, “The death penalty for drug offences: global overview 2018” (2019); www.hri.global/death-penalty-2020.
97 LBHM, ICJR & HRI submission, p. 3.
98 See www.incb.org/documents/Publications/AnnualReports/AR2019/Annual_Report_Chapters/AR2019_C hapter_IV.pdf, recommendation 6, p. 113.
99 A/HRC/4/40/Add.3, para. 87.
100 Ibid., para. 102 (c).
101 HRI, IDPC & CELS submission, p. 2.
102 National Human Rights Commission of Nigeria submission , pp. 12–13.
103 Freedoms Collective submission, p. 6.
104 International Drug Policy Consortium submission, pp. 5 and 10–11; Penal Reform International submission, p. 4. See also Working Group on Arbitrary Detention, deliberation No. 11 (A/HRC/45/16, annex II), para. 16.
105 Canadian HIV/AIDS Legal Network submission, p. 2.
106 Russian Civil Society Mechanism for Monitoring of Drug Policy Reforms submission, p. 8.
107 See AZE 2/2018; PHL 5/2017; UZB 1/2016; OTH 8/2014 and MDA 1/2014; SAU 10/2012; SAU
8/2012 (all such communications are available from https://spcommreports.ohchr.org/Tmsearch/TMDocuments). See also A/HRC/36/37/Add.1, paras. 80–81, 85, 87 and 100; A/HRC/WGAD/61/2018; A/HRC/WGAD/2018/12; A/HRC/WGAD/2015/40; A/HRC/WGAD/2015/26; A/HRC/WGAD/2013/59; A/HRC/WGAD/2013/8; Opinions No. 13/2004
(Bolivia); No. 18/2001 (Mexico); No. 14/1996 (Islamic Republic of Iran); No. 3/1995 (Uzbekistan); No. 2/1994 (Uzbekistan).
108 Russian Civil Society Mechanism for Monitoring of Drug Policy Reforms submission, p. 15.
109 Colectivo de Estudios Drogas Derecho submission, p. 3.
110 Working Group on Arbitrary Detention, “States should stop arbitrary detentions for drug offences, say UN rights experts”.
111 Amnesty International & Cambodian League for the Promotion and Defense of Human Rights submission, p. 8.
112 Canadian HIV/AIDS Legal Network submission, p. 3.
113 Elementa DDHH & Instituto RIA submission, p. 7.
114 International Drug Policy Consortium submission, p. 3.
115 Miami Law Human Rights Clinic submission, p. 4.
116 DRCNet Foundation submission, p. 1.
117 Working Group of Experts on People of African Descent, “UN experts call for human rights of People of African Descent to be central to drug policies”, 21 April 2016.
118 México Unido Contra la Delincuencia submission, p. 3.
119 Canadian HIV/AIDS Legal Network submission, p. 3. See also CERD/C/CAN/CO/21-23.
120 See arts. 11, 20 and 31 of the Declaration.
121 International Drug Policy Consortium, Taking stock: A decade of drug policy (2018), pp. 66–67.
122 Ibid., pp. 78–81.
123 México Unido Contra la Delincuencia submission, p. 3.
124 European Saudi Organization for Human Rights submission, p. 1.
125 Ecuador submission, pp. 8–9.
126 A/HRC/30/36/Add.3, paras. 12 and 15.
127 UNODC, World Drug Report 2018, Booklet 5, “Women and drugs: drug use, drug supply and their consequences”, p. 9.
128 International Drug Policy Consortium submission , p. 5; Equis, IDPC, WOLA, UNACH & Dejusticia
submission, p. 4; Centro de Estudios Legales y Sociales submission, p. 1; Amnesty International & Cambodian League for the Promotion and Defense of Human Rights submission, p. 6; Miami Law Human Rights Clinic submission, p. 5; LBHM, ICJR & HRI submission, p. 3; Ecuador submission,
p. 5.
129 International Drug Policy Consortium submission, p. 5. See also Equis, IDPC, WOLA, UNACH & Dejusticia submission, p. 4; Ecuador submission, p. 5.
130 A/HRC/41/33, para. 63.
131 Penal Reform International submission, p. 6. See also Linklaters LLP for Penal Reform International,
Sentencing of women convicted of drug-related offences (London, Linklaters LLP, 2020).
