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韓国文学にひかれて

今年の読書を振り返ると、韓国文学を好んで読むようになったというのが一つの傾向だった。日頃話題の新書などは、購入して読むこともあるが、基本は家から近い所にある図書館で本を借りて読んでいる。SNSで話題になっていた本を新刊コーナーで見つけるとうれしい。とにかく借りる。そういう、私の中でブックマークされていた本に韓国文学が増えつつあった。なぜ韓国文学にひかれるようになったのだろう。

『優しい暴力の時代』チョン・イヒョン

一番最近読んだ本だけれど、タイトルがなんともいい。それだけで刺さってくる。翻訳者の斎藤真理子さんがあとがきに書いている。「時代の流れが川だとしたら、韓国のそれは日本の二倍、または三倍の激しさで流れている。」急速な経済発展の中、社会には様々な歪みが生じる。流れに逆らわないよう、沈まないよう…必死に現実を生きる人たちの中にある「優しい暴力」を作者は見ている。それは日本に生きる私たちの周りにも数多く存在するものだ。自分自身も無関係とは言えないと思った。

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『わたしに無害な人』チェ・ウニョン

この本もまた、傷つけ合わずにいられない人達の物語だ。これを読んだ頃、私は長年の友人を失いかけていた。傷つけられたようでいて、実は傷つけているのは自分の方かもしれない。タイトルの「無害な人」でいることなどできないものだと思った。七つの短編を読みながら、胸が痛んで何度も本を閉じた。

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『ディディの傘』ファン・ジョンウン

物語の背景にあるのは、2014年の「セウォル号沈没事件」とそれに続く「キャンドル革命」だ。作者自身が事件当時しばらく言葉が出てこなくなったと書いているが、そのくらい「セウォル号沈没事件」が人々に与えた怒りと悲しみは大きく、韓国社会を揺り動かした。その言い様のない怒りは私にも覚えがある。2011年の原発事故や相模原の障害者施設での事件の時に感じたものと同じだ。読みながら違う国の人々ではあるけれど、自分でも驚くほど共感していた。韓国の現代史を知らずに来てしまったが、もっと知りたいと思った。

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