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萬御悩解決致〼 第三話④

 もうすぐ夏季大会の予選が始まる。土曜日は調整の練習試合の予定だった。が、朝から雨。練習試合は順延となる。
 それを待ち構えていたように電話が鳴った。圭介からだった。
ーーいいかげん、LINEで繋がらないか。
ーーいやだ。だいたい、おまえと俺で何のやり取りをするんだ。
ーー確かに。それもそうだな。
ははは、と圭介が笑う。
ーー何の用だ。
ーー練習は休みだろう。
ーーそうだ。
ーー仔猫を届けるのにつきあわないか。
ーー付き合うって、おまえも付いてくのか。
ーー無論だ。女子たちだけでは行かせられない。
ーー女子たちって?
ーーああ、奈央も行く。
ーーていうか、翔子の父ちゃんが車で送るんじゃなかったのか。
ーーお父さんは休日出勤なんだ。サラリーマンは大変だな。
それで翔子ちゃんは奈央について来てもらえないか打診して、奈央は快諾したんだ。
ーー母ちゃんは行かないのか。
ーー父子家庭だ。
ーーあ。そうなのか。それはわかったが、でも何でおまえがついて行く?
ーー実はミーが心配でさっき電話したんだ。
ーーミー? ああ猫か。おまえ、勝手に名前までつけちゃったの?
ーーちなみに、うちのピットブルは名前。
ーーどうでもいいよ。
ーーそれで、ついて行くことになった。
ーーああ、わけわからんが、じゃ、気をつけて。
ーー三人だけで行かすつもりか。おまえも来るんだよ。
ーーなんで、俺が行くんだよ。だいたい仔猫一匹に四人も付いてくなんて変だろ。
ーー奈央も行くんだぞ。
ーーうるさい。その手にのるか。今まで何回面倒ごとに引き摺り込まれたと思ってる。それに、今日の練習試合が順延で明日になった。今日は体を休める。
ーーいいのか。奈央たちは傷つくぞ。
ーー俺が行かないからか。
ーー違う。知ってしまえば、傷つくということだ。

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