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【物語】砂の上のマミー (#2旅路)

旅の様子


 使者に選ばれたのは、宇婆左(ウバサ)という名の、熟練した鳥使いの男。
 彼に付き従い、テゴナとコマロの少女二人は生まれて初めて邦を出た。
 三人は、行く先々で金目の巨鳥のことを尋ね、人々が指さした方角へ旅を続ける。異国の町を抜け、森を抜け、草原を抜け、山越えをする。
 厳しい旅路だが、少女二人には見るもの聞くもの全てが珍しい。何よりも本物の夜と、天空に浮かぶ月と星とに魅了される。
 夜になるとウバサは火をおこし、三人は固いパンと干した肉や果物を食べた。
 食べ終われば、テゴナが歌い、コマロが踊る。二人は唄と踊りが達者だ。テゴナは煙草を呑む。各々が革の寝袋に入って寝るまで、そうして時を過ごした。


本物の世天と天体を見て大喜び。

バザール


 そんな旅が三ヵ月も続いた頃、
「その鳥なら、あっちから飛んできたよ」
 土地の人々に指さされた先には、地平線の果てまで砂漠が続いていた。
 そこは賑やかな町だ。砂漠の向こうから来たキャラバン隊が持ち込んだ異国の珍しい品々を商人が仕入れ、露店をだして売っている。その品を求めて、遠方から人が沢山訪れた。
「砂漠を行くには特別の用意が必要だ」
 少女二人はウバサから、食料や幾つもの品物を調達するよう命じられ、 どこまでも続く露店を片っ端から覗き込む。
 銀やニッケルの美しい装飾品、シロップがかけられた揚げ菓子、瑞々しい果物、串に刺して焼いた肉料理、玩具など、人の心を魅了する品々が並んでいる。
 つい、ひとつ。ふたつと、二人は買い食いをし、余計な物を買ってしまう。

少女たちは皆を魅了する

 
 気がついた時には、ウバサから預けられたお金を使い果たしていた。
「困ったわ。どうしよう」
 その時、近くのナツメヤシに小鳥が一羽止まった。
 鳥使いはどんな時でも鳥笛を首にかけている。テゴナが鳥笛を吹きだすと、小鳥は美しい声で囀り、次々とその仲間が集まってきた。
「うふふっ」
 コマロが楽しくなって踊りだした。踊りながら、彼女も笛を吹き、そして歌う。
 少女二人の周囲には、小鳥だけでなく、人々が集まった。皆、異国の少女たちのみごとな音楽と踊りに喜び、お金を投げた。
 集まったのは、ウバサから預かった以上の硬貨の数々。
「よかったわ。これで金目の巨鳥が飛んできた所へ行けるわね」
 そうコマロがテゴナに言った時、
「もし、金色の目の大きな鳥をご存じで?」
 二人が振り向くと、青白い肌に金色の長い髪をした若い女性がいた。

彼女は初めて見るような美しさだった。

                             
                             (つづく)

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