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運転資金が不足する原因~その1~

運転資金は会社にとっての血液です。これが不足すれば会社は身動きがとれなくなり、受注や売上があろうとも突然死(倒産)してしまうことにもなります。

運転資金が不足する原因はいくつかありますが、ここでは、経営者が覚えておきたい典型的な原因について解説します。

運転資金とは何か?

その前に、運転資金とはなにかについて説明します。運転資金とは会社を経営していく中で日々必要となる資金のことです。例えば、材料や商品を仕入、従業員の給料、その他の経費等が該当します。なお、設備投資の資金は運転資金には含まれません。設備投資資金以外は運転資金だと思ってもらっても結構です。

運転資金は仕入等で支出することで減少しますが、売上が上がり、その代金を回収することによって増加します。

運転資金は売上が増えると減少する

先ほど、運転資金は売上代金を回収することで増加すると書きました。それなのに、売上が増えると減少するとはどういうことでしょうか?最初は意味がわからないかもしれませんが、経営者であればこのことを理解しておかないと、常に資金繰りに苦しむことになります。

売上が増えると運転資金が減少する理由は、販売代金の回収が仕入代金の支払よりも遅れるからです。運転資金を増やすのは、売上ではなく代金の回収です。売上のタイミングと代金回収のタイミングにずれがあるから、運転資金が足りなくなるのです。このことを、単純な例で見てみましょう。

シンプルな商品販売業の運転資金シミュレーション

商品を仕入れて販売するだけのシンプルな事業を考えてみましょう。お客さんに商品を販売するために、あらかじめ在庫を100万円分仕入れておきます。仕入は1月に行い、代金の支払は2月末とします。そして2月にお客さんが商品を120万円で購入し、その代金は3月末に回収できるとします。

この場合、2月末には100万円がなくなり、手元に戻ってくるのは3月末になります。つまり1ヶ月の間は100万円分の資金が使えない状態なのです。

では、社長の営業が功を奏し、一月に1000万円の商品が売れるようになったとしましょう。1月に仕入れ、2月末に1000万円を支払います。2月に1200万円ですべて売れて3月末に代金を回収できるという条件は同じとします。するとどうでしょうか?2月末には1000万円がなくなり、手元に戻ってくるのは3月末です。この1ヶ月間は、売上に相当する1000万円分の資金が使えない状態です。

売上が100万円のときに比べると、売上が1000万円の方が、より多くの金額が一時的とはいえ手元にない状態になります。これが売上が増加して運転資金が減少しているということなのです。

実際のビジネスでも同じことが起きている

実際のビジネスにおいては事情はもう少し複雑になりますが、資金の動き方は、支払が先、回収が後になる場合が多いのです。そうすると、先ほどの例と同じことが常に起きていることになります。

このような会社では売上を伸ばせば伸ばすほど、資金が足りない状態になってしまいます。しかし、そのことを経営者が知らないと、会社には資金があるものだと思って、設備投資をしたり、経費を多く使ったりしてしまいかねません。そうなると、さらに運転資金が足りなくなり、資金繰りが苦しい状態をいつになっても脱することができないのです。


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