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売上原価に含まれる固定費

損益分岐点を計算したり、目標売上高を算出するときには、費用を変動費と固定費に分けます。この変動費の代表的なものが売上原価です。通常、売上原価は売上数量に比例して増減しますので、変動費で問題はありません。

しかし、業種によっては売上原価の中に固定費が含まれていることがあります。その場合には、売上原価の金額をそのまま変動費としてしまっては、その後の計算に大きく誤りが生じます。

さて、売上原価に固定費が含まれる場合とはどのようなときなのでしょうか?

製造原価報告書が作成されているときは要注意

業種によっては製造原価報告書という決算書が作られていることがあります。名称からもわかるように、主に製造業や建設業の場合です。なお、その他の業種であっても顧問税理士によっては製造原価報告書を作成している場合があるかもしれません。

いずれにしても製造原価報告書がある場合には、売上原価に固定費が含まれてしまうので注意しなければなりません。これは、会計基準どおりに経理をしていれば、自動的にそのようになるので誤りというわけではありません。ところが会計基準は利害関係者(主に債権者や投資家)に向けての決算報告をするためのルールです。このため、利害関係者への報告が不要な中小企業では、会計基準に準拠した決算書を用いると、経営判断を誤ることがあるのです。

製造原価報告書から固定費を除外する

では、製造原価報告書に含まれている固定費とは何かですが、大きく次の2種類です。
・労務費
・経費

会計の理論では、上記の経費は製造量に合わせて各製品に按分されます。そしてその製品が売れれば売上原価となり、売れずに翌期に持ち越されれば製品として計上されます。売れた分だけ費用になるのだから、変動費で良いような気もします。

しかし、よくよく考えてみると、労務費は売上や生産があろうがなかろうが毎月固定で発生します(残業代やパート・アルバイト給与は若干違いますが、大きな影響はないことがほとんどです)。経費も水道光熱費や家賃等ですので、これも売上や生産とは無関係に発生します。

つまり、労務費と経費は実は固定費なのです。したがって、正しい変動費を集計するためには、売上原価から労務費と経費の合計を引く必要があります。また、引いた分は固定費に足すことで全体の損益も一致します。

終わりに

売上総利益率が年によって大きく変動している場合、それは売上原価に含まれる固定費が影響しています。これでは、販売利益が良くなっているのか悪くなっているのかがよくわかりません。

変動費と固定費を分けるときには、機械的に分ければ良いというものではないのです。

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