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風に舞う

河川敷の公園の桜も見頃を過ぎて、半分くらいは風に舞ってしまった。今年は何となく桜の花を楽しむ気分にはなれなくて、むしろ満開の桜や風に舞っていく桜が視界に入るのを避けていたようなところもある。

今日は夕方軽く走りに出かけた。桜の花びらが風で散る中を走った。あまり考えるのはよそう、桜を見てあれこれ思うのはやめようと、ただ無心に、走るのに集中するようにした。秋頃から軽く走りはじめて、そろそろ半年になる。だいぶ体も軽くなってきたような気がしてうれしい。

今頃の季節は暑くもなく寒くもなく、走るのにはちょうどいい。遠くの景色を楽しむ余裕もでて来た。桜の木のトンネルをくぐり抜けながら、木を見上げると、残り半分になってしまった花に混じって、緑の葉が顔を出しているのが目に入った。不思議だけれど、急になんだかうれしくなった。ああ、もう葉桜になるんだと思った。

これから葉はどんどん繁って青々した緑になっていく。それを想像したら、心の輪郭がたしかになってくる気がした。桜は美しさやはかなさに魅了され、どこか落ち着かない。そんな心を乱される季節も、間もなく過ぎていく。


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