132 A/68/340, para. 26; A/HRC/41/33, para. 32.
133 Harm Reduction International submission, p. 3. See also A/HRC/42/39/Add.1, paras. 47–50.
134 A/54/38/Rev.1, part two, para. 312.
135 Elementa DDHH & Instituto RIA submission, pp. 6–7; Centro de Estudios Legales y Sociales submission, p. 6; DRCNet Foundation submission, p. 1.
136 Amnesty International & Cambodian League for the Promotion and Defense of Human Rights
submission, pp. 7 and 11.
137 A/HRC/36/37/Add.2, paras. 73–74.
138 Miami Law Human Rights Clinic submission, p. 7.
139 Amnesty International, Criminalizing pregnancy: Policing pregnant women who use drugs in the USA (2017), pp. 9 and 15; Diana Tourjee, “Women suspected of using drugs while pregnant can be jailed to keep fetus safe”, Vice, 10 July 2017, available at www.vice.com/en/article/wj8gd5/fetuses- can-sue-women-for-using-cocaine-while-pregnant-supreme-court-maintains.
140 Siv Merete Myra and others, “Pregnant substance-abusing women in involuntary treatment: attachment experiences with the unborn child”, Nordic Studies on Alcohol and Drugs, vol. 33, No. 3 (August 2016).
141 A/HRC/39/39, paras. 38–39 and 76.
142 Justice Centre Hong Kong submission, p. 2.
143 United States Department of State, 2019 Trafficking in Persons Report, p. 229.
144 Ibid., pp. 3–4.
145 See www.undp.org/publications/international-guidelines-human-rights-and-drug-policy, guideline III (1.2) (vi).
146 CRC/C/AUT/CO/3-4, para. 51, CRC/C/ALB/CO/2-4, para. 63 (b) and Committee on the Rights of the Child, general comment No. 15 (2013).
147 A/HRC/WGAD/2019/60, paras. 108–129.
148 Armenia submission, pp. 11–12; Commissioner for Human Rights of Azerbaijan submission, p. 3; Kazakhstan submission, p. 6; Eurasian Harm Reduction Association submission, p. 2; Belarus Initiative Group submission, pp. 10–11; Sierra Leone submission, p. 2; Slovak National Centre for Human Rights submission, p. 11.
149 Eurasian Harm Reduction Association submission, p. 2; Belarus Initiative Group submission, p. 10.
150 Canadian HIV/AIDS Legal Network submission, p. 8.
151 Algeria submission, pp. 15–16 and 29; Croatia submission, p. 17; Morocco submission, p. 13; Sierra Leone submission, pp. 2–3.
152 Lebanon submission, p. 3.
153 Defensoría del Pueblo de Ecuador submission, p. 9.
154 A/HRC/45/16/Add.1, para. 54; A/HRC/39/45/Add.2, paras. 55 and 63.
155 See E/C.12/RUS/CO/5, E/C.12/KAZ/CO/1, E/C.12/EST/CO/2 and E/C.12/UKR/CO/5; Committee on the Rights of the Child, general comment No. 15 (2013); A/HRC/30/65, para. 12.
156 UNODC, World Drug Report 2017, p. 13.
157 Andrew O’Hagan and Rachel Hardwick, “Behind bars: the truth about drugs in prison”, Forensic Research & Criminology International Journal, vol. 5, No. 3 (September 2017).
158 Ibid.
159 WHO Regional Office for Europe, Prisons and Health (Copenhagen, WHO, 2014), pp. 109–110.
160 100% Life Ukraine submission, p. 2.
161 Penal Reform International submission, p. 8. See also UNODC, World Drug Report 2019, Booklet 1, “Executive summary”, p. 20.
162 Canadian HIV/AIDS Legal Network submission, p. 4.
163 Switzerland submission, p. 7.
164 Ukrainian Parliament Commissioner for Human Rights submission, p. 11.
165 Canadian HIV/AIDS Legal Network submission, p. 8.
166 100% Life Ukraine submission, p. 3.
167 Harm Reduction International submission, p. 3; Eurasian Harm Reduction Association submission,
pp. 1–2; Georgia submission, p. 12; Ukrainian Parliament Commissioner for Human Rights submission, pp. 10–11.
168 HRI, IDPC & CELS submission, p. 4; Russian Civil Society Mechanism for Monitoring of Drug Policy Reforms submission, p. 13.
