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"Jリーグ17万人無料招待"の活用アイデアをファンベース視点で考えてみる


いよいよ、今週の金曜日からJリーグの2024シーズンが始まる。
自分は、開幕以来ずっと浦和レッズのサポーターでシーズンチケットも27年目。この時期になると毎年、ワクワクドキドキしすぎて落ち着かない。

そんな、2024年のJリーグだが、サポーター的にちょっぴり引っ掛かることもある。

それが、こちらの案内…



開幕・春休みはJリーグへ遊びに行こう

抽選で17万名様無料ご招待! \ 2024シーズンも、スタジアム観戦に興味はあるがまだ来場したことがないお客様や、久しぶりに来場される方を対象に、全国で合計約170,000名様を無料でご招待いたします



昨年も行っていた、大規模無料招待を今年もリーグ主導で行うらしい。


この無料招待については、しっかりと施策理由があるらしく、リーグ側で2023年度の「to Cマーケティング戦略」では、このように語られていた。


「Jリーグへの興味・関心度の向上」に取り組んでいく方針を示した。昨季はコロナ禍明けに伴う集客数の回復を目指し、スタジアムから足が遠のいた人々の復帰やスタジアム未体験者の獲得に重点を置いていたが、さらに関心を呼び起こしていく必要性が浮き彫りとなったという。

 Jリーグへの高関心層の割合は21年8月から昨年6月にかけて17.4%から15.5%に1.9ポイント低下。閉幕時期の昨年11月には16.9%に一時持ち直したものの、おおむね低下〜横ばい傾向となっており、「このままターゲットのユーザー転換のみを推進し、関心度が下がり続ければ、ターゲット層が枯渇しかねない」という結論に至った。

 そこでJリーグは今季、JリーグIDの新規登録や新規来場者の確保に引き続き取り組みつつ、Jリーグへの興味関心への醸成にフォーカスする方針。テレビ応援番組などを通じたローカル露出、デジタルメディアを活用した首都圏・関西圏の露出を強化し、そこに30周年プロジェクトも活用していくという。また今季からJリーグ職員に各担当クラブを割り当て、集客、SNS活用、調査・分析、チケッティング、学習プログラム、システム開発などで支援ができる体制を整えている。


いわゆるファネル型のマーケティング手法を使っているのだろう。

ファネルには「漏斗(ろうと・じょうご)」という意味があり、その形状を生活者の購買のプロセスに当てはめたものをファネル型マーケティングと呼ぶ。見込み顧客に対して、興味、感心、検討、購入、リピートみたいに入口は大きくして、段階ごとにだんだん顧客が減っていき、最終的に残った人ロイヤル顧客となっていく。最初のアプローチ(メディア露出、大規模キャンペーン)が多ければ多いほど、最終的に残る人も増えていく考え方でもある。


Jリーグで言えば、見込み顧客を設定し、その方たちに観戦機会を与えることで、新しいファン・サポーターになってもらえることにつながると考えているのだろう。もちろんその段階の中で離脱する人も多いのだろうが、最終的に残る人のパーセントも見えてきて、一定の効果も出ているのだろう。リーグにとっても各クラブにとっても、いい取り組みであることに違いない。


でも、なにかが引っ掛かる。

それは、このやり方が数字だけを追っかけていて、いちばん大切なファンやサポーターの感情や熱量というものを、あまり重要視しているように見えないところだ。


もしかしたら、もっと工夫ができるかもしれないし、もっといい方法もあるのかもしれない。

そこで今回は、無料招待のメリット、デメリットを洗い出し、どのようなカタチで無料招待をしていけばよりよいのかを前向きに考えていくことにする。



1.無料招待のメリット

❶新規の観客にスタジアムで観戦をしてもらえる。

海外で活躍している日本人選手や一昨年のワールドカップ、今年の夏のパリ五輪などによってサッカーに興味を持った人も多くいる。この方々を国内のリーグにも興味を持って観てもらうことで、新しいファン・サポーターを獲得できるのではないだろうか。
また、過去に観戦経験がある方も、これを機に再度観戦をしてもらえるかもしれない。


