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萬御悩解決致〼 第一話④

「先生は知ってんのか」
「知ってるわ。ショックを受けた楓は担任に相談した。相良は相談室に呼ばれて、お説教された。でも、それだけ。次の日から普通の相良よ。だってあたしたちも、そんなことがあったなんて気づかなかったしね。楓はもとから大人しい子だし。公にするようなことでもないし」
「反省の色、ゼロか」
「相良たちにしたら、思い付きの単なるゲームだったのよ。もうしません、ごめんなさいで終わり。でも、楓にしたら、相良に好きだって言ってしまったこと、気持ちをもて遊ばれたこと、みんなに知られたらたまらなく恥ずかしいこと、いつバレて笑われるかわからないこと、自分がなんて馬鹿だったんだってこと。いろんな気持ちでいっぱいになったんだろうね。気がついたら、リストカットしてたって。このことは、まだ、親も先生も知らない」
「楓ちゃんは、誰かさんみたいに、なんでも笑い飛ばせるような性格じゃないからな」
 また、余計なことを圭介が。ほんとコイツは。
「で、楓ちゃんを慰めて帰してから、僕たち思ったんだよね。これはこのままにしてはおけないってさ」
 ね、と奈央に同意を求める。真剣にうなずく奈央を見て、なぜか圭介への嫌悪感がいっそう募る。「僕たち」が特に気に障る。
「このままにって、どうすんのさ」
「お、し、お、き」と奈央。
「せねばなるまいて」と圭介。
二人が俺を見つめる。
「で、なんで俺?」

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