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【さよなら大好きな人〜Episode 3〜】

21歳のとき、ベトナムへ日本語教師として派遣された私は、

最高にピュアな恋をした。

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ベトナムの朝は早い。

日本の大学はたいていは朝9:00から一限目が始まる。

だが、

ベトナムの始業は朝7:00だ。


ベトナムでは先生な私は、遅刻するわけにはいかない。


眠い目をこすり、寮を後にし教室へ向かった。

すると、

"Hey, YUI!"

と、小柄な女の子に声をかけられた。


覚えのある顔だった。


彼女との出会いは先週のこと。

のび太が、

「僕の妹代わりの女の子に会って」


と、その子の家にお邪魔した。


彼女とのび太は2歳違いで、故郷が同じでハノイに出てきた。

すごく仲が良くて本当の兄妹みたいだった。

彼女は英語科で、すごく気さくな女の子。

でも、なぜ私が教えている大学にいるんだろう?

聞けば、彼女は、私が教えていた大学の生徒だったらしい。

私は日本語学科なので直接の生徒じゃないが、素敵な偶然だった。


「彼があなたに紹介した友達、みんなあなたに会いたがってる。

それに彼自身もね。

彼はブログであなたの話ばっかり!

彼女といると落ち着くって。

初めて女の子の前で歌なんて歌ったって。

私は彼にとって妹みたいな存在で、

誰にも負けたことなかったけど、あなたには負けちゃったな^^

ちょっとやきもち^^」


胸がちくちく痛い。


嬉しいけど、どっかが痛い。

その日が、彼に会うのが最後の日。


彼がバイクで現れて、

「さぁ、今日は最後の日やから思いっきり遊ぼう!」


と、私は寂しさ押しのけて明るくふるまった。


彼は、いつもよりさらにマヌケな顔で

「最後?そんなはずないよ」と能天気。

人ごみかきわけ公園のベンチに腰掛けて、重いカバンを膝に置く。


「そんな重そうなカバンに何入ってるん?」と聞いてみた。

“僕のカバンにはチキンが入ってる!”


「何言うてんの?んなわけないやん!」と私は真っ向否定。


するとカバンから

黄色い紙で巧みに折られた可愛いチキンの形の折り紙登場。

“Present for you."

彼曰く、これを作るのに4時間費やしたそうな。


何よりその時間が嬉しかった。


彼なりに、「最後」を感じていたんだと思う。

“君の事は絶対忘れない。忘れるなんて不可能だ。”

いつもジョーダンだらけの彼の口調からは想像できない真剣な言葉。

びっくりして


“WOW!”


と、欧米人みたいなリアクションをしてしまった。

何故かそれを彼は

“Why?”

と聞き違え、

“何故かって?聞きたいの?”ときいてきた。

勘違いに便乗しYESと答えてみる私。

“I can't forget you because.....


(君の事を忘れられないのは・・・


I really love you..."

(すごく愛してるから・・・)

いつも、そんな素振りを微塵も今まで感じさせない彼の発言に

度肝を抜かれて言葉がでない。


“I know you will come back to Japan, but ...


but If you come here again..."


(君が日本に帰るのは分かってる。だけど、


もしまたここに帰ってくるのなら...)


その続きを言いかけて首をぶるぶる横に振って茶を濁す。


"What?"


と問えば、“今は言わないほうがいい”と彼。

そこで私は言ってみた。


“You can say it in french. I can't understand,

so you must say easily."

(フランス語でなら言えるやろ?どうせ私には分からんから簡単に言えるはず。)


それを聞いた彼はすらすらフランス語で語りだした。

案の定全く分からんかったけど、

何度も「ジュテーム」(愛してる)


がきこえてきた。

あの時、マイチャウでジョークを言い合った

「ジュテーム」が、今度は気持ちがこもって再び私に届けられるなんて。

切なすぎて胸が痛い。

“分からなかったでしょ?”と、彼。

何も言えず、

私はただ、首を縦に振った。


聞かなくて正解だったのかも。今日でまた、離れてしまう。

そのあと一度だけハグされて、ほっぺにキス。


“Good my friend, good bye my honey."


と残し彼と私は、


いつもの帰り道へ。

バイクにまたがり、ラララと歌って家に向かう。

そんな彼の背中で何故か


「さよなら大好きな人」

を熱唱してしまってた。

“その曲な~に~?”と聞かれるも、


「秘密^^」と答え、今度は私が茶を濁した。


彼は本当はフランス語でなんと言ったんだろう。

最後にもらった手紙には

"I will always miss you and love you"

と書いていた。

それを読んだのは帰国する飛行機の中。


切なさこみ上げ目頭熱い。


これで充分
これで充分
これで充分


また会ったときもいつものようにジョーダン言い合い、笑い会える日が目に浮かぶ。


過去の遠距離恋愛が思ったより私にとっては辛かった。

同じ思いはしたくないし、

させたくない。


あの頃の私には、強くなることができなかった。

このまま友達でいよう。


今はそれが一番だ。


また絶対会えるけど


今だけは


さようなら大好きな人。


To be continued...  

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