❷来場者数が増え、満員のスタジアムで盛り上がることができる。

現状ではスタジアムを満員にできないクラブは多いと思う。
無料招待をすることで、満員かそれに近いスタジアムを作りだすことができるかもしれない。

そうすれば、クラブやリーグとしても観客動員数も増えることになるし、プレーする選手たちも嬉しいだろうし、気持ちよくプレーできるだろう。
観客が増えれば広告の露出なども増えることになり、結果としてスポンサー企業を集めやすくなるかもしれない。


❸JリーグID登録者数が増え、多くの方に情報を伝えることができる。

Jリーグの戦略では、JリーグIDの登録者数を増やすことを明確にし増している。

JリーグIDを登録してもらえれば、リーグ側から様々な情報をつながっている人に送ることができる。登録数は定量的な成果として現れるので、今回のキャンペーンのKPI(重要達成度指標)としても使うことができる。
企画を考え進めていく上ではとても大事なことなのだろう。



2.無料招待のデメリット

❶ライトな観客が増えて、相対的にスタジアムの熱量が低めになる。

今回の招待チケットは、席種もバラバラに設定されている。
熱い応援をする座席も含まれていたりもする。
初めての方が、このような座席に入ることは応援の熱を薄めることにつながるかもしれない。
スタジアムに観客は多いけれど熱量はそこまでになっていないという状況が発生する可能性がありえるのである。


❷既にチケットを購入しているファン・サポーターがいる。

既に試合のチケットを購入しているファン・サポーターは多いと思う。また、年間シートなどを購入している熱量の高いサポーターも多い。
同じ座席が後出しで、しかも無料で配布されるということを知って、この方たちはどう思うだろうか。

もしかしたら損をしてしまったと思うかもしれない。普段から支えてくれているファン・サポーターをガッカリさせてしまうことはキャンペーンの設計としていいものなのだろうか。


❸無料で観戦をした人が、その後に有料のチケットを購入して継続的に観戦をしてもらえるのかわからない。

無料のチケットと有料のチケットを比較した場合、やはり無料でもらったチケットで観戦ほうが思い入れも下がるし、気持ちのノリも落ちるだろう。

一度、無料で観戦してしまうとその試合の価値は安いものになる。
もし試合を見て魅力を感じて、その後、有料で試合を見ようとしても、必要以上に高いと感じてしまうのでないだろうか。


❹観戦経験は必ずしも素晴らしいものではない。

はじめて観戦をした試合で、応援しているクラブが負けてしまったらどうだろう。スコアレスドローなどゴールシーンが見られなかったらどうだろう。
気温が寒かったらどうだろう。雨や雪だったらどうだろう。

残念ながら、Jリーグ観戦ではこのようなことが普通に起こっている。

そうした時に、がっかりして、二度とJリーグを見たくないと思うのではないだろうか。もしかしたら周りに良くなかったと広めるかもしれない。



3.ファンベースの視点で、この無料招待キャンペーンをどのように進めればいいのかを考えてみる


では、どのようにこの無料招待キャンペーンを設計し、進めていけばいいのだろう。

そのヒントになるのがファンベースという考え方だと思う。

ファンベース

ファンを大切にし、ファンをベースにして、中長期的に売上や事業価値を高める考え方。

企業やブランドが大切にしている価値を支持してくれるのがファンであり、その価値がどういうものかはファンが知っている。


ファンベースの考え方に基づくと、今熱く応援をしてくれて、クラブを支えてくれているファン・サポーターにそのクラブのいいところを聞き、そして一緒に課題を捉え、解決に向かって進んでいけばいいということになる。




4.ファンベースの考え方に基づいた無料招待キャンペーンのアイデア


👉ファン・サポータに無料招待券を渡して、周りの人を誘ってもらう

そのクラブの良さや観戦の楽しさを誰よりも知っているのは、ファン・サポーターである。

類は友を呼ぶということわざがあるが、その方の周りには、同じようにその良さを理解してくれる人が多いはず。また、テレビやネットの情報よりも、家族や友人と言った身近な人のクチコミがいちばんというデータもある。

つまり、テレビCMやSNSで大きな層にざっくり呼びかけるよりも、今支えてくれているファンやサポーターを通じて、スタジアム観戦の良さを感じてもらえるように周りを誘ってもらうほうがいいのである。

