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#10 マッチングアプリ体験記「マッチングの全ては顔なのか!?」後半戦

前回の記事は、こちら…。

【 前半戦のハイライト 】

とある秋の日、マッチングアプリで出会った1人の女性、
プロフィールには顔が写ったショットを載せていないにも関わらず、「オシャレそうな雰囲気」「話題が共通した(酒)」ことだけを頼りに、実際にデートに行くこととなった。

待ち合わせ場所ではじめて対面した彼女は、東京ヤクルトスワローズの高津投手と瓜二つ、「高津顔」系女子だった!!!
子供のころから大ファンの高津選手とそっくりな彼女を前にして、その日1日をしっかりと楽しむとを決めたボクは、彼女と共に、お目当ての居酒屋「かねます」へと歩き始めた。

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秋晴れの穏やかな天気のなか、彼女と肩を並べて歩く。
日曜日の午前11時、優しい休日の雰囲気をいっぱいに感じながら、僕はぼんやりと考えていた。

―― 恋愛において、ルックスはどれほど重要なのだろうか?? ――

マッチングアプリでは、マッチングするかどうかはルックス(=プロフィールの画像)によるところが非常に大きいのは明白だ。

相手に興味を持つかどうか、相手を知りたいと思うキッカケは、ボクの所感だと8割~9割はルックスなのではないだろうか?

しかし、リアルの出会いの中では、ルックス以外の入り口を経由してカップルになる人たちが沢山いた。

「足が速い」
「たまたま家が近かった」
「幼なじみ」
「偶然の再開」

本当に何気ないことだが、そんなキッカケの中で関係性が深まり、心が通い、互いに自然と魅かれあっていく・・・、そんな素敵な出会いが沢山あったことを思い出していた。

それなのにボクは、相手のころをろくに知りもしないで、ルックスだけで「イイネ」「イカンネ」を判断をしようとしている。

ひょっとしたらマッチングアプリをやるなかで、心に「外道」という怪物を育ててしまっていたのではないか??

いかん!いかん!

出会いに貪欲になるばかり、人として大切なことを忘れかけてたと猛省し、改めて今日を楽しむことを決めたと同時に、もう一つの疑問が頭に浮かんだ。

―― なぜマッチングアプリで、顔を出さないんだろうか?? ――

男性はマッチングアプリをする上で、プロフィールを完全に仕上げないことにはマッチングをする確率はかなり低い。
「0%」といっても過言ではないと思う。

プロフィールの写真はとうぜん顔を出し、愛嬌のある笑顔から、ハツラツとした趣味の写真、何かに没頭する誠実そうな顔など、色んな自分を見せてマッチングを勝ち取っていく。

そうでもしないと、マッチングはしない!

生半可な気持ちでマッチングをした男など、この世に一人もいない!

身を削って、血の汗を流し、男はマッチングアプリをしている!

「マッチングアプリで顔を出さない」というのは百歩譲っていいとしよう。
色々と物騒な世の中であり、特に女性は、必要以上に気を付けた方がいいとボクも思う。

しかし、仮にマッチングをして、これからお会いするって相手に、何で自分の顔も見せずに会いにいけるんだ!!!
「会えさえすれば何とかなる」って思ってるパターン??
それさ、男が言う「終電さえ逃しちまえばこっちのもん」ってのと一緒じゃないか・・・。
なんなんだよ、どえらい発想してんな!


「ポジ」「ネガ」と2つの想いが、ボクの頭ではせめぎあっていた。
その想いは徐々に混ざり合い、「甘い」「しょっぱい」の奇跡のハーモニーを生み出した「ぽたぽた焼き」のように、どっちにもつかず溶けていった。

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【 第二戦 ~月島でもんじゃ~ 】

11時開店の「かねます」だが、11時10分ころの到着で、すでに店内は満員だった。
開店10分後ということもあり、次の席があくまでしばらくかかりそうだったため、月島のもんじゃ焼き屋で一杯やろうとなった。

良いことか悪いことか、ボクはこの時点にして「相手とどうなろう」と全く思っていなかったので、まるで緊張をしていなかった。

彼女とはもんじゃ焼きをつつきながら、お店の店員さん含めて、何気ない会話で盛り上がる。
ボクはマッチングしたお相手に、パーソナルな質問は極力せずに、普通の雑談をするようにしているのだが、彼女もその点は違和感なく、2杯ほどビールを飲んで、店を出た。

【 第三戦 ~かねますで穴きゅう~ 】

12時頃にまた「かねます」を再訪。
ちょうど二人分のスペースが空いており、何とか入店が出来た。

カウンターの中には、男性が二人。
「渋いオヤジ」というか、彼らの雰囲気でこの店の良さはすぐに分かった。

瓶ビールを頼み、「穴きゅう」「マグロブツ」を注文。
本日お目当ての「うにく」はウニが上がらなかったらしく、その日は食べることが出来なかった。

元々は彼女がお目当ての居酒屋だったことから、分かりやすくはしゃいでいた。
本来であれば、はしゃぐ女子ほど可愛いものはなくって、「はしゃぎすぎ!はしゃぎすぎ!」なんて、からかいたいシーンではあるのですが、クールにボクは彼女のコップにビールを注いだ。

