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【和訳】OZONE PHOTONレビュー(EN-C)

XC Magazine Photonレビュー記事(2023年6月)のWEB版より。

https://xcmag.com/paraglider-reviews/ozone-photon-review-en-c/

Photonは、このスポーツで最も秘匿された情報かもしれない。
フォールディングラインのルールが変更されEN-Cクラスでの2ライナーが解禁されて間もなく、フォーラムではOzoneがどんなグライダーを出してくるかの話題が盛り上がった。
2009年当時、黎明期のHPPで2ライナーによって革命を起こしたメーカーの動向をみな楽しみにしていたのだ。

Ozoneは2023年3月のStubaiカップでのPhotonお披露目をアナウンス。
私はそこで試乗し、翌月、製品版が到着した。

開封

製品版のグライダーはOzoneの軽量チューブバッグに入れられ、エアピローと2本のダンボールチューブが差し込まれていた。
そう、キャノピーには沢山のプラスチック製バテンが入っており、きつく曲げないように注意しなくてはならない。
このクラスの別機種と同様、ハーネスをくるむといった収納方法もある。

Ozoneは、Photonを「コンペティションクラス並みの性能を持つ」スポーツクラス2ライナーとしている。
曰く、「従来の3ライナーと、Zeno2のような高性能機との間にある隔たりを埋めるもの」だと。

展開アスペクトシオは6.5で、原稿のEN-C Delta/Alpina(共にAR 6.0)よりも高い。
アスペクトレシオ6.5はAirDesign Volt4やNiviuk Artik Rと同じで、Gin Bonanza3やDrift Merlin、Skywalk Mintよりもわずかに低く、Swing Libra RSの6.9よりも低い。

(ライザーの写真)
ライザーセット 2ライナーへようこそ

デザインと構造

Photonのセル数は71とEN-C・2ライナーでは最も多く、セルを小さくすることでバルーニングを抑え、エアロフォイルより美しく仕上げている。
リーディングエッジは、コードの後部近くまで伸びたプラスチック製のバテンで支えられている。もちろんシャークノーズだ。
エアインテークにはOzone御用達のGストリングも張られており、加速時の振動を抑えることでエアロフォイルの形状を保つ。

グライダーを頭上に立ち上げると、深いアークに気づくだろう。
Ozoneによれば、これによりハンドリングが向上し、コラップスに対する反応も良くなるとのこと。
もう一つの特徴は、上面のウイングレットだ。
デザイナーのLuc Armantは、ディープスパイラルからの離脱動作を和らげる安全装置だと話してくれた。
さらに、「ロールダンピング効果により、経験の少ないパイロットでもヨー/ロールのコントロールがしやすくなる」とのこと。

(ライザーの写真②)
フローティング・アウターAライン

素材

Photonは準軽量仕様で、上面にDominico D20、下面にPorcher 27シングルコートが採用されている。
セル数が多く内部構造が複雑なため、軽いわけではないが、それでもMLサイズで5kgと同サイズのDelta4よりも300g軽い。

お察しの通りライン被膜は無いが、明るい色のラインはテイクオフでのチェックも簡単だ。
キャノピー近くのラインはデンタルフロスのように極細なので、植物に絡まないようにしたいところ。

キャノピー中央部のA、Bラインは4点で取り付けられている。ラインレイアウトはZeno2とほぼ同じで、まさしく2ライナーだ。
翼端部の取り付けポイントは少ない。エアインテークのすぐ内側には、SIV用にフォールディング・ラインの取り付けポイントもある。

ライザーは細く滑らかだ。リアライザー・ハンドルはかなり大型の木製ハンドルで、テイクオフ前には何か絡んでいないか確認した方がいい。
ブレークトグルはOzone新型のネオプレーン製のもので、ライザーには溝付きマグネットで取り付けられるようになっている。
ブレークのスイベルも採用され、ラインの捻じれを防止してくれる。

アウターAラインはダイニーマライザーに取り付けられており、スピードバーに対してキャノピー中央部分と翼端部で可動域が異なる設計。
Bラインには予めループが設けられており、必要に応じてグライダーのトリムを再調整するのに役立つ。
Ozoneは飛行時間50時間でトリムをチェックを、150時間でライン交換を推奨している。
スピードバーはブランメルフックで取り付ける。

【リアライザー・ハンドルの写真】
大型の木製ハンドルとブレーク・クリップ

テイクオフ

最初のフライトは無風のスキー場斜面で、エアインテークの小ささから、お尻で滑り降りてしまうのではないかと思った。しかし、無用な心配だった。
フロントテイイクオフできれいに立ち上がり、翼端を引きすぎても簡単にテイクオフできた。

その後のテイクオフは微風~強風で、すべてリバースで行った。
強風でも滑らかに立ち上がり、何も難しいことはなかった。
横に持ってくれば、頭上を越えるのは簡単だ。
頭上に持ってくれば、あとは飛び立つばかりで待っていてくれる。