どんなに口達者なYoutuberよりも、本当に観戦の面白さを知っているファン・サポーターのほうが何倍も面白く誘うことができるはずだ。

もちろん、大切なことがある。
協力してもらうファン・サポーターにこの無料招待キャンペーンの趣旨をきちんと伝えて、理解してもらうことだ。
なぜ、この無料招待キャンペーンを行うのか。
自分たちのクラブには、どのような人たちを誘って欲しいか。
なぜ、ファン・サポーターに協力をお願いをするのか。

これをしっかりと伝えることができれば、ファン・サポーターはちゃんと動いてくれる。クラブやリーグのためにできることをそれぞれがやってくれる。

もっとファンやサポーターのことを信じてもらいたい。


👉観戦に招待するだけではなく、スタジアムの素晴らしさをファン・サポーターから伝えてもらう場を設ける

新規のお客さんに無料招待券を配布して、観戦をしてもらい、その結果、ファンやサポーターになってくれる可能性はあるのだろうか。

サッカーは勝ち負けのあるスポーツだ。無料招待券で観戦した試合で負けることだってある。その場合、次の試合を見たいと思うのだろうか。

ファン・サポーターからすると、スタジアム観戦は本当に魅力に溢れている。けっして勝ち負けだけの面白さではない。

例えばだけど、試合の前にその面白さをファン・サポーターが熱く語る「伝える会」を設けることはできないだろうか。

リアルでもオンラインでもいい。無料招待券が当選した方に集まってもらい、そのクラブを心から愛しているファン・サポーターの方々から、観戦のルールや楽しみ方、クラブの理念、応援やチャントの仕方、選手の特徴、おすすめのスタジアムグルメなどの話をしてもらうのはどうだろうか。
ファン・サポーターの目線から話をしてもらうことで、新規で観戦される方にも距離を近く感じてもらうことができる。

Jリーグの各クラブのファン・サポーターはおせっかいの人が多い。このような方々に協力を要請すれば、各クラブごとに特徴のある「伝える会」が開催できるのではないだろうか。

その様子を動画などで他のクラブと比べ合っても面白いかもしれない。


(クラブや応援のことを、ファン・サポーターから伝える場を作れば、スタジアム観戦がより楽しくなる)


👉振り返りの会を開く(観戦のジャーニーを止まらせない)

試合の後にオンライなどで集まって、試合観戦して良かったこと、気づきがあったことなどを語り合う場があってもいい。

無料招待で1番難しいのは、リピートをしてもらえるかどうかである。体験行動を周りに共有することで、自分ごととして根付かせることにもつながる。

また、観戦する前に気づけなかった存在(運営やボランティア、サポーターなど)についても話しをしてもらったり、理解してもらうこともしやすくなる。多くの方の協力の元、快適なスタジアム観戦ができることを伝えれば、より深く興味を持ってもらうことができるし、次も試合に行こうという気持ちにもなる。

試合後に次の試合の割引券をメールで送るだけでは、伝えられないこと。
考えればたくさんあるはずだ。



5.最後に


Jリーグのファン・サポーターたちは誰しも、Jリーグの試合にたくさんの観客が来て、もっともっと盛り上がって欲しいと思っている。 


だから…
今支えてくれているファン・サポーターをもっと信じてほしい。

単純に招待券を配って新規を集めるということではなく、ファン・サポーターのチカラを借りながら、周りに魅力を伝え広げていくこと。
試合の勝ち負けの楽しさだけではない価値を初めて観戦する人にも伝えていくこと。
もっともっとやっていっていいはずだ。


2024年というシーズンが、みんなの記憶に残る素晴らしいものになることを願っている。

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このマガジンでは、今年もスポーツファンの熱量を高め、熱狂のスタジアムを作っていくことを書いています。


シーズンチケット27年目でできることを考える






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サッカーを語ろう

ファンベースデザイナー、地域創生プロデューサーなどしてます。 おむすびnoteを毎日書いてたり、浦和レッズを応援したり… みんなが、好きなこと、応援したいことを素直に言える世の中にしたいなあ。 皆さんと、いろいろなコラボをしたいです! ぜひぜひご連絡ください!