注文したメニューは、どれも大当たり、別の客が頼んでいるのも、どれも美味しそうで、それはそれでご機嫌な私であったが、ひとつ気になることがあった。
その彼女は、メニューが運ばれてくるたびに「写真撮ろー」と言い、瓶ビールとセットで、そのおつまみたちの写真を撮るのだ。

「もんじゃ焼き屋でも撮ってたなあ」と思いながら、特に気にも留めなかった。
しかし、静かな立ち飲み屋で響き渡るシャッター音は、あまり良いBGMとは言えない感じがした。

「かねます」では1時間ほど飲み、本当に大満足であった。
「今度は絶対に別の子と来よう・・・」と誓いながら、店を後にした。

その時点で午後2時頃だったと思うが、彼女はだいぶ出来上がっていた。
口調は少し下っ足らずになり、ボクの方に肩を預けてくる。

本来であれば、そのまま肩を抱いて、静かなところに行くシーンではあるのですが、ボクは「女を知らない」男のように、身体をカチコチに凍らせて、「美味しかったですね」と言った。

彼女は「美味しいビール、飲みにいこっ♩」と、ボクの手を引き、銀座方面へ歩き出した。
字面だけ見たらCMのような、満島ひかりさんとかに言われたら、「散歩に行く?」って言われたときのワンちゃんみたいに、尻尾振って付いていくのに。
もちろん「行きましょうか」と彼女に付いていきましたが、ここで終えるのが調度いいような気がしていた。

【 第四戦 ~銀座で黒ラベルバー~ 】

ボクの手を引いて、彼女が向かった先は、銀座駅からそのまま直結の黒ラベルバーだった。
なんでも「完璧な生」が飲めて、とんでもなく美味しいんだって。

カウンターだけの店内、ビールを注ぐスタッフのことを彼女は「今ビールをついでくれているのが、店長の〇〇さん!神だよ!」ってボクに耳打ちした。

ああ、なるほど、この子、このタイプか・・・。

「いや、しらねぇ」をグッと飲み込んで、「そうなんだ、すごい人なんだね!」と笑顔で返す。
そして、その店長の〇〇さんに注いでいただいたビールで、先ほど飲み込んだ「いや、しらねぇ」を、しっかりと腸の奥底まで流し込んだ。
ビールは確かにキメの細かな泡、本当に美味しかった。

ボクがビールを堪能しているその傍らで、カウンターで隣に座るカップルと彼女が話し始めた。

「えっ、お2人はよく来られるんですか??」
「えっ、ご関係はカップルですか??」
「ええー、お医者さんと看護師なんですね!!」

本来であれば、カップル同士の相席、「なんか面白そうだし、ここじゃなくてどっか4人で飲み行っちゃいます??」なんてシーンではあるのですが、ボクはこのカップルに、彼女とボクがマッチングアプリでマッチングしたと思われたくなかったので、口元だけはにこやかに笑いながら、目線は正面を向いて、嘘みたいな愛想笑いを続けた。

彼女の距離感のつめ方に、逆にあちらが違和感を覚えたようで、「じゃあ私たちそろそろ・・・」と言ったところで、彼女は「えっ!せっかくなんでLINE交換しましょうよ!!」と、とんでもない提案をしだした。

その時にはじめて相手方のカップルと、ボクの目がぴったりと合った。

「お前何とかしろよ」という相手の視線を、完全に無視し、ボクは残りのビールを飲みほした。

ビールを飲み干したとこで、「じゃあ僕らもそろそろ行こっか・・・」と店を出て、駅の改札に向かって歩いていたのだが、彼女の腕は縛り上げるように、ボクの腕に絡んでいる。

お互いに改札を通ったのだが、連れられるがまま、気付いたら新橋にいた。

【 第五戦 ~ニュー新橋ビルで秩父~ 】

もう記憶もおぼろげだ。
酔っぱらっていたとかじゃない、脳が忘れさせようとしている。

ニュー新橋ビルのB1の千島秩父という居酒屋へ入った。

ひとつ覚えているのは、そこで彼女が「実はバツイチ」だとカミングアウトをしたこと。

ここまで来て、「バツイチ」だろうが何だろうが、何とも思わないし、悪いこととも、珍しいこととも思わない。
それに決して「バツイチ」だからって、申告しなくてはいけないルールなんてないと思う。

それに加えて、彼女への恋愛感情は全くなかったので、すごい適当な「へー」が口から出そうになったが、ビールでしっかりと流し込み、「そうなんですね」って、やや驚いたように言った。

そして、その後に彼女は、テーブルに突っ伏したまま、寝てた。


あれ、置いてっていいかな???


お店の女将さんの気の毒そうな視線、目が合った瞬間に優しい苦笑いをしてくれた。

10分くらい寝かしてから、「帰りましょう」と彼女を起こして、すぐに解散をした。

逃げるように乗り込んだ電車でマッチングアプリを開き、そっと彼女をブロックした。

そして、高津監督を思い出しながら心で叫んだ

「全然大丈夫じゃなかったんですけどー!!!」

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