画像1

その願いは叶ってしまう その2【音声と文章】

山田ゆり
00:00 | 00:00
70代の社長はことあるごとに内線でのり子を呼び数時間、お話をされていた。
のり子には直属の上長がいたが、社長から呼ばれるのはのり子の方が多かった。


社長のお話があった日は残業をしてその日の予定をこなしていた。だからのり子は頻繁に残業をしていた。

「社長に呼ばれて話をお聞きするのが無くなったらいいのに」
のり子はいつもそう思っていた。




やがて、社長が退任され新社長の体制に変わった。


新社長はのり子が前社長から呼ばれて長時間お話を聞いていたことをよく知っていたから
「私はなるべくそうしないようにします。」
とおっしゃった。


それはありがたいとのり子は思った。




社長が交代されてあっという間に1年が経った頃、のり子は、以前との違いを感じていた。


それはのり子の残業が極端に減ったということだ。
それはのり子の残業に対する意識が変化したからである。



以前ののり子は、ちょっとしたことで残業することを受け入れていた。

「今日はここまでしたかった。でも、社長に呼ばれて時間が無くなってしまったから、その分残業して予定のところまでをしよう。」そう思って、安易に残業することを選択していた。


しかし、「それは今日、残業してでも終わらせないといけないことなのか。通常の1.25倍の賃金を掛けるだけの重要性と緊急性があるのか。」とのり子は常に自分に問うようにした。


残業時間は日中よりも疲れていて体力や集中力も落ちている。

体が疲労してベストと言う状態ではないのに、賃金は日中の1.25倍が支払われる。


以前ののり子だったら残業代が入ってくるのだからと残業することに何も抵抗はなかった。
「社長のお話があったから仕方ない」として、残業を他者のせいにしていた。


のり子の会社は製造部門を除いては、残業をするかしないかは個人の判断になっている。つまり、上からの指示で残業することはほとんどなく、残業をするかしないかは各自の判断なのだ。




「私は残業手当をあてにした仕事はしたくない。それより少しでも早く帰宅してリフレッシュしたい。」
のり子はそう考えるようになっていた。


だから、「今、やってもいいし、やらなくてもいい仕事」を以前だったら残業してやっていたが今は残業しないことにしている。
必要な時だけ残業するように自分で自分を律するように心掛けている。

残業しない分、日中は以前よりも真剣に仕事に取り組むようになった。


そういうのり子の意識改革が残業時間を少なくした原因のひとつになっている。



しかし、のり子の努力以外のところでものり子の残業が減った理由がある。


それは、社長に呼ばれることがほとんどなくなったということだ。

以前は突然呼ばれて2~3時間がすぎていたが、今はほとんどそれがない。


これまでののり子は前社長の秘書的立場にあって、社長の手となり足となっていた。

しかし、PC入力が普通に出来る50代の新社長になられてからは、書類作成のために社長から呼ばれることはほとんどなくなった。

また、社内の体制が変わり、のり子は直接社長に接することはほとんどなくなった。



これまでは社長から内線で呼ばれて仕事をお受けしていた。
また、社長にお聞きしたい時はすぐに社長室をノックして直接社長にお聞きすることができた。


しかし、新社長はそれを変えられた。

社長からのり子へ指示する時は

社長からのり子の直属の上長へ話をし、それを上長がのり子へ伝える。
そしてのり子の返答を直属の上長へ伝え、上長が社長へお伝えする
この様に変わったのである。

また、のり子が社長に確認したい時は

のり子が直属の上長へ話す。
上長が社長へ話す。
社長から上長へ返事がある。
上長からのり子へ連絡がある。
 
この順番になり、のり子は社長に直接お聞きすることはなくなったのである。



社長にほとんど呼ばれなくなったのり子は仕事を中断されることが無くなり、仕事が捗るようになり、改善されたと思うかもしれない。


しかし、時間的には改善されたが、のり子の心の中は暗く重くなった。


どういう事かと言うと
これまで車両やPCの入れ替えやリース契約、人事異動など、数か月前に社長からのり子に話が来ていて、社内の動きが事前に把握できていた。

しかし、新体制になってからは突然、契約済みのリース契約書が上長から渡されるなど、のり子の知らないところで既に事が済んでいるようになった。



取締役でも何でもないのり子が社内のマル秘情報を早めに知ることができたのは前社長がいらっしゃったからのこと。
これからは、既に決まったものを渡されそれを処理するだけになってしまった。


それを初めて体験した時、のり子はとてもショックだった。
自分の役職は変わっていないのだが、のり子は「蚊帳の外の人間」になったのだとその時、悟った。




「私はワードの入力はできない。でも、頑張って習えばできないことはないと思っている。

でも、経営者の仕事はワードできれいな書類を作ることではないのだ。
会社を存続させることが私の任務だ。
だから、書類作成はワードができる従業員に任せればいい。
これは全ての仕事にも通じることだ。



いいか、会社は人が命だ。
人を生かすも殺すもトップの考え方ひとつだ。

トップが自分で何でも握ってしまっては駄目なんだ。

任せられることは任せる。
任せられた人は一生懸命に仕事をし、自分でも会社に貢献できているという気持ちが湧き、従業員の士気が上がる。

だから、トップはいかに人に任せられるか、それが重要なんだ。」


前社長のお言葉が思い出される。





トップが代われば社内の体制も変化する。
それは当たり前のこと。

世の中は常に動いている。
過去がどうだったかは関係ない。
変化への対応が鍵なのだ。



「社長に呼ばれて話をお聞きするのが無くなったらいいのに」
という
のり子の願いは叶ってしまったのである。





あなたの願いはどんなこと?





気を付けて

その願いは叶ってしまうから




今回のnoteは、こちらの続編です。

https://note.com/tukuda/n/n69ce63b34aec?from=notice
【その願いは叶ってしまう】


※note毎日連続投稿1800日をコミット中! 1773日目。
※聴くだけ・読むだけ・聴きながら読む。
どちらでも数分で楽しめます。#ad 

その願いは叶ってしまう その2

この記事が参加している募集

仕事について話そう

サポートありがとうございます💖サポートされたお金はプリンターのインク購入に使わせていただきます🤣60代ですが毎日noteを執筆中です😄素敵なnoterさんへ恩送りさせていただきます🎁kindle書籍も出版しています📚