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ストーリータイプ10「じつは強かった」

物語のストーリーは、「主人公の行動」によって7つのカテゴリー分類ごとに、計24の「ストーリータイプ(物語類型)」があります。

今回は「主人公が戦う、争う、問題を解決する」バトル/トラブルシューティングのカテゴリーに属するストーリータイプ10「じつは強かった」をご紹介したいと思います。

「じつは強かった」はどんな物語か?

「じつは強かった」は、バトル/トラブルシューティングのカテゴリーのストーリータイプの中では超定番、おなじみの安定、安心の面白さを描ける物語です。

このストーリータイプは、「一見弱そうな主人公」「隠していた本当の実力を発揮して」誰も勝てない「強敵たちを蹴散らす」という痛快無比な戦いが描かれるストーリータイプです。

このストーリータイプのもっとも面白い点は「主人公の強さのギャップ」です。主人公は一見弱そうに、無能そうに登場し、始めはまったく頼りない様子なのですが、そんな弱くて頼りない主人公がクライマックスの絶体絶命の大ピンチの状況で、なんと一転して本当の実力を発揮して最強の実力者に「変身」するのです。
すなわちこの物語は、弱そうな主人公と本当の実力を発揮した最強の主人公のギャップによって主人公の魅力を最大限に描けるストーリータイプなのです。

またこの物語では、「じつは強かった」の他に「無能そうに見えてじつは有能だった」「取るに足りない人物だと思ったらじつは偉い人だった」というパターンも描かれます。

このストーリータイプでつくられている代表的な作品

このストーリータイプでつくられている既存の作品には、次のようなものがあります。

マンガ、アニメ、映画『るろうに剣心』


マンガ、アニメ『TRIGUN』


マンガ、アニメ『シティーハンター』


・マンガ、アニメ『美味しんぼ』


小説、アニメ『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』


マンガ『ビン ~孫子異伝~』


・TVドラマ『水戸黄門』


・TVドラマ『暴れん坊将軍』

……などなど。

「じつは強かった」のつくり方

この物語をつくるには、次の3つの要素を決めるようにしましょう。

1.「一見弱そうに見えてじつは最強の主人公」と、「主人公が本当の実力を隠す理由」。
2.誰もかなわないが、最後には主人公にボコられる「強敵」。
3.事件や問題の当事者である「中心人物」。

このストーリータイプの主人公は、基本的に作中でもっとも高い実力を持つ最強の人物でありながら、普段はその実力を隠して無力を装っています。
なぜ主人公は自分の実力を隠しているのかというと、「争いを避ける」「悪人に自分の力を利用されないため」などといったような「実力を隠さなければならない何らかの理由」を必ず持っています。
つまり、この物語の主人公をつくるには①主人公の本当の実力、②本当の実力を隠している普段の姿、③本当の実力を隠す理由の3つの要素を設定しましょう。

合わせて、「敵」も設定してください。この敵は一見最強の力を持つ存在であり、登場人物たちの中でこの敵にかなう人物はいません(主人公を除いては)。この「敵」は、中途半端な強さではなく、文字通り最強の力を持つ恐ろしい強敵を設定してください。
そんな最強の敵が、なんと誰よりも弱そうな主人公にボコボコにやられるのです。
なお、トラブルシューティング(事件、問題解決)のストーリーの場合では、「誰もかなわない強敵」ではなく「誰も解決できない大問題、大事件、難問」となり、それを主人公が隠していた本当の実力で解決する形になります。この場合は「敵」ではなく、解決すべき「大問題、大事件、難題」がどんなものかを設定してください。

この「じつは強かった」の物語では、ドラマの中心にいるのはじつは主人公ではないことが多いです。
ドラマの中心には、主人公とは別に「中心人物」というゲスト主人公がいて、ドラマはその中心人物にまつわるものとして展開していきます。
多くの場合、主人公は中心人物を助けるポジションに位置します。この物語での主人公は「中心人物を助けるキャラクター」なのです。
そんな事件や問題の渦中にいる「中心人物」をどんな人物にするかを、しっかり設定しましょう。

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この「じつは強かった」について、さらにお知りになりたいという方は拙著『ストーリータイプコレクション[3]「バトル/トラブルシューティング編(下)」3種 「プロット力」向上トレーニング』にて、くわしく解説されています。
今回ご紹介した「じつは強かった」の特徴や作成のコツ、そしてこのストーリータイプの物語を組み立てるうえで土台として使える汎用プロットテンプレート「ストーリーフレーム」も収録しています。
ご興味のある方は、ぜひ合わせてご一読ください。


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