169 Cyprus submission, p. 8.
170 Georgia submission, p. 12.
171 Harm Reduction International submission, p. 7.
172 Lebanon submission, p. 4.
173 A/HRC/30/65, para. 43.
174 Ibid.
175 Ibid., para. 46.
176 Amnesty International & Cambodian League for the Promotion and Defense of Human Rights submission, pp. 14–15.
177 Global Commission on Drug Policy, “Drug policy and deprivation of liberty”, Position Paper (June 2019) p. 21.
178 Amnesty International & Cambodian League for the Promotion and Defense of Human Rights
submission, p. 7.
179 LBHM, ICJR & HRI submission, p. 5.
180 A/HRC/30/65, paras. 46–48.
181 Working Group on Arbitrary Detention, “States should stop arbitrary detentions for drug offences, say UN rights experts”.
182 UNODC and WHO, “Principles of drug dependence treatment”, discussion paper (2008), p. 15.
183 Amnesty International & Cambodian League for the Promotion and Defense of Human Rights submission, pp. 13 and 17.
184 Global Commission on Drug Policy, “Drug policy and deprivation of liberty”, p. 24; A/HRC/30/65, paras. 47–48.
185 Global Commission on Drug Policy, “Drug policy and deprivation of liberty”, pp. 22–23.
186 Working Group on Arbitrary Detention, “States should stop arbitrary detentions for drug offences, say UN rights experts”.
187 International Drug Policy Consortium submission, p. 7; LBHM, ICJR & HRI submission, p. 5; HRI, IDPC & CELS submission, p. 4.
188 HRI, IDPC & CELS submission, p. 4; A/HRC/39/45/Add.2, paras. 56–57.
189 International Drug Policy Consortium submission, pp. 7–10.
190 Amnesty International & Cambodian League for the Promotion and Defense of Human Rights submission, p. 18.
191 See https://files.unaids.org/en/media/unaids/contentassets/documents/document/2012/JC2310_Joint%20Statement6March12FINAL_en.pdf.
192 See https://unaidsapnew.files.wordpress.com/2020/05/unjointstatement1june2020.pdf.
193 Equis: Justicia para las Mujeres submission, pp. 8–9.
194 Submission of Open Society Foundations for the OHCHR report on the implementation of the joint commitment to effectively addressing and countering the world drug problem with regard to human rights (A/HRC/39/39), p. 3, available from www.ohchr.org/EN/HRBodies/HRC/Pages/WorldDrugProblemHRC39.aspx; Linda Pressly, “The rehab centres that lock up addicts against their will”, BBC News, 27 August 2014.
195 Global Commission on Drug Policy, “Drug policy and deprivation of liberty”, p. 24; Amnesty International & Cambodian League for the Promotion and Defense of Human Rights submission,
p. 18; Submission of Open Society Foundations, May 2018, ‘Drug Treatment in Latin America’ for the OHCHR report to the Human Rights Council on implementation of the UNGASS outcome document pp. 3–4.
196 Centro de Estudios Legales y Sociales submission, p. 14. See also Open Society Foundations “No health, no help: abuse as drug rehabilitation in Latin America and the Caribbean”, 2016, available at www.opensocietyfoundations.org/publications/no-health-no-help; Joane Csete and Richard Pearshouse, “Detention and punishment in the name of drug treatment” (Open Society Foundations, 2016), p. 10. Submission of Open Society Foundations Public Health Program, May
2018, ‘Drug Treatment in Latin America’ for the OHCHR report to the Human Rights Council on implementation of the UNGASS outcome document p. 3 (www.ohchr.org); International Drug Policy Consortium, Taking stock, p. 60, and “Compulsory rehabilitation in Latin America: an unethical, inhumane and ineffective practice”, Advocacy Note (February 2014).
197 Harm Reduction International submission, pp. 5–6; LBHM, ICJR & HRI submission, pp. 4–5. See also Global Commission on Drug Policy, “Drug policy and deprivation of liberty”, p. 24.
198 Harm Reduction International submission, pp. 5–6.
199 LBHM, ICJR & HRI submission, p. 6.
200 Russian Civil Society Mechanism for Monitoring of Drug Policy Reforms submission, pp. 11–12.
201 Working Group on Arbitrary Detention, “States should stop arbitrary detentions for drug offences, say UN rights experts”.