空中

空中では安心して飛ばせる。ピッチ安定は良く、前へのピッチングはあまりなく、むしろリフトに上手く乗れる。
GTO Light2とエア・プロテクションでの装備重量は102kg強で、もう少しウェイトシフトが効くようにノーマル・プロテクションに戻したかったが、天候により時間切れとなってしまった。

フォーラムではPhotonはタイトに回らないという話もあったが、バンクは問題なく掛けられて、特にウェイトシフトも加えればなおさらだった。
180°旋回の導入においては、あまりきつく操作すると挙動が落ち着く前にダイブすることがあった。導入は緩やかにして、旋回させてから絞るのが良さそうだ。

ブレークは間違いなくラップして飛ばす設計で、そうしていないパイロットは慣れるのに時間が掛かるだろう。私は数時間後には馴染んでいた。
ブレークの引き代は長く、翼端が失速するほど大きく引くと、十分な予兆を見せたうえで後退し始める。

一度サーマルに入ると、必要な操作は驚くほど少ない。コンバージェンスによる強いリフトで小さく回すことも何度かあったが、ソリッドな操作感でこぼれることはなかった。

上限近くで乗ってもクライムレートは良好だった。
5月にはKrusheboのスポーツクラス大会で3つのタスクを飛んだが、集団の中でも良い上がり方だった。
アスペクトレシオがやや低いGin Bonanza3(ワールドカップパイロットが搭乗)が期待通りわずかに優位に立っていたが、Photonはそれに匹敵している。

フィードバックは、このレベルのグライダーとしては驚くほどスムーズだ。決して激しすぎることはなく、コントロール下で動かすことができる。
退屈に感じる人もいるかもしれないが、これはレースで長距離を飛ぶためのグライダーだ。操作に注意を割かれない分、意思決定に集中できる。

2ライナーらしく、旋回中はリアライザーによる外翼操作も有効だ。特に広く穏やかなサーマルで、滑空効率を最大限活かしたいときに役立つ。
トリムスピードでのBハンドルはかなり重いが、ダイレクトに作用してコントロールしやすい。

【翼端の写真】
ランディング用のフラップ:ブレーク引いた後縁の鋭い折れ目に注目

グライド

グライドは、まるでレールに乗っているのようだ。
ウイングレットのおかげか、私のように比較的軽いハーネスでも、ロールとヨーのコントロールがしやすくなっている。
グライド中に効いているようで、他のグライダーに見られうような小さな動きはほとんどない。

スピードバーは軽く、使いやすい。踏み込むとリアハンドルが軽くなる。
キャノピーコントロールに有効で、空気の状態をよくフィードバックしてくれる。
リーディングエッジは、ファイナルグライドでの時速を数キロ稼ぐためにBを押し上げているときでさえも、全速度域でプレシャーを保っているように感じられる。
トリムからフルバーでは18km/hの加速を計測した。プレッシャーが抜けると即座に反応し、Bを通してエアロフォイルを直接的に感じられる。

安全性

11時間のフライトで一度だけ翼端がパタついたが、見る暇もないものだった。翼端は固く感じ、コラップスも伝播しなかった、

ビッグイヤーはアウターAで可能だが、かなり重い。一度引き込むと安定し、スピードバーと組み合わせて使える。リリースの際は何度かポンピングが必要だ。
アウターBを引き込むことで、B3も可能。これは効果的で、リリー時の引っかかりも少ないようだ。

最近、ゴール上空でのスパイラルは嫌がられている(トラッキングシステムのアラームが作動するらしい)が、フリーフライトでのスパイラルはコントロールしやすかった。ウイングレットが離脱をスムーズにしているようだ。
最大限ダイナミックなフィーリングを持つタイプのグライダーではないかもしれないが、大きくなウイングオーバーも容易で、エネルギーを滑らかに保持してくれる。

結論

Photonは、紛れもなくスポーツクラス最強のレーシングマシンであり、長時間のXCフライトのために造られている。(5月22日、スイスにてDominik Wickiが卸したてのPhotonで300kmのフラット・トライアングルを達成し、それを証明した。)
安心感のある乗り心地は、快適で疲れを感じさせない。

性能の数値化は常に難しいものだが、私がSRSで一緒に飛んでいた他のグライダーと比較しても、間違いなくその性能を発揮している。
最速とまではいかないかもしれないが、全速度域を使用可能で危なげがない。

ハンドリングは、性能を引き出すのに数時間を要するが、慣れてしまえば素晴らしいクライム性能とスピードで、ビッグXCフライトやタスク制覇の武器となるだろう。

メーカー注釈

Ozone曰く「Photonは経験豊富なスポーツクラス・パイロットにコンペティション・クラス並みの性能をもたらします。Ozoneの2ライナー・ノウハウのすべてを注いだグライダーです。」
用途:XCおよびスポーツクラス・コンペティション
パイロットレベル:スポーツクラス・パイロット以上
【スペック省略】

Marcus(原文筆者)はPhoton MLサイズ(90-105kg)を、南フランス・アルプスと北マケドニアにおいて102-103kgでフライト。ハーネスはWoody Valley GTO Light2とエア・プロテクションを使用。

XC Magazine 241号(2023年6月)掲載

あとがき

色々あるけど後日。

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