202 Albania submission, p. 7; Portugal submission, pp. 14–15.
203 Russian Civil Society Mechanism for Monitoring of Drug Policy Reforms submission, p. 10; Global Commission on Drug Policy, “Drug policy and deprivation of liberty”, p. 24.
204 A/HRC/30/36, para. 59.
205 A/HRC/27/48, para. 88; A/HRC/22/44, para. 83.
206 Ireland submission, pp. 3–4.
207 Albania submission, p. 7; Algeria submission, p. 15; Armenia submission, pp. 6–7; Commissioner for Human Rights of Azerbaijan submission, p. 2–3; Cuba submission, pp. 4–5; Defensoría del Pueblo de Ecuador submission, pp. 10–11; Procuraduría para la Defensa de los Derechos Humanos de la República de Nicaragua submission, p. 11; National Human Rights Commission of Nigeria submission, p. 17; Slovak National Centre for Human Rights submission, pp. 6–7; Ukrainian Parliament Commissioner for Human Rights submission, pp. 2–6.
208 Croatia submission, p. 10.
209 UNODC, Handbook of basic principles and promising practices on alternatives to imprisonment
(New York, United Nations, 2007), p. 3.
210 International Narcotics Control Board submission, p. 1.
211 Armenia submission, pp. 2–3 and 6–7.
212 Canadian HIV/AIDS Legal Network submission, p. 2.
213 Cyprus submission, pp. 1–2.
214 Ireland submission, p. 3.
215 Kazakhstan submission, p. 6.
216 Morocco submission, p. 3.
217 Lebanon submission, pp. 2–3.
218 Nepal submission, p. 2.
219 Procuraduría para la Defensa de los Derechos Humanos de la República de Nicaragua submission, p. 3.
220 National Human Rights Commission of Nigeria submission, pp. 5–6.
221 Portugal submission, pp. 1–2.
222 Russian Civil Society Mechanism for Monitoring of Drug Policy Reforms submission, p. 3.
223 Singapore submission, pp. 2–3.
224 Slovak National Centre for Human Rights submission, pp. 3–5.
225 Freedoms Collective submission, p. 2. See also A/HRC/39/45/Add.2, para. 53.
226 Switzerland submission, pp. 2 and 6; A/HRC/45/16, paras. 56–60.
227 Ukrainian Parliament Commissioner for Human Rights submission, p. 2.
228 Freedoms Collective submission, pp. 3 and 6.
229 See BLR 6/2019 (available from https://spcommreports.ohchr.org/Tmsearch/TMDocuments); A/HRC/42/39/Add.1, paras. 72–78.
230 Talking Drugs, Release & International Drug Policy Consortium, “29 countries. 49 models of drug decriminalisation. One handy web-tool”, TalkingDrugs, 29 January 2020; Ott Ummelas, “Norway to decriminalize personal drug use in ‘historic’ shift”, Bloomberg, 19 February 2021.
231 Jeremy Berke, Shayanne Gal and Yeji Jesse Lee, “Marijuana legalization is sweeping the US”,
Business Insider, 14 April 2021.
232 Oscar Lopez, “Mexico set to legalize marijuana, becoming world’s largest market”, New York Times, 10 March 2021.
233 Working Group on Arbitrary Detention, “States should stop arbitrary detentions for drug offences, say UN rights experts”; A/HRC/39/45/Add.2, para. 88 (a)–(b).
234 Working Group on Arbitrary Detention, “States should stop arbitrary detentions for drug offences,
say UN rights experts”; statement of the Working Group at the 63rd session of the Commission on Narcotic Drugs, 2–6 March 2020, Item No. 3, general debate.
235 BLR 6/2019 (available from https://spcommreports.ohchr.org/Tmsearch/TMDocuments), p. 2.
236 LKA 3/2018 (available from https://spcommreports.ohchr.org/Tmsearch/TMDocuments), p. 2; A/HRC/42/39/Add.1, para. 72.
237 A/HRC/30/36, para. 60.
238 CEB/2018/2, p. 14.
239 See www.undp.org/publications/international-guidelines-human-rights-and-drug-policy.
240 A/65/255, para. 16.
241 UNODC, “World Drug Report 2017: 29.5 million people globally suffer from drug use disorders, opioids the most harmful”, 22 June 2017.
242 See https://icd.codes/icd10cm/